神戸の自然シリーズ11 神戸港のプランクトン
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II.神戸港のプランクトン−ケイソウ類 ... 

コシノディスカス Coscinodiscus 属
網目模様が美しいコシノディスカス

 和名はコアミケイソウという。単独で浮遊生活をし、海産と淡水産のものがある。

 属名は、「盤状の」という意味のdiscoideusに由来する。細胞はペトリ皿のような盤状で上下の蓋殻面(ふたの面)はふつう円形である。ふたの面には綱目状や点紋状の細かな模様がある。種類によって網目が粗かったり、細かであったりする。中心部に菊花紋(Rosetta)とよばれる模様をもつものもある。ふたの面の周りに小棘をもつ仲間もあるが、微小なために認めにくい場合がある。殻環帯(横の面)に模様をもつ種類もある。色素粒はふつう小型のものが多数含まれる。

 この属のふたの面の模様は、光学顕微鏡的には古くから、分類の基準にされている。しかし、なかにはその一部が盛り上っていたり、くぼんでいたりするために焦点の合わし方によって、まるで別の種であるかのように見える。外観だけで種名がわかるものもあるが、殻の模様を観察しなければ同定できないものも多い。このようなときには、酸処理をほどこし、細胞内の有機物を酸化し、ふたの面の模様が見えやすくする必要がある。正確な同定をするには、このように手間がかかるうえ、現在知られている種類が450種もあり、よい手引書がないこともあって、同定がむずかしいとされているケイソウの一群である。


コシノディスカス・ラデイアータス Coscinodiscus radiatus

 細胞はふたの面が平担な円板状で、直径は30〜180ミクロン。厚みは非常に薄くコインのようである。ふたの面には大きくて粗い綱目状の模様がある。その中心部には花紋、あるいは中心区とよべるような構造はない。しかし、中心部の網目は周囲より大きく、不規則に組み合わさって花紋によく似た構造をしていることがある。網目は放射状に並んでおり、その大きさは全面にわたってほとんど同じ大きさであるが、周辺部は小さくなっている。

 種名radiatusは「放射状」の意味である。

 熱帯から寒帯にかけて、世界中の海の治岸や沖合に分布しているが、特に温帯に多い。神戸港にも生息している。


コシノディスカス・グラニー Coscinodiscus granii

 ふたの面は、少しゆがんだ円形で直径は80〜200ミクロンと大型である。横の面は一方が高く他方が低くなっているので、くさび形である。これがこの種の最も大きな特徴で、容易に識別できる。ふたの面は、ややふくらんだ凸面状であるが、中心部は少し凹んでおり花紋がある。花紋の周囲からは綱目状の模様が放射状にならび周りに向かって小さくなっていく。コシノデイスカス・コンキヌス(C. concinnus)はこの種によく似ているが横の面の高さが均一であるので区別できる。

 分布は広く、太平洋、大西洋をはじめ世界中の海で見つかる。日本沿岸のいたるところに産する。隅田川河口では春季によく出現するという。神戸港では、春と秋によく見つかるようである。


コシノディスカス・ジョネシアヌス Cosinodiscus jonesianus

 細胞の両面は、時計皿のようにもり上がり凸レンズ状をなしている。ふたの面の中央には花紋がある。直径は140〜250ミクロン。

 この種は、暖かい海に多いといわれ、瀬戸内海では秋から冬にかけて多い。他の内湾では、あまり見つからないといわれているが、神戸港でときに見つかることがある。写真は原形質が消失して殻だけになったものであり、1月に採水した試料中でみつかったものである。


コシノディスカス・ワイレシー Coscinodiscus wailesii

 細胞は完全な円筒形で、ふたの面は少しくぼんでいる。直径は160〜350ミクロン。高さは30〜40ミクロンと大型なので、観察に慣れてくると肉眼でも存在が確認できる。ふたの面と横の面との間はほとんど直角なので横から見た形は四角形である。水プレパラートで検鏡すると、多くの場合は丸い面、すなわちふたの面が観察できるが、ときとして細胞が寝ころがり構の面を見せている場合がある。慣れないうちは、まったく別種のケイソウと誤認しやすいので注意がいる。ふたの面の中央には透明で輪かくの不規則な中心がある。この中心から細かな綱目状の模様が放射状に出る。網目の大きさは中心から遠ざかるにつれ大きくなるが、周りに近づくにつれ再び細かくなっている。

 この種は北方系といわれ、最初に報告されたのは1930年カナダの太平洋岸からである。神戸港では、この属の中で最も普通にみつかる種であり、晩夏から初冬にかけて多いようである。

生きているときは色素粒で模様が見えない
原形質が消失すると、ふたの面の模様が見える
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