夏から秋の草たち−夏のつる草


 夏から秋にかけて花を咲かせるものには、ヒメムカシヨモギのように幼植物で冬を越してきたものや、メヒシバのように春に芽を出し夏にかけ成長してきたもの、そして、ヒルガオのような地下茎から伸びだしてくる多年草などいろいろあります。

 ここでは、そのいくつかをとりあげます。



 
 自力では立ち上がることができないため、他物に巻きついたり、寄りかかったり、くっついたりして光を求めて成長していく植物をひっくるめて「つる植物」あるいは「つる性の植物」といいます。特に、夏から秋はつる植物の目立つ時期です。
. 「...ヅル(蔓)」「...ヅタ(蔦)」「...フジ(藤)」「...カズラ(葛)」などの名前のついたものが多いようです。草だけでなく木性のもあります。

 次のようなタイプがあります。

つるで巻きつく ヒルガオ フジ、クズ スイカズラ
巻きひげで支える ヤブガラシ カラスノエンドウ(春)
吸盤ではりつく ノブドウ
葉柄を伸ばしてからむ センニンソウ ボタンヅル
逆刺(とげ)でひっかける アカネ カナムグラ ヤエムグラ(春)
気根を出してくっつく キヅタ

 
 つるの巻き方について2、3の例をあげておきます。

右巻き ヒルガオ コヒルガオ クズ アオツヅラフジ マメアサガオ ヤマノイモ
左巻き ヘクソカズラ スイカズラ フジ カナムグラ
どちらにもなる ツルニンジン コバノカモメヅル



 
 正面から見て、表(手前)と裏(向こう)に注意して人差し指で矢印の向きに渦巻きをたどる。
 
 時計回りなら右巻き、反時計の向きなら左巻きとする。
 
 簡単には、正面から見てるつが
   左下から右上へ・・・右巻き
   右下から左上へ・・・左巻き

 ※注意
 このシリーズでは、植物図鑑の専門書(北村四郎博士)に従って表現してあります。



写真232、ヒルガオ
7月、舞子坂3
写真233、コヒルガオ
7月、都通5


■ヒルガオ

 山田川沿いのセイタカアワダチソウによじ登り、直径が5,6cm、ピンクのろうと型(じょうご型)のきれいなヒルガオが咲いていました(写真232)。庭のアサガオがしぼむ頃、この野生のヒルガオが真夏の日射しを浴びます。

 アサガオと違い、自家不和合性といって種のできにくい性質がありますので、つぎのコヒルガオらと同様、多くは地下茎による繁殖となります。


■コヒルガオ
 国道沿いの植えこみを覆うようにして、コヒルガオがつるを延ばし、薄いピンクで直径4cmほどのじょうごが咲きほこっていました(写真233)。

 ヒルガオもコヒルガオも人がちゃんと記録に残していなかった大昔に、大陸からの作物や人の移動とともにやってきたとされます。



写真234、セイヨウヒルガオ
7月、小野浜町
写真235、マルバルコウ
9月、須磨寺1


■セイヨウヒルガオ

 港付近や貨物の線路、操作場あたりから市街地へと広がっていったヨーロッパ原産の新しい帰化植物で、これにはきちんと記録があります。

 花は直径3cmほどで、多くは白色で、ときに薄くピンクに染まります(写真234)。


■マルバルコウ

 通りに面した民家の軒先のポール(Pole)に巻きついているのは、熱帯アメリカ原産の帰化植物です(写真235)。朱赤色の花は直径1.8cmほどですが、小さな星形をして人目を引きます。多年草で畜産農家の飼料畑では嫌われますが、こうして道ばたを飾ってくれると道行く人の心をなごませます。



写真236、マメアサガオ
10月、西舞子
写真237、ホシアサガオ
10月、伊川谷町


■マメアサガオ


 歩道の植えこみの中から生えていたマメアサガオ(写真236)。直径は1.5cmほどと小さく、葉腋(ようえき:葉のつけね)より1〜2本の淡紫色のじょうご花を立てます。原産地は北米です。花は夏から秋にわたります。


■ホシアサガオ
 見たのは郊外の西区ですが、市街地にも入っていると考えられます。今まで紹介しましたなかまのヒルガオ科のひとつで、熱帯アメリカの原産です(写真237)。

 じょうごの底のほうが濃い紫紅色です。



写真238、ヘクソカズラ
4月、中島通2
写真239、ヘクソカズラ
9月、青谷町
写真240、ヘクソカズラ
1月、国香通7


■ヘクソカズラ

 フェンス(fence)にからんだまま、枯れたように見えるつるから「どっこい、生きてるぞ」と言わんばかりに春を迎えたヘクソカズラが新芽を吹いて若葉を広げはじめています(写真238)。これはもう、草というよりは落葉性でつる性の樹木(藤本:とうほん)です。


 こちらは塀(へい)の内側の庭のひと隅から登ってきて、塀の外側へはみ出したままで愛くるしい花を覗かせています(写真239)。

 漢字で書けば「屁糞葛」で、なんともひどい名前です。別の名はヤイトバナといいます。このほうは漢方療法の「やいと」の跡になぞらえたものです。また、世界共通の学名はpaederia scandensで、悪臭のあるつる植物を意味します。春のヤエムグラと同じアカネ科の一員です。

 なお、暖地の海岸には葉が厚くてつやのある変種が生えていますが、こちらはハマサオトメカズラ(浜早乙女葛)と呼び、えらくシャレた名前です。


 黄褐色の実がたくさんついていますが、春までにはほとんど無くなってしまいます(写真240)。自然に落ちるものもありますが、私はあのくさい実をヒヨドリがついばんでいるのを見たことがあります。種のゆくえを調べてみるのもおもしろいです。



写真241、ヤブガラシ
6月、落合中央公園
写真242、センニンソウ
9月、中島通


■ヤブガラシ

 生垣、公園の植えこみ、林のふちなど寄りかかれるものがあれば、それらを利用して、水平、垂直どちらの方向にも広がります(写真241)。

 ヤブガラシの場合は、葉の変形した巻きひげをのばして他物にからみつきます。葉は大小5枚で鳥足状になった複葉となり、ほかのつる植物との区別は簡単です。ブドウやツタと同じなかまのブドウ科で、花には多種類の昆虫やクモがやってきます。一度じっくりとこの花にやってくる虫たちを調べたいものです。


■センニンソウ

 同じつる植物でもこちらは、つるや巻きひげで体を支えるのではなく、葉の柄が他物にふれると伸びだして、それを抱え込むようにして巻きつけるのです(写真242)。

 花びらはなくて、4枚の白いがくがよく目立ちます。おしべはたくさんあって白く、長く突き出しています。果実は数個あつまって風車のようになり、その一つ一つが鳥のはねのようなものをつけていて、風を受け、種を遠くへ散らします。




■ボタンヅル

 日のよく当たるところに生え、さきのセンニンソウと同じような花のしくみです。庭に植えられるカザグルマ、テッセンなどと同じクレマチスのなかまで、キンポウゲ科になります。葉のようすが庭のボタンの花と似て、3枚ひと組の複葉です(写真243)。

 種子の散布もセンニンソウと同じです。センニンソウとは葉のふちの違いで区別できます。



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