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制作したビデオクリップを使って,オオカナダモの原形質流動,原形質分離を観察する研究授業を,2001年11月15日に神戸市立六甲アイランド高校で行った.そこから得られた本教材の可能性,また気づいた問題点についてここに報告したい.本教材を利用するために参考にしていただければ幸いである.なお本研究授業では,コンピュータを使わず,VHSビデオで教材を提示している.
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■タイトル:細胞の観察
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<対象> 神戸市立六甲アイランド高校,第1学年 生物 I A.
<材料> オオカナダモ.
<目的> 原形質流動,原形質分離の観察.
<指導教諭> 岩本哲人. |
| 展開 |
生徒の活動 |
支援と評価 |
| 準備 |
観察の準備
・顕微鏡等のセット |
準備の指示 |
| 導入 |
話を聞く |
授業のねらいの解説
オオカナダモの話
観察の方法について解説
教材ビデオを見せる |
| 観察 |
観察活動の展開
<原形質流動>
・プレパラート作成
・顕微鏡による観察
100倍から400倍へ
・スケッチ
<原形質分離>
・食塩水の滴下
・顕微鏡による観察
・スケッチ |
像が得られない生徒への支援
・手順に大きな誤りはないか.
・ねらいの像がきちんと観察できているか.
・スケッチが適切に描けているか.
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| まとめ |
観察内容の整理 |
スケッチの完成の指示 |
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■研究授業のスケッチ
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実際の授業のようすを展開に添って簡単に紹介する.
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<写真1>原形質分離のプレパラート作成の方法を解説しているところ.
どんな教材を使うときも教師の的確な解説は授業に不可欠である.
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<写真2>本教材をビデオで見ているところ.
原形質流動の動きが見られたところでは,驚きの声があがった.
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<写真3>原形質流動の観察開始.
実際の観察が始まり,本教材で見たとおり,ピンセットを使って葉をちぎり,プレパラートを作成しようとしている. |
<写真4>プレパラート作成時の困難
本教材ではスポイトを使わず,ピンセットを使って水を含ませるようにしている.その要領がうまくつかめず苦労している.ピンセットを広げすぎているのがうまくいかない理由である. |
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<写真5>原形質分離の観察のため,食塩水をカバーグラスのすき間に滴下しているところ.
この方法は本教材には映像がなく教師が白板と言葉で解説した部分(写真1).こちらの方はうまく操作できている. |
<写真6>観察をする生徒.
観察が始まるとそれに集中し,原形質流動が見えたときには驚きと喜びの声があがった.実験・観察ではやはり実物が授業の効果を高める. |
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<写真7>スケッチをしているところ.
生物の授業でスケッチは観察力を高めるための必須のアイテム.簡単に写真が撮れる時代であるが,的確な観察をさせるという本授業のねらいから,機器は使用しない. |
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■研究授業のまとめ
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この研究授業を通して,本教材の持つ可能性と,問題点について整理しておきたい.
1.「プレパラートの作成」,「顕微鏡の使い方」のクリップは、受け手側の意識が高まっていない状況で通り一遍見せても内容が伝わらない.
たとえば<写真4>に指摘した困難などには,まず生徒は気づかない.よって利用に当たっては以下の点に留意するとよい.
- 映像の何を見て欲しいのか,ポイントを教師が的確に指示し,それを意識させて見せること.
- 最低2回は見せる,また観察開始後生徒が必要に応じて見直すことができるよう,たとえば理科室にコンピュータを置いておく等の環境をつくっておき,各自で納得できるまで確認できるようにしておくことが推奨される.
映像の持つ説得力は教師の口述による説明を上回る部分があって,見せることだけで十分効果的である反面,展開されている映像のどこにポイントがあるかは映像それだけでは十分伝わらず,教師の支援が必要であることが明らかになった.つまり,映像は概略を短時間で理解させるのに効果的であるが,詳細を「短時間」で伝えるには,見る側にそれなりの経験が必要であるということである.授業で実験操作にはじめて出会う生徒たちに映像だけで「簡単に」伝わらないものが何であるかを分析し,教師が支援を行うと,映像を効果的に利用できる授業が展開できると考える.
2.顕微鏡の映像を先に見せることは授業の動機づけになる
原形質流動は,はじめて観察する生徒たちにはかなり感動を与える教材である.それを映像で先に見せると感動が半減するのではないかという危惧があるが,これは杞憂であると思われた.
はじめに原形質流動の映像を見せたときに,驚きの声を上げた生徒がいた<写真2>.この映像を見せたことによって,生徒たちの観察の意欲は失われることなく,むしろ到達点がはっきりしたことで,それに向かって集中できたように感じられた.そのことは,実際の原形質流動が眼前に展開されたときに,同じ生徒のより大きな驚きの声が発せられたことで示されていると思われる.つまり,先に見せることが授業の動機づけの役割を果たしたといえよう.
これは,本教材の提示の長さが一つのポイントになっているのではないかと推察している.すなわち,こういったクリップの時間は、何を見るのかが分かる一方で、十分見きってしまうことがない長さであることが大切であろうということである.これは上記の,「映像は概略を容易に伝えるが,詳細は簡単には伝わらない」といった特性を逆に利用しているものといえよう.「詳細」は実際の観察で行うのが授業のねらいである.
理科の授業では,発見を求める調査活動としての実験・観察と,事実を確認する実験・観察がある.後者の場合,ゴールがはっきり示されることで子どもたちはそれに向かって効率的の作業を進めようとする.見てみたいという動機と、見ることができたというゴールの両方を経験することで,教育効果が上がるものと思われる.
3.観察が軌道に乗ったらこういった教材はほとんど不要である
観察が軌道に乗ってくると,生徒たちの関心は完全に実物に移行し,もはやこういった教材の果たせる役割は見いだすことができなかった.
4.まとめ
以上,本教材の研究授業内での利用そのものはほんの短時間だけであったが,教材の特性を理解した教師の支援を行い,提示するタイミングをうまくセットすれば,生徒の興味・関心は映像から実物へと自動的に流れていき,スムーズな授業展開が達成できるものと思われる.
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