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イノデ
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−変化の妙、育ちのたくましさを感じさせてくれるシダである−(5月)
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神戸の裏山のやや湿った場所に普通に見られるシダである。
現状の根茎から葉を一斉に放射状に広げるように出すので、イノデの群生地ではあたり一面がイノデの葉で被われる。それはかつてシダが栄えた時代の片鱗を想像させてくれるのに十分である。
イノデの葉柄や中軸には褐色や濃褐色をした細長い針状(皮針形)の鱗片が多くつく。
3月から4月、おそいものでも5月にわたって、このシダの芽が出はじめるときには一年中で一番シダ植物のダイナミックな姿を感じさせてくれる。密についた鱗片をかぶった芽の育っていくときの姿・形の変化の妙は筆舌につくし難いものである。一日一日の変化は大きく、数日のうちには驚くほどの形の変化をとげる。
写真を見ていただいてわかるように鱗片をいっばいつけた葉が出るときのようすがイノシシ(猪)の毛でおおわれた手に似ていることからイ(猪)のデ(手)、すなわち、イノデとなったものである。 |
シダが芽(葉)を出すときは多くの場合、このように鱗片に被われている。芽を保護する役割をはたしているのだろう。鱗片は、シダの種類・仲間によって、その形・色・つや・大きさ・着く場所・密度が違っており、その特徴をつかむことが、シダの種をみわける大切な手がかりの一つになるのである。特に、種類も多く、種の区別の困難さをともなうイノデの類では、鱗片は種類同定の重要な決め手になるのである。
神戸の裏山ではわずかしか自生していないが、カタイノデは葉柄の基部の鱗片は、黒色から黒褐色で光沢があり、質が硬い。サカゲイノデの鱗片は淡褐色で大きいが、そんなに硬くなく、その名の示すように中軸の鱗片は全部下向きになってついている。サカゲイノデとよく似たツヤナシイノデは鱗片の大きさ・形・つやなどはサカゲイノデとほば同じであるが、中軸の鱗片が下向きになることはない。イノデは、葉柄基部の鱗片は幅広く、大きいが、中軸の鱗片になると細長く、中軸上部では毛状のものになる。
芽を伸ばして広がったイノデの葉は草質でやわらかく、濃い緑色をしている。二回羽状複葉で小羽片は接近してついている。
5月には、小羽片の軸と縁との中間の脈上についた胞子のう群は熟し、月の終わり頃には胞子を散布するようになる。したがって、このシダの胞子の観察、標本作成の適期は5,6月であるということができる。
イノデとほとんど同じころ、胞子が熟し、胞子を散布するシダにほクマワラビがある。神戸の裏山の尾根筋に近い水はけのよい傾斜地には特に多く生え、よく似たシダにオクマワラビがあるが、株だちした新葉は林の中で思いきり葉を広げている。
この季節、山を歩き、重なりあったクマワラビの葉を見ると、どの葉も茶褐色にくまどられているのに気づく。どうしたのだろうと手にとって見ると、上の葉の胞子が下に落ちていっぱいくっついているのである。近くのどのクマワラビの葉もいっぱいの胞子である。
これらの胞子がみな発芽し、前葉体から育っていったらどうなるだろう、と考えているうちに、クマワラビ・イノデの胞子の熟するこの時期が、やがてくる梅雨の季節の前にあたっていることに思いあたった。多分、これらのシダの発芽には梅雨の雨が深い関係をもっているに違いなかろう。
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乾燥する神戸の裏山の、しかも、やや尾根筋に多く生えるクマワラビがふえていく理由の説明がついてくる。地面に落ちた胞子は梅雨の雨で運ばれ、落ち葉の下や湿り気の多いところにとどまって発芽し、前葉体になる。夏に向かうので気温、地温は上がり、前葉体に胚が芽生えるのに必要な地上の温度も十分である(暖地性シダで胞子は摂氏10〜13度以上でないと発芽しないし、発芽しても摂氏20度以上でなければ前葉体に造卵器が出来ない)。林の高木類は葉を茂らせ、直射日光は防がれる。梅雨が明け、やがて暑い夏を迎えるが、そのころの暑さに耐えたものがシダの小株(胞子体)として育っていくのではないか。
胞子を散布し終えたクマワラビは種族保存というもっとも大きな役割をはたして、胞子をつけた葉(胞子のう群は他のシダと違って、葉面の上部3分の1〜4分の1の羽片だけにつく)は縮み、枯れていくが、残りの葉は木々の間からもれ、さし込む日光を受けて光合成を営み、生活に必要な物質を作る働きをする。
最近、このような野外自然の中でのシダの生育、胞子の分散時期、配偶体(前葉体)形成と胞子体(シダ)へ育つ時期などについての研究が行われるようになってきた。
佐藤利幸氏(北大)の北海道における研究調査から、ゼンマイ・ジュウモンジシダでは胞子の分散は6月上旬、配偶体ができるのが7月頃、胞子体の形成は9月ごろであることがわかり、サカゲイノデは7月上旬から8月に配偶体ができたまま越冬し、翌年6月に胞子体が形成されることも調べられている。
北海道よりずっと暖い神戸でも詳しく調べていくと、いろいろなシダの季節生育型が明らかになるだろう。
横道にそれたが、話をイノデにもどそう。
イノデは、クマワラビの自生地と違って、山の各谷筋の林の下や湿度の高い傾斜地に多く生える。湿度の高いところに自生するが、乾燥地には育たない。六甲山地に多い断層破砕帯付近と谷筋との重なったところに多く生えることから、ゼンマイなどとともに断層破砕帯とも結びつくシダともいえる。
また、スギ林中は湿度が高く、イノデが多く生えることはいうまでもないが、そのことは後で述べよう。
葉柄や葉の裏などには細胞層が1層のうすい付属物の鱗片や毛が見られる。表皮細胞から生じたものでしくみは単純であるがいろいろな形のものがある。形・色・つや・人きさ・着き方・着く場所・着く密度を観察することが大切である。
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葉の厚さ
種類によってほぼ一定しているが,同じ種類でも日光のよく当たる乾燥地のものは葉が厚く,日陰のもの,湿ったところに生えるものはうすい.
- 革質・・・・・・
もっとも厚い,コモチシダ・オニヤブソテツ・ヒトツバなど
- 紙質・・・・・・
やや厚い,ベニシダ・ノコギリシダなど
- 草質・・・・・・
割合やわらかいもの,ツヤナシイノデ・ヒメワラビなど
- 膜質・・・・・・
うすくてやわらいなもの,ウスヒメワラビ・ミドリヒメワラビなど
葉の色についても一様でなく,緑色・黄緑色・淡緑色・鮮緑色・濃緑色などがある.葉の光沢の有無でも区別される. |
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- 鱗片と毛
- 葉柄や葉の裏などには細胞層が1層のうすい付属物の鱗片や毛が見られる。表皮細胞から生じたものでしくみは単純であるがいろいろな形のものがある。形・色・つや・大きさ・着き方・着く場所・着く密使を観察することが大切である。
| (1)鱗片のいろいろ |
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コシダの根茎につく毛 |
| ウラジロの鱗片 |
ノキシノブの鱗片 |
(2)毛のいろいろ |
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| ビロードシダの星状毛 |
オオクボシダの
葉の先端につく毛 |
フモトシダの
包膜につく毛 |
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