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1.神戸の街とトンボ
1-1.神戸の地形とトンボ |
神戸では今までに89種類のトンボが記録されています.これらのトンボを三重県をふくむ近畿地方2府5県で記録されているトンボ101種と比較してみると,遠方から飛来してきたと考えられる種(飛来種)3種をのぞけば,池や湿地にすむ種(池沼性の種)のほとんどは神戸でも記録されています.それに対して河川や細流などにすむ種(流水性の種)は未発見のものが多くなっています.たとえば,メガネサナエ※,ナゴヤサナエ,オオサカサナエなどは大きな河川や湖に,ヒヌマイトトンボは河口部のヨシ原に生活し,ヒメサナエは水量の多い河川を広い範囲にわたって利用した生活史をおくっているといわれています.これは,神戸の河川がいずれも小規模であること,それに対しため池が非常に多いという,地形的な特徴によるものと考えられます.ヒラサナエやコサナエはそれぞれ寒冷地の湿原や池を好むトンボで,六甲山くらいの標高があれば生活は可能だと思いますが,兵庫県でも中国山地の分水嶺あたり,またそれより北にしか分布せず,残念ながら神戸でみることはできません.残りの2種,ミヤマサナエとクロサナエは神戸で発見できる可能性があると筆者はみています.
さて,神戸市域は,トンボの分布状況からみて大きく5つの地域に分けられると考えています.これはそのまま神戸の地形的な特徴と,そこからみちびかれる水辺環境のちがいを反映しているように思えます.
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| 1-1-1.市街地 |
神戸は,背後に六甲山地をいだいた,自然環境豊かな大都会です.神戸はこの六甲山地のふもとに広がった扇状地に開けた街です.現在六甲山地の南側に帯状にのびる平地は完全に都市化され,いわゆる自然はもはや残されていません.河川も完全に管理され,住吉川のように河川環境の保全に取り組んでいるところはありますが,概して水路と化しています.わずかに残された池も,公園の一部として取り込まれています.
こういう市街地ですが,1種だけ特徴的なトンボがいます.タイリクアカネです.これはもともと海岸近くの水辺に産卵にくるアカトンボで,そういう場所がなくなった今も太古からの習性にもとづいて,秋になると海岸近くにやってきます.しかし工場や住宅が建ちならぶそこには卵を産むべき場所はありません.かれらは果敢(かかん)にも,ヒトの利用していない都会の中の水たまりに卵を産み,繁殖します.学校のプールや公園の池などがそれです.トンボの観察というと自然の残されたところへ行くのがふつうですが,このトンボだけは,筆者は六甲アイランドへ見に行くのが常です.阪神高速を走り,六甲大橋を渡ってトンボを見に行くというのは,いつも不思議な気持ちになってしまいます.ここではタイリクアカネ以外にも,アキアカネ,ナツアカネ,コノシメトンボ,ノシメトンボなどのアカトンボ,さらにギンヤンマやウスバキトンボ,そして驚くべきことに,ホソミイトトンボやホソミオツネントンボ(近藤祥子氏私信),またアオモンイトトンボ,ムスジイトトンボ,アオイトトンボなども現在では生息しています.これらイトトンボ類がどうやって人工島である六甲アイランドに侵入してきたか,非常に興味がもたれるところです.
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※改訂註:メガネサナエは本書出版後の1998年に神戸市で1頭だけ発見されました. |