神戸の自然シリーズ3 神戸のシダ
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 エビラシダ
−幻の六甲の女王シダである−(6月)


 私が六甲山でこのシダと出合ったのは1965年6月6日である。六甲山にこのシダが自生していることほ、六甲山地自生シダの最初の目録(1949年)をつくられた川崎正悦先生の話や、日本および東南アジアのシダ研究で大きな業績を残された田川基二先生の日本羊歯植物図鑑で知ってはいたが、実物に接したことはなかった。

 この日は、シダの調査とは別の目的で裏六甲の谷を歩いていたのだが、ふとたち寄った小谷で、このシダに出合ったのだった。

 このエビラシダは、葉面は紙状草質で、卵状三角形をしており、長く横にはった細い根茎から葉はまばらに出るが、単羽状に深く切れこんでおり、葉柄の上部に関節があり、そこで葉身は、約120度の角度をなしてついている独特なシダである。牧野図鑑によると、エビラ(箙)シダとは、葉柄を矢に見たて、それがやや斜めに葉身とついているので、矢がさしこんである箙に見たてたことから、その名がついたのでほないか、と書かれている。また、ジクオレシダ(軸折れシダ)という別名があるが、その別名も葉身葉柄とが角度をなしているところからついたのである。


 写真からもわかるように胞子のう群は長楕円形から円形で包膜はない。胞子は7月頃から熟しはじめる。夏緑性のシダなので、秋が深まってくると地上部は枯れてしまう。

 六甲山で、このシダの生えていた場所は水の流れている谷筋なので、大水などの被害を受けるのではないかと心配していた。はたせるかな、1967年7月7日、1938年(昭和13年)の大水と同じくらいの記録的な大雨が降った。数日後、エビラシダの自生地を訪れた。付近の谷は荒れ、無惨な状態で、エビラシダの姿をどこにも見ることができなくなっていた。

 川崎正悦先生は、六甲山頂の東、石の宝殿付近にも自生地があると話しておられたが、詳しくお聞きできないうちに他界されてしまわれた。エビラシダは、兵庫県では六甲山だけしか見つかっていないシダである。近畿地方でも、三重県・奈良県に数か所生えているだけの稀産のシダである。

 日本では、群馬県を北限にして関東地方から南の十数県に分布する。四国に生えているが九州にはない。世界でほ中国・ネパール・フィリッピンなどに分布している。

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