ブナの保水力のひみつをさぐる

 ブナの森は、他の森林と比較して保水力が高いと言われています。「ブナの森に水筒はいらない。」と言われるほどの保水力の秘密はブナの葉と地面にあります。

 広葉樹で、丸みを帯びた形の葉は、面積が広く雨をたくさん受け止めます。また、少しへこんだ形なので、雨を葉にためることができ、枝を伝って幹の方に水を流します。こうして、根元に集まった雨水は、積み重なった落ち葉がスポンジ状態になり、水がためられます。「一本のブナの木から8トンもの水がわき出る」とも言われています。

 では本当にブナ林は保水力が高いのか、ここでは、ブナ林の表土の保水力を調べる、簡単な実験をやってみました。

■実験−ブナ林の表土の保水力を調べる

1.目的

 ブナ林の表土がどのくらい保水力があるか、園芸用土でも保水力の高いと言われる鹿沼土や赤玉土等と比較して、その違いを調べてみる。


2.方法
  1. 土を5種類用意する。
    ・ 自然ブナ林のブナの根元の土
    ・ 植林スギ林のスギの根元の土
    ・ 真砂土(市販品)
    ・ 鹿沼土(市販品)
    ・ 赤玉土(市販品)
     
  2. 1週間よく乾かす。(特にブナ土、杉の土)
     
  3. 600ccスチロールのどんぶりばちを5個用意し、底に20個の小さな穴をあけ、それぞれの重さを量る。
     
  4. 5種類の土をはちにいっぱい入れて、全体の重さを量る。これから各容器の重さ(3.で測定)を引けば、乾燥状態の土の重さ がわかる。
     
  5. どんぶりに水をたっぷり含ませる。
     
  6. 水が流れ出たところで、全体の重さ を量り(時間=0)、以下時間ごとに全体を計量()する。はじめのうちは減少が激しいので、時間間隔を短くするとよい。土に対する水の割合(1gあたりの土が含む水の重さ×100)は次の式で計算する。
     
    土に対する水の割合(%)= 含んでいる水の重さ (B−A) ×100

    土だけの重さ ()
実験中の5種類の土。実験は日陰で行う。


3.結果

 結果は下のグラフ、および表のようになった。


グラフ.土に対する水の割合(%)
 水を注いだ当初は、鹿沼土、赤玉土の水の割合が高かったが、ブナの土が、4日目に赤玉土を抜き、5日目に鹿沼土に追いつき、その後逆転した。

日時 鹿沼土 赤玉土 ブナ土 杉土 真砂土
(M=)20分後 60% 45% 42% 26% 18%
3時間後 53% 41% 37% 23% 16%
6時間後 51% 40% 35% 22% 15%
24時間後 48% 37% 33% 20% 14%
2日後 28% 22% 20% 9.7% 6.7%
3日後 22% 18% 16% 6.7% 4.7%
4日後 13% 9.4% 11% 3.5% 2.4%
5日後 8.5% 5.1% 8.2% 2.1% 1.7%
6日後 5.1% 2.3% 6.6% 1.1% 1.3%
(L=)7日後 1.3% 0% 4.4% 0% 0.90%
表.土に対する水の割合(%)の変化


4.実験の結果考察

 水を満たした直後、すなわち穴から水が出なくなった状態(20分後)での水の割合を、それぞれの土の最大保水力と考えることができる。これは鹿沼土、赤玉土が高く、スギ土、真砂土が低くて、ブナ土はだいたいその中間よりやや上に位置することが分かる

 時間の経過とともに、いずれの土もほぼ同じように水分が失われていくが、7日後()に、最大保水力()の何%の水分が残っているか(それぞれの土の7日後の水分保持率)を次の式で計算し、比較すると、以下のようになる。

7日後の水分の保持率(%)= ×100


7日後の
水分保持率
鹿沼土 赤玉土 ブナ土 杉土 真砂土
2.2% 0% 11% 0% 5.3%

 この実験から、ブナ土(ブナ林の表土)は、自然状態で雨が降ったとき、土1gに対し約0.4gの水分を含むことができ、それ以上の水は浸透させてしまうこと、そして土に含まれた水は1週間後でも約11%が残っていることがわかった。ブナ土の水分保持率が高いのは、落ち葉などが表面おおっていることが効いているのかも知れない。今後の課題である。

 土の保水力は、上記で定義した最大保水力と水分保持率の両方で考えるべきものであろう。ブナ土は、園芸用の土に較べて最大保水力はやや劣るが、水分保持率は高く、トータルで考えると「保水力がある土」といえる結果が出ている。

 一方、植林されているスギ林の表土は、ブナ林の表土に較べて、最大保水力、水分保持率ともに低く、ブナ林より乾きやすい土であるといえる。また六甲山をつくる花こう岩が風化してできる真砂土は、最大保水力が低く、雨が降ってもすぐに浸透し、乾いてしまう土であることが分かる。

 自然のブナ林は「緑のダム」と言われることがあるが、その力の秘密が垣間見られたといえよう。六甲山にブナ林が回復すれば、そこに緑のダムができることになるであろう。