| 街なかのシダのなかま |
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市街地をふくめ、六甲山地では、172科、1560種の高等植物が知られ、そのうち胞子で増えるシダ類は26科150種あまりです。私は市街地で8科11種を記録しています。
多くは地下の根茎で増え、常緑で多年草です。多湿で暖かい南にいくほど種類は多くなります。
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写真347、シダのある石垣
7月、中島通1 |
写真348、ベニシダ
4月、中島通2 |
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■シダのある石垣
土が少なく、乾燥した街なかでは、なかまを増やす時、水を必要とするシダにとっては生きづらい環境です。
しかし、長く残ってきた建物近くでは、こうして「類は類をよぶ」のことわざのように、オニヤブソテツをはじめホウライシダ、タチシノブ、イノモトソウなどシダの見本園のように寄り集まっています(写真347)。
■ベニシダ
神戸の山地ならどこでも見られるありふれたシダです。かつては六甲山地のふもとだったことから市街地でごくまれに細々と残っています(写真348)。
神戸に知られるオシダ科45種のひとつで、初夏の若葉は名のとおり赤っぽいです。
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写真349、ノキシノブ
8月、中島通1 |
写真350、ノキシノブ
8月、中島通1 |
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■ノキシノブ
街路樹のクスノキ、古い庭木などにつくノキシノブが溝の石垣の間に生えています。湿り気があると葉は生き生きとしています(写真349)。
しかし、乾燥した天気が続くと水分の余計な発散を防ごうとして葉は巻きこまれます(写真350)。
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写真351、オニヤブソテツ
5月、中島通1 |
写真352、オニヤブソテツ
4月、青谷町 |
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■オニヤブソテツ
厚くて濃い緑色、こわばった葉のオニヤブが群生しています(写真351)。こうした葉の様子は海に面した日当たりのよい土地柄を好むことをうかがわせます。これとよく似たヤブソテツは市街地ではよほど山際に近い住宅地でしか見られません。
胞子(ほうし)をつけるソーラス(sorus)が、葉の裏に星を散りばめたようについています。
4月のはじめ、毛をいっぱいつけたゼンマイがほどけ、若葉が伸びだしています。また、葉柄には大きな鱗片(りんぺん)がたくさんついて幼植物を守っています(写真352)。
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写真353、トラノオシダ
7月、神仙寺通2 |
写真354、イノモトソウ
4月、神仙寺通2 |
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■トラノオシダ
人里はもちろん、都会でもよく見る小型のシダで、チャセンシダ科のひとつ(写真353)。
葉は2つのタイプがあって胞子のう群(ソーラス)をつける葉は2回きれこんだ羽状です。ソーラスをつけない葉は1回だけの羽状です。葉とも言えません「ハ、ハ、ハ、ハ、ハ」です。
■イノモトソウ
シダのなかまで最も人慣れしたものでしょう(写真354)。名の頭についた「イ」は井戸をさし、人里そのものだからです。
葉は2つのタイプがあり、上に向けて立つ葉は、細長い羽状で、葉裏のふちにソーラスをつける胞子葉(ほうしよう)で実葉(じつよう)ともいいます。一方、地面近くの葉は裸葉(らよう)といって栄養づくりをします。
葉がもっと大型のは、オオバノイノモトソウといい、山地に生え、市街地ではまず見当たりません。
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写真355、タチシノブ
5月、神仙寺通2 |
写真356、ホウライシダ
5月、熊内町2 |
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■タチシノブ
人里から山のふもとにかけ、よく見られるホウライシダ科の一種で、ニンジンの葉を思わせます(写真355)。中央の軸から3,4回、大から小へと裂けて1枚の葉となっています。
シダですから、花も咲かず、実も結びませんが、初夏のころの緑は人の目に優しいです。
■ホウライシダ
水分を含んだ土地柄を好み、住宅街の溝ぶちで石垣のあるところなら必ずといっていいほどよく目にします。
さきのタチシノブと同じく、葉の美しいなかまの多いホウライシダ科のひとつで、ふつうアジアンタム(adiantum)の名で知られています(写真356)。天然のものだけでなく、数えきれないほどの園芸種があるそうです。
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写真357、イワヒメワラビ
7月、神仙寺通2 |
写真358、カニクサ
12月、神仙寺通2 |
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■イワヒメワラビ
古い屋敷跡を囲む石垣の下から大型のシダが残っていました(写真357)。
葉は中央の軸から3回ほど大から小へと裂け、全体として1m近くにもなりますが、夏場だけ緑の葉は薄くて柔らかいです。所属(しょぞく)はコバノイシカグマ科です。
■カニクサ
フサシダ科に属し、シダでは珍しくつる性で、別の名はツルシノブです(写真358)。つるのように見えるのは、葉の中軸が間延(まのび)したもので、茎そのものではありません。
葉は形と大きさで2つのタイプがあります。葉のふちにつくソーラスの熟する順序に応じて変わっていくのです。
夏緑性(かりょくせい)とされますが、暖かい神戸では、冬も緑の葉があります。
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■イヌドクサ
スギナやトクサのなかまのトクサ科のシダは2億年以上の太古の植物の生き残りです(写真359)。
「生きた化石」のようなイヌドクサは武庫川などの堤防から山すそなど、かつての祖先が暮らしていた水辺から離れても、日がよく当たる所で残っています。
節(ふし)には原始的で小さな葉が輪状に残っているだけで、デンプンをつくる仕組みは細長くたっている茎です。全草はSiO2(硅酸:けいさん)を含み、物を磨くのに使われたそうです。
茎がもっと太くて数ミリ、枝を出さないのはトクサといい、姿がよいので庭に植えられることもあります。北国のシダですから、野生化していてもおそらく栽培していたのがエスケープ(escape)したのではないかという研究者もあります。ルーツ(roots)を探るのも難しいです。
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