 |
あとがき
|
私は昭和55年4月から神戸市の西の端にある岩岡中学校に勤務しています。理科の教師である私は近年さかんにいわれはじめた、地域の教材化や、夏休みの自由研究を生徒に指導しなければなりません。中学時代から大学にかけて蝶を追いかけてきたことの経験はあっても、多くの生徒に、また、毎日の授業で地域の自然について触れるほどの力量はありません。地層の調査をさせてみたり、池のプランクトンを観察させたり、いろいろとやってみても私個人の知識不足で満足な結果が得られませんでした。生徒達にとっても何をどう見るのかということまで到らず、ただ課題として何かをやった程度に終ってしまいます。私自身いつも何かできないだろうかと考えてしまいます。多くの理科の先生方も同い悩みを持たれているのではないでしょうか。
幸い、西区には池や林が多く残されています。岩岡町には山はないので、田畑と池と竹やぶと雑木林です。水田のカブトエビの調査をやってみましたが、同定がむつかしい。竹やぶの密度を調査しましたが、おもしろくない。岩岡町の巨木調査もしてみましたが、たいしたことがない。そこで次は池です。まず40個ほどある岩岡町の池を植物のある、なしで調査させました。しかし、岩岡町の池にはヒシ1株すらない、実によく整備されたため池が多いのです。台地である岩岡町には「七ちゃく二十日」ということばが残されています。これは長く水不足に苦しんだ地元の人達のことばで、山田川、淡河川疎水から岩岡へ水を引くための費用返却のために、1年を720日働くということばです。そのため、ため池はよく手入され、きちんと管理されています。しかし、この岩岡の池に偶然、コウホネの群落地を発見しました。近くにジュンサイやヒメコウホネのある池、そしてオニバスのある池を次々に発見しました。
シダ植物の研究家の白岩卓己先生(神戸の自然シリーズ3、「神戸のしだ」の著者、現在神戸市立御影小学校教頭)のことば「自然は偉大です。学ぶことは無限です。」のとおりでした。
神戸市西区や隣接する明石市など現在、急ピッチで開発が進行しています。自然が失なわれ、学校建設や宅地造成にまずため池が埋め立てられています。オニバスもその巨大な葉を再び我々の目に触れさせなくなるかもしれません。人の生活と自然の保全や保護は二律背反するものではないはずです。自然の探求や地域の教材化も、そのことを目指しているはずです。そのためには、私達の周りにあるものをまず見る目と考える力をつけなければなりません。これからは私自身が地域を生かした学習をし、やればいくらでもできる自然の探求を水生植物の調査を通して続けていき、生徒達に生きた教材を提供していきたいと思います。
この本は水生植物にまったく関心もなく、何も知らなかった私が、教育研究所の研究グループの先生方に啓発され、自然の見方や接し方を教えていただいたのがきっかけで生まれました。
写真もこの本のためにとりはじめました。不十分な写真ばかりではずかしく思っています。どこにでもあると思い、とりそこねたものやピントのぼけたものでいっぱいです。研究グループの小林辰至先生や久後利雄先生からも写真をお借りしました。
また、岩岡中学校の松尾卓郎校長先生はじめ先生方にはいろいろな面での御援助や激励をいただきました。さらに、本書発行の機会を与えてくださった神戸市立教育研究所の諸先生方にはいろいろ研究上の便宜をはかっていただき、特に前田保夫先生には終始多大な御援助を賜わりました。そして神戸大学の角野康郎先生には、観察の御指導、種の同定、写真や文献の御提供さらに原稿の校閲まですべてにわたって御援助いただきました。ここに深(感謝いたします。
<写真提供> ページ番号は、当Webページでは、原則として各ファイル名の下3桁になっています。
角野康郎
17ページ、18ページ上・下左、19ページ上、23ページ上左・上右・下左、24ページ上左・上中・下、25ページ上右・下右、26ページ上、30ページ下右、31ページ右・上、32ページ上、34ページ下左、35ページ上右、36ページ上左、37ページ上、41ページ上、45ページ下左、52ページ上右・下右、55ページ上、59ページ上右、63ページ上右、64ページ上・下、67ページ上右、70ページ左・右、72ページ左・右、76ページ上左・下、78ページ上、79ページ右、81ページ上右、85ページ下右、86ページ左・右、88ページ、
小林辰至
9ページ、14ページ下右、20ページ上、27ページ上右、29ページ、30ページ上左、43ページ下右、44ページ上、52ページ上左、53ページ上左・上右、58ページ上左、61ページ、66ページ、71ページ右、83ページ右、84ページ下、87ページ上左・上右
前田保夫
表紙、11ページ上・下、12ページ上・下、14ページ上・下左、44ページ下、53ページ下右、73ページ上左、74ページ下
久後利堆
21ページ上、69ページ下左、裏表紙
|
|