神戸の自然シリーズ9 神戸の野草
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U.野草の調べ方と標本の作り方

 野外に出て野草を観察するとき、どんなことに気をつけて調べればよいのでしょうか。植物の野外観察を奨励し、その普及につとめた田中端穂氏は次のように述べています。


植物をとる前
イ. はえている場所はどんなところか、土はじめじめしているか、林の中か、など。
ロ. 1本しかないか、ほかにもその近くにたくさんはえているか。
ハ. どんな草といっしょになってはえているか。
ニ. いくつか調べてみて、どのくらいの大きさのものが多いかなどを調べる。

植物をとる時
ホ. 花が咲いていて、根もとの葉のついているものをさがす。
へ. とりやすい場所にあるものをえらぶ。
ト. あまり大きすぎたり、小さすぎたりしないものをえらぶ。

植物をとったあと
チ. 根がきれたり、花がおちたりしていないか調べる。
リ. 花がおちないように気をつけて、ふくろに入れたり、紙にはさんだりしておく。


名前の調べ方
一ばん大事なことは、今までに自分が知っているヨモギとか、ハコベ、アザミ、フクジュソウなどの草の中の、どれににているかをみわけることなのです。そのためくわしくつぎのことを調べていきます。

ヌ. 太さ、切り口の形、かたさ、毛のあるなし、すじのようす、なめらかさ、色、地下茎のあるなしなど。
ル. 太さ、長さ、細い根のつきかた、根のはりかたなど。
オ. 大きさ、形、色、おもてとうらのちがい、すじのつきかた、あつさ、なめらかさ、ふちのようす、毛のあるなし、根もとの葉と上の方の葉のちがい、茎についているようすなど。
ワ. 形、大きさ、花びらの数、色、もよう、花のつきかた、花のかず、おしべとめしべなど。


 このように、くわしく調べながら、本や図鑑を見て、名まえをつけていきます。もちろん自分で調べるほかに、先生にもお聞きしてたくさんおぼえてほしいと思います。

 しかし、一度名まえがわかっただけでは、すぐわすれてしまうのはあたりまえですから、しっかり、おぼえてしまうまでは、毎日草を見ながら「この草は何という名まえだったろう。」と、何かいでも思い出してみるような努力が大切なのです。私もそうしておぼえました。

 また、とってきた草の中には、その時調べても、名まえのわからないのもあります。しかし、その草をそのままにしておくと、まもなくかれてしまって調べにくくなってしまいます。こういう時に、おしばにしてしまっておけば、あとから調べる時でも、役に立つし、また、おしばをつくりながら新聞紙をとりかえたりする時、名まえをおぼえていたかどうか、自分で思い出してみたりして、早くおぼえてしまうこともできます。
(子どものための東北海道の植物より)


野外観察の準備
神戸市内や六甲山地など日帰りの野外観察の準備について少しふれておきましょう。

ルーペ、ノート、地図、採集標本を入れるビニール袋(ゴミ収集用でよい)、はさみ(できれば剪定ばさみがよい)、小型の植物図鑑
服装は活動的なもので、とくに長袖、長ズボンを着用し、帽子と軍手(手袋)もぜひ用意します。六甲山頂付近まで足をのばすときなどは雨具も準備しましょう。


おし葉標本の作り方
名前がわからなかったり、特徴をくわしく調べたりするときには、おし葉標本をつくっておくと役立ちます。もし、おし葉標本がしわになったりすれば、何度でも作り直しましょう。その都度、新しいことが見つかるものですから、時間をかけて作ることです。

準備する物
おし板 四つ折りにした新聞紙より少し大きめの板で、材料はどんなものでもよいでしょう。
吸取紙とはさみ紙 水分を吸いとらせる紙で、新聞紙を3〜4枚重ねて使う。はさみ紙は新聞紙を2つに切り、それぞれの標本をはさみます。
重し コンクリートブロックは扱いやすいが、あまり多くのせすぎると、標本の花や茎がおしつぶされてしまうことがあります。


おし葉の仕方
 泥のついた根は水で洗い、古いタオルなどで水気をふきとります。そして2つ折りにした新聞紙の上に野草をおき、紙からはみださないように気をつけながら形をととのえます。余分な枝や葉は切り落とし、重ならないようにします。植物の名前や、採集地、採集年月日などを新聞紙に書いておくと、整理するときに便利です。そのあと2つ折りにした新聞紙の半面を重ねますがそのとき標本の上下に吸収用の新聞をおきます。そしておし葉の高さが平均してそろうように、前後をふりかえたりして釣り合いをとります。もし高さが不ぞろいだと、重しの圧力がかたよって、よい標本はできません。

 吸取紙は1日たつと植物の水分を吸いとりますので、7〜10日間ぐらいは毎日とりかえます。やわらかい草は、紙からなかなかはがれませんが、乾そうしてくると自然にはがれるようになりますから、それまで待ちます。新聞紙は日の当る所で乾かすとまた使えます。

 おし葉が乾そうしたかどうかは、小型の草を手でもつとピンと立つ状態だと仕上っているのです。


おし葉標本の仕上げ

(1) 用意するもの
台紙、アラビアゴム液、のり紙、ラベル、はさみ、ピンセット、スポンジ
台紙 新聞紙4つ折りと同じ大きさの少し厚手の模造紙か上質紙を使います。
のり紙 アラビアゴム液を上質紙のうすてのものにひき、それを乾かし細長く短冊形に切ったものを用意します。
アラビアゴム液というのは、切手などの後ろについている乾性ののりのことで、粉末になっているものを売っています。でんぶんのりは、虫くいにあいやすいので使わない方がよいでしょう。セロテープなども、年数がたつと接着部分の紙が変色したり、はがれたりします。
ラベル 学名、和名、採集地、採集年月日、採集著名、整理番号、種の同定者名などを記入し、台紙にはります。
スポンジ のり紙を水を含ませたスポンジで湿らせます。
はさみ 小さい部分をピンセットで整えたり、台紙にはいりきれない枝などを切りそろえるのにはさみを使います。

(2) 台紙へのはり方
台紙にはる前に、ラベルをはる場所(右下)をさけて、バランスがとれた位置をさがします。位置がきまったら、台紙からはみ出さないように整えて、のり紙をはります。

のり紙は、細長い短冊になっています。あまりたくさんはると見苦しくなるので標本がはずれてこない程度におさえます。野草の大きさにもよりますが、台紙いっぱいの大きさで10こ程度が適当です。

植物が大きすぎて1枚の台紙に入らないものは、3〜4つに切り、分けて台紙にはると良いでしょう。番号を忘れずにつけておきます。

ラベルは、色あせない黒インクを使います。

ラベル見本


標本の整理と防虫
 標本の数が多くなると、整理棚があると便利です。整理棚がなくても、大きな紙袋に科ごとに入れて置くと見やすく、また、目録カードを作っておくと、数多くある標本の中から取り出すのに便利です。

 整理棚や大きな紙袋に入れて整理しておくとき、標本に虫がつかないようにナフタリンを入れておくことが大切です。

 以上、野草の標本のつくり方について述べましたが、おし葉は四季おりおりの標本をとり、1つの草の成り立ちのちがいを調べるのにも役立ちます。

 はじめは、図書を読み、実賎し、失敗をくり返しながらもそのうちに自分に合った標本づくりができるようになれるものと思います。


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