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私と葺合高校 ~OB・OGは今~


第10回 石黒彩子さん (読売新聞 記者
     平成19年3月 国際科卒業
     国際基督教大学教養学部、
     大阪大学大学院国際公共政策研究科を経て現職


記者になって6年目の冬、嬉しい出来事がありました。英語のプレゼンテーションコンテストを取材し、優勝した女子大学生3人組にインタビューした時のことです。大学が異なるのにチームを組んでいることを不思議に思って尋ねると、全員が葺合出身でした。あまりの偶然と後輩の奮闘ぶりに胸が熱くなり、同時に、在学中の記憶が鮮明に蘇りました。


忘れもしないのは最初の英語の授業。得意だと思って臨んだのに、隣の男子生徒の英語がまるでハリーポッターのように流暢で、一瞬で自信を打ち砕かれたのをよく覚えています。それを機に、何事もまず知ろうとする謙虚さを大事にするようになりました。国際科で出会った仲間は、人生に欠かせない存在です。学区を超えて集まってくる生徒はみな個性的で、互いを認めて尊重し合い、意見を言うべきときは言う。「違いを楽しむ」というマインドも葺合で得たものの一つです。一方で、自分の目標に向かってひたむきに努力し成し遂げていく姿は、刺激的でいつも鼓舞されました。その関係性は今なお変わっていません。


高校時代は国際機関で働くのを目標に、毎日全力投球でした。卒業後は、国際基督教大学、大阪大学大学院に進学し、難民問題に取り組みました。留学したタイで訪れた難民キャンプで、支援が届いたキャンプ内よりも、そのすぐ外にこそ困窮した子供たちがいるのを目にした時、どれほどの人がこうした事実を知っているのだろうかと「伝える」ことを意識するようになりました。それが記者の道へ進むきっかけです。


地方からスタートした記者生活は、事件や行政、スポーツにいたるまで多岐に渡って取材し、写真も自ら撮影して、原稿を書く目まぐるしい日々。大好きな英語からは遠ざかり、それまでとかけ離れた生活に何度も挫けそうになりました。ですが、葺合で得た「違いを楽しむ」マインドと切磋琢磨できる仲間のおかげで、自分を見失わずにいられたように思います。新たに異動した英字新聞部では、英語漬けに懐かしさを覚えながら、世界中のニュースに触れ、発信すべき日本のニュースは何か、常に頭をフル回転させて翻訳や紙面作りに力を注ぎます。これまで以上に伝えることの意義を感じる毎日です。


そして最近、母になりました。大変な時もありますが、ここでもまた同じく母になった葺合の仲間に励まされながら、子供と一緒に成長しています。子育てと仕事の両立が話題になることも増えましたが、働くママの活躍できる場も広がってきているので、どちらも諦めずに柔軟に楽しみたいと思っています。


30歳を超え、「あの時の自分に誇れる大人か」とよく自問します。それほどに高校生の自分は頑張っていたと思います。なにより、楽しんでいました。それも今を頑張る一つの原動力かもしれません。今の私の礎を築いてくれたのは、間違いなく葺合での日々と出会いです。どうか新たな後輩たちも得難い日々を葺合で過ごしてほしいと願います。