令和元年度 六甲アイランド高等学校創立記念講話
みなさんおはようございます。今から令和元年度、六甲アイランド高等学校創立記念講話をいたします。
みなさんは毎日、授業で教科書の内容を学んでいますね。自分達が毎日学んでいる教科書とはいったい何であるかをじっくりと考えたことがあるでしょうか。
教科書は正式には教科用図書と言い、義務教育や高等学校などで児童・生徒が用いる教科用として編修された図書ですが、私はここでみなさんに教科書の定義を話したいわけではありません。私が話したいことは、教科書がそもそも何であるかということです。
小学校からずっと身近にある教科書を、もし一言で表現するとしたらみなさんはどのように表現しますか。私は教科書とは「文化遺産の集積」だと考えています。人類の歴史の中での偉大な発見、発明や文物などが、網羅されているとてつもない「知識の集合体」です。偉大な先人たちの発見、発明、創作によって生み出されたものが最も効率よく整理されています。何百年、何千年という気が遠くなるような人類の歴史の中で、発見、発明、創作された第一級のものばかりです。
例えば高等学校の物理で習う運動方程式F=maという公式です。Fは力、mは質量、aは加速度のことです。力は質量と加速度を掛け合わせたものということです。この公式はニュートンの第二法則とも呼ばれています。ニュートンは1643年にイングランドに生まれ、ニュートン力学を体系化し、万有引力の法則を発見し、光のスペクトル分析など数多くの業績を残した天才物理学者です。ニュートンという天才物理学者が出現するまで、力は質量と加速度を掛け合わせたものということを、人類は誰一人知りませんでした。もしかすると、それに近い認識をもっていた学者はいたかもしれませんが、公式としてあらわしたのはニュートンが初めてでした。ニュートンの運動法則は今でこそ当たり前のこととなり、多くの人が知っていますが、このF=maという公式がニュートンという天才物理学者を通して我々人類の前に現れなければ、その後の産業革命もなかったかもしれません。
私が今話したニュートンの運動法則はほんの一例ですが、それぞれの教科で第一級の重要なことが教科書には書かれているのです。教科書に書かれていることを学ぶことで、人類何千年何万年の文化遺産を受け取っているのです。ただ、教科書はある意味では冷凍状態ともいえるでしょう。しかし、先生の教えや自分自身の思考作業を通して冷凍状態のものを解凍することで、そのすごさが伝わってきてきます。この解凍作業こそが勉強と言えるのではないでしょうか。例えば先ほど話したF=maという公式ひとつをとっても、本当にそのすごさがわかれば「なんてすごいんだ!」という感動がうまれ、学ぶ意欲になるのだと思います。学校とは広い意味での文化遺産継承の場です。みなさんは先人たちが後世に残してくれた文化遺産を享受できる立場にあるのです。その文化遺産をしっかりと相続してください。
本校は赤塚山高等学校と神戸商業高等学校を再編し、神戸市の先進的取組校として平成10年4月に開校し、今年で22年目を迎えました。その源流をたどれば明治45年創立の神戸市立第一高等女学校と大正12年創立の第三神港商業学校との100年以上の歴史を有する学校でもあります。多くの先輩方の努力とみなさんの頑張りで、去年の高校入試でも兵庫県下トップクラスの高倍率の人気校になっています。先日、「2019年入試を振り返る!ユニバプレス」という大学進路雑誌の6月号に、この10年で北陸・近畿で伸びた高校としても掲載されました。
今、六甲アイランド高等学校は平成の取り組みを土台にして、様々な面で上昇気流に乗っています。上昇気流に乗った六甲アイランド高等学校の、新たな令和の歴史を作っていくのはみなさんです。先人の思いをしっかりと受け止めて、これからも日々励んでいきましょう。
令和元年7月10日
神戸市立六甲アイランド高等学校長
山根 修