六甲山のブナとイヌブナ林を読んで

 原著そのものの授業利用の可能性をさぐる取り組みとして,「地層」分野に続いて,「六甲山のブナとイヌブナ林」を使った.ここに,その学習指導案と,生徒の代表的な感想を掲載する.

■学習指導案

「六甲山のブナとイヌブナ林」を読んで
学 級 神戸市立渚中学校 1年2組
授業者 神戸市立渚中学校松本みや子
目 的 1年生の生物分野「植物の生活と種類」の単元が終わり,3年生の「自然と人間」の単元に向かうところで,身近な神戸の六甲山の「ブナ・イヌブナ林」の存在を知る.六甲山紅葉谷のブナ・イヌブナ林の樹木の標本をみながら,CD版の「六甲のブナ・イヌブナ林」を読む.ハイキングをしたときの体験をもとに,森林の中にいたときの自分を思い出し,読書感想文を書く.
日 時 平成15年10月20日 3校時
場 所 コンピュータ教室
内 容 六甲山の山頂近くにはブナやイヌブナ林が見られる.気温や雨・霧の影響でブナ・イヌブナ林がみられることについて考える。
生徒観 中学校に入ってもう7ヶ月ほどたったが、実験観察の好きな活動的なクラスである.
教材観 植物標本を観察しながら、「六甲山のブナとイヌブナ林」CD版を読み,ブナ・イヌブナ林について生徒たちに伝えることのできる貴重な時間だと考える.
授業展開
所要時間 生徒の活動 留意点
10分 1.ひとりずつに配布したブナと2人に1枚配布したイヌブナの葉脈標本のしおりを見ながら,ブナとイヌブナの植物標本を回覧し、イヌブナについては、葉の裏の毛をルーペで確認する. 森林浴の快適さを思い出す.
5分 2.ブナ・イヌブナ林にあるクマシデの葉脈標本を見ながら、ブナ・イヌブナ林に共存する樹木の植物標本を回覧する. 乾燥した標本なので折れないように丁寧に扱うようにする.
15分 3.「六甲山のブナとイヌブナ林」CD版を読書する. 各自のペースで自由に読む.
15分 4.「六甲山のブナとイヌブナ林」についてわかったことをまとめて文章にする.また,強く印象に残ったところはどこかを書く. 静かに集中して考えるようにする.
5分 5.レポートを集める.
本時の評価 六甲山に保水力のあるブナ・イヌブナ林があることをどのぐらい認識したかを,レポートにより判断する.


■授業風景

授業風景
1.コンピュータ教室
2.ブナとイヌブナの葉脈標本
3.ブナ林で見られる植物の標本
4.コンピュータを見る生徒
5.感想文を書いている生徒


■生徒の感想から

  • イヌブナ林のある花はとってもきれいなものばかりだ.とくに「ハナイカダ」はとても不思議だ.どうしたらこんなふうに,実が葉の上につくのか,一度六甲山に登って,本当の目で見てさわってみたい.どんなさわり心地がするだろうか.
     
  • 六甲山にブナが生えているのは,山をまもるためだということを知り,ブナは山に必要なものだということが分かった.イヌブナは標高600m,ブナは750mくらいのところに生えていて,きれいに境界が分かれていて,紅葉したらきれいだろうなと思いました.木の表面が,ブナはつるつる,イヌブナはざらざらでびっくりした.
     
  • ブナやイヌブナの根は広い面積をおおっているので,山崩れがあっても被害が少なくてすむらしい.ブナの年齢は200年,イヌブナの年齢は130年くらい,私たちが生まれる前や戦争で人が死んでいったことまで知っていると思うと,なんかすごく身近に感じた.
     
  • 六甲山に残っているブナ・イヌブナを大切にする理由は,六甲山の崩れを根をはってくい止めてくれているから.それを,崩れと,根の張りのバランスで保っている.ということは,私たち人間を,ブナ・イヌブナの木がまもってくれていることになる.ブナ・イヌブナが六甲山を崩さないようにまもり,六甲山が崩れなければ,私たち人間も安心して暮らせる.ブナ・イヌブナの木は,人間にとっても,自然にとっても,動物たちにとってもいいことばかりなので,とてもいい木です.
     
  • 昔の六甲山は豪雨のたびに山崩れを起こし,土石流を出し,尊い人の命をうばっていたそうです.だから,根が網のようになっていて,しっかりと土をつかむブナやイヌブナを六甲山で大切にしていると分かりました.
     
  • ブナ・イヌブナはなぜ六甲山に残っているのかというと,雨の水などを大切に,こぼさないように吸っているためで,ブナもイヌブナも今でも残っている.
     
  • クロモジがとても印象に残りました.とてもいいにおいがして,和菓子のつまようじに使っていると聞いて,すごく納得しました.
     
  • ヤマボウシの葉と花びらは似たような形をしていました.クロモジがよいにおいで気分そう快でした.ツリガネツツジの花は面白い形をしていて,なおかつ,たれ下がっている花なのでめずらしいと思いました.ゴヨウツツジの花はササユリの花に似ていました.

 
■まとめ

 本授業は,中学校理科の学習のねらいからいえば,「植物の生活と種類」単元では,ブナ林を例にした植物の多様性に気付かせること,「自然と人間」の単元では,ブナ林と人間の関わりについて知ること,がテーマとなる.

 感想文にはどちらの部分も現れていて,一部の生徒は「実際に見てみたい」との感想を述べており,神戸及び近隣の市民であればいつでも登山できる六甲山の自然を観察する動機づけに役立つと考える.

 ブナ林は六甲山の原自然であって,それ故大切という視点は出てこなかったが,今後,日本の森林の生態系について学習する機会があれば,必ずブナ林の例が出てくるので,そういったときに,気付いてくれればいいと思う.