神戸の自然シリーズ2 神戸のかたつむり
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W.神戸の陸貝・あれこれ
(2)陸貝分布の盛衰

 原色日本貝類図鑑〔平瀬信太郎著〕にサナギガイという貝が出ている。原色版では小さくてよくわからないので、わぎわざ拡大図が出ていて、この貝の特徴がよくわかる。この貝の産地が Mikage,Hyogo-ken となっている。どうも東灘区の御影らしい。採集されたのは明治末年のことらしい。大正2年に日本最初の貝類博物館として京都に開館した平瀬介類博物館の標本をもとに図鑑ができたのである。この博物館に勤められた、日本貝類学会名誉会長の黒田徳米先生の御助言をうけて兵庫県在住の陸貝研究者が周辺部を含めてかなりの勢力をそそいで再採集を試みたが、果せなかった。近年瀬戸内海の島々でサナギガイを得ておられる方がある。おそらく、明治時代には御影の海岸地帯?にも棲息地点があったものと思う。現在、市街地は戦災で完全に焼失、砂浜に接して存在したであろう林はおろか、海岸部の社寺林も残っておらず、海岸は埋立てられてしまつている。今は昔の物語りである。

 他にも昔は生息していたものだが、今は環境が変わって絶滅してしまったというような例は陸貝に限らず、多いのではないかと思うが、陸貝では、少なくなりながらもほとんどのものが生存を続けているといえる。

 ちょっと違う例であるが、次に紹介するのは、一時期だけ、ある地点で広がり程なく、ほとんど生息を認められなくなった例である。この陸貝はカタマメマイマイという、小型(殻径7〜8mm)の全体が球形の感のするかたつむりである。場所は灘区の伯母野山にある六甲学院高校の校地内(中庭のようになっている斜面)のヒラドなどの植え込みで、現在同高校教諭、品川和久氏がまだ大学生時代の昭和44年にこの珍品(本州、四国の極限された地点で採集された。朝鮮などに主として分布)が得られ、個体数もかなりみられ、保護しておかねばなどと話し合っていたものである。品川氏が中、高校時代には、オナジマイマイなどは見られたが、カクマメマイマイは見られなかったようで、何か植物にでもついて来たのか、それにしてもよく増えたものだと感心していた。それが、次の年にはほとんどみられなくなり、2〜3年の間に完全に消えて?しまった。周辺の環境は、雑草などは、毎年刈るが、点在するヒラドなどの花木類はほとんどさわられず大きな変化はなかったということである。昆虫などでは急に増えて、また居なくなるものもあるが、陸産の貝類ではめずらしい。この項の資料を提供された品川和久氏に感謝します。

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