言語の選択:
私と葺合高校 ~OB・OGは今~


第1回 満尾仁美さん (家庭裁判所調査官)
     平成18年3月 国際科卒業
     一橋大学 社会学部を経て現職

私は今、家庭裁判所調査官という仕事をしています。聞いたことがある人は少ない職業かもしれません。家庭裁判所では、少年事件や離婚など家族にまつわる事件を扱います。これらの事件は、法律の知見だけで最善の解決方法を見つけることは難しいことから、行動科学(心理学、教育学、社会学、社会福祉学等)の専門家である調査官が事件に関わることになっています。


国際科に入学した当初の私は、漠然と国際協力分野に携わりたいと考えていました。そんな私が、今の仕事を選んだのは、国際科独特の授業の方法により学んだことが大きな影響を与えています。


国際科の授業は、教科書を使わず、英語のエッセイや新聞記事、映像教材を使って行うものが多いです。また、1か月程かけて、1つのトピック(民族紛争、児童労働、難民、環境等)を様々な角度から考えていくという方法で授業が進みます。「勉強する」というより「考える」、こんな授業は初めてでした。1つのトピックが終わる頃、単純に日本の自分たちの生活と比較し、善悪の判断をしていた自分がいかに一面的な物の見方をしていたかということに毎回気づかされました。一言でいうと、一つの価値観で物事を判断しないことの大切さを学んだと言えます。問題の背景には複数の要因が複雑に絡み合っていること、それぞれの立場に困難さがあること、一見、問題の解決と思われることが結果的に問題の悪化を招く可能性があることなどにも気づき、とても視野が広がりました。


葺合高校を卒業後、社会で起こっていることをもっと深く理解したいと思い、一橋大学社会学部へ進学しました。そこで、国際情勢を学ぶと同時に、日本にも貧困、格差等、様々な問題があることを知りました。また、社会に生きる一人ひとりの人をもっと深く理解したいという思いも生まれ、交換留学制度を利用して、カナダのマギル大学で心理学を学びました。


こうして様々なことを学んだ結果、どんな仕事に就こうかと考えたとき、軸となったのは、高校時代からずっと抱いていた、「子どもが子どもらしく生きられる世界に。」という思いでした。そして選んだのが今の仕事です。仕事では、日々、様々な家族に出逢います。様々なバックグラウンドを持ち、それぞれにそれぞれの思いがあります。一人一人を精一杯理解し、最善の解決方法を見つける手助けが少しでもできるよう、国際科で学んだ多角的な物の見方を活かして、私なりに尽力しています。


こうして振り返ってみると、今の私のキャリアを支える素地は国際科の三年間で形成されたのだなと改めて気づかされます。そして、何より今でも私に影響を与え続けてくれるのは、国際科で得た仲間です。世界中の様々な場所で、チャレンジを続けるバイタリティ溢れる仲間に会う度、私ももっと頑張らなきゃと鼓舞されます。いつまでも切磋琢磨し合える仲間は国際科で得たかけがえのない財産です。