人の心の浮き沈みをなだめるように、植物の息吹は今年も旅立ちの春が訪れたことを静かに知らせてくれています。本校の桜も、卒業生ひとり一人に祝福の花吹雪を贈る準備を進めています。
卒業生の門出を心からお祝いするために、生徒のみなさんと、保護者の皆様と教職員で卒業証書授与式を挙行します。中学校生活の思い出の数々を瞼の裏に映し出し、卒業生の未来に全力でエールをおくる式典にしたいと思います。
34回生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。
卒業にあたり、中学校生活の3年間を振り返り、自分自身の成長を感じることと、それを支えてくれた人々への感謝の思いを持つことは、子どもから大人へと変化していく中学生にはとても大切なことです。
異例であったこの1年だけに注目するのではなく、1.2年生の出来事も振り返って、その当時に出会った人、影響を受けたこと、感じたことや考えたことを思い出してください。そして、自分がそれによってどのように成長できたかを振り返ることができれば、うまくいったこともうまくいかなかったことも、すべてが大切な時間であったことに気づくはずです。
人間は便利になることを追求し、文明を発展させてきました。新しいものの開発には何よりもスピードが求められ、次から次へと前に進むことを余儀なくされています。ただ、この1年に限っては、待つこと、耐えること、静かに考えることが要求されました。そのことに窮屈さを感じること自体が、前に進むことに慣れてしまった証なのだと思います。しかし本来は、待つこと、耐えること、静かに考えることは、人として大きく成長するために、とても重要な時間であると私は思います。卒業生の皆さんも少しだけ立ち止まって、今の時間を大切に過ごしてください。これからの長い人生にとって、貴重な時間であったと思う日が来るはずです。
保護者の皆様、お子様のご卒業おめでとうございます。誕生から15年、時には寄り添い、時には突き放しながら、変わることのない愛情をもって接してこられたことと思います。わが子のわがままにも、ご自分の中学生の頃を思い出し、その気持ちを理解しようと苦心されたのではないでしょうか。これまでのご苦労に心より敬意を表しますとともに、あらためてお祝いを申し上げます。
この1年は学校の教育活動をご覧いただく機会も少なく、心配されたことも多かったことと思いますが、できる限りの教育活動の中で、卒業生は確実に成長してきました。私たち教職員にとっては、生徒たちにもっと自由に、もっと活発に活動させてあげたかったという心残りがあるのは否めませんが、34回生とのつながりがこれで切れたわけではありません。卒業後も子育てに悩む時には、学校を訪ねてご相談いただければありがたく思います。
さて、卒業生の皆さん、いよいよ旅立ちです。あなたたちの学年には「人を大切にできる34回生」というテーマがあります。学校生活でつながった仲間を大切にする日々の生活や、見知らぬ多くの人の命を守る感染拡大防止の取り組みによって、あなたたちの心がそのテーマに近づいてくれたのであれば、これほどうれしいことはありません。まずは自分自身を大切にし、それと同じように人を大切に考えることができる。いつまでも優しさという熱い血の流れる人であってください。
ああ 若き日に燃ゆるもの ああ、若き血にたぎるもの 青春のいのち いのち輝く本山南 34回生のいのち輝く人生を祈り、式辞といたします。
令和3年3月17日 神戸市立本山南中学校長 近谷 雅彦