新・神戸の自然シリーズ1 神戸のトンボ
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はじめに

 先日,ある機会に明治18(1875)年作成の,神戸の仮製地図を目にすることがありました.現在の市街地のほとんどがまだ水田で,川はその間をゆったりと流れ,海岸線は浜辺が東西に広がっています.現在垂水区や西区に広がる住宅団地はその影もなく,丘陵をしめす等高線だけが引かれてあります.そこには自然とともに生活している人々のすがたとともに,今はもういない水辺のトンボたちが,その風景の中にとけ込んでいるさまが目にうかびました.

 しかし一方,私が休みがあるごとに通っているたくさんのため池が,もうすでにそこにはありました.それは,100年以上昔と現在をつなぐタイムトンネルのように,脈々とそこに生き続けているトンボたちを私に実感させました.と同時に,わずか100年あまりの間の彼らたちを取りまく環境の変化の大きさに,胸をしめつけられるような思いがわき起こり,いままさにかれらはそこにしがみついて生き残っているのだということが一瞬のうちに理解されました.2億5000万年という人類よりはるかに長い歴史をもつトンボたちにとって,おそらく最大の危機がいま訪れようとしているのだと思います.

 こんなとき,神戸市環境局の高石悟氏より神戸のトンボの執筆依頼がありました.私はぜひこの機会に神戸のトンボのすがたを通じてヒトというものを見つめ直したいと思い,引き受けさせていただきました.一つの生き物を深く知ることは,地球を知ることにつながり,ヒトを知ることにつながるというのが私の持論です.これがうまく果たせたかどうか,この本を手にされたみなさんのご批判をあおぎたいと思います.また浅学ゆえの誤りがあることを恐れています.ご教示いただければ幸いです.

 本書の執筆にあたり,写真の提供,情報の提供,標本収集などで,たくさんの方々のご協力を得ました.阿江裕行氏,東輝弥氏,伊藤時雄氏,大嶋範行氏,岡泉州氏,岡本洋一氏,片谷直治氏,北川弘美氏,近藤祥子氏,新村捷介氏,杉谷篤氏,田端修氏,二宗誠治氏,宮崎俊行氏,山本哲央氏,渡辺庸子氏(五十音順)のみなさまに感謝いたします.また出版に際してお骨折りいただいた神戸市環境局の高石悟氏,神戸市スポーツ教育公社の家根康行氏,そして,毎日のように家を飛び出していた私をあたたかくみまもってくれた妻と子ども,これらの方々のおかげで本書は完成させることができました.心より感謝いたします.

1998年3月.
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