イヌブナ林の植物たち 4ーイヌブナ林床の草本層(2)
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雑木林の下草 |
山頂部の尾根には、ベニドウダン・ヤマツツジなどのツツジ科植物をはじめ、リョウブ、コナラ、ミズナラ、タンナサワフタギなどの落葉樹が密生し、常緑のアカマツ、アセビがわずかに生えています。
六甲山の尾根は、たいてい岩が露出していますが、岩の裂け目に木々が根をはり、それが露岩を支えることもあって、そんな所は比較的、風化の進んでいないところです。
ここには、ミヤコザサもスズタケもあまり進入できず、六甲山地に多い代表的な下草であるイワカガミとチゴユリが生え、自然の姿を身近に感じさせてくれるところです。
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イワカガミは、葉は円形で、縁にはとがった鋸歯があります。花は5月から6月にかけて、10センチから20センチの花茎を伸ばしたその先に、淡紅色の美しい花を咲かせます。
おもに岩地に生え、林につやがあるところから鏡に見立てて、イワカガミとつけられたものです。六甲山自生のイワカガミは高山型のコイワカガミより、北海道・東北・中部地方の日本海側のブナ林に群生するタイプの、葉が大型のオオイワカガミの方に近いものです。(口絵6・19ページ・裏表紙)。
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チゴユリは、15センチから30センチくらいの小形のユリ科植物です。地下茎は横にはい、葉は卵楕円形で互生し、短い柄があります。4月から5月に茎の先端にふつうは1個の白い花をつけます。花のあと、まるい小さな果実を結び、熟して黒くなります。口絵11ページ
尾根でも、やや平らなところや風を激しく受ける斜面などでは、高木としてアカマツ、亜高木としてアセビ、タンナサワフタギなどがまばらに生え、下草は、完全にミヤコザサに独占されてしまって、他の植物の進入を許しません。
それでも、ミヤコザサのはびこるところからどうしてはい出てきたのか、つる植物のサルナシ、イワガラミ、アリマウマノスズクサが木にまきつき、葉を広げています。また、ひっそりと清楚で香り高い花を咲かせるササユリも、稀に生えています。 |
サルナシは、落葉のつる性植物です。広卵形の葉は互生し、裏面には淡褐色のあらい毛があります。夏に雄花は柄のある数個の白花を腋生しますが、雌花は単生します。球形の液果は甘ずっぱい味がし、食べられます。サルが食用にするナシという意味でこの名がつきました。
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イワガラミは、アジサイと同しユキノシタ科の植物で、茎はつるになり、気根を出して岩や木にからみつきます。広卵形で長い柄のついた葉は対生し、夏枝先に集散花序の白い小花をつけます。花序の周囲には白色の装飾花がいくつかつきます。口絵10ページ
アリマウマノスズクサは、オオバウマノスズクサの姉妹種として名づけたウマノスズクサ科の植物です。牧野図鑑によると、「実質は薄く花は小形、がくの展開部は初め黄色、のち直ちに全面が黒紫色となる」ことから、葉質も厚くがくの展開部が緑黄色をしていて褐色の条斑のあるオオバウマノスズクサと区別されます。
しかし、アリマウマノスズクサには、がくの展開部は、黄色を帯び紫色の脈のあるものと紫黒色のものとがあって、黄色の部分が黒紫色に変わるのではないことは調べた結果、明らかになりました。葉の形については、三角形から3裂するもの、狭長なものなどさまぎまです。ウマノスズクサ科の植物はジャコウアゲハの食草としてもよく知られています。口絵13ページ
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写44.アリマウマノスズクサ |
日当りのよい尾根の裸地に、植物がどんな状態で入りこんでくるか、これまでの調査にもとづいて推定してみましょう。
まず、イワカガミが進入をはじめます。イワカガミは林の下に生える代表的な下草ですが、本来はより強い光の下で育つ性質の植物で、新しい土地でよく育ち、みごとに花を咲かせます。
つづいて、裸地にのっそりのっそり遅れて顔を出すものにヒカゲノカズラがあります。ヒカゲノカズラは全国各地の山に普通に生える常緯のシダ植物です。日光のよく当たる、水はけのよい、やや乾操するところに群生することが多いシダです。
茎は針金状で長く地上をはい、ところどころで二股状に数回分岐して斜上します。鮮緑色の葉(小葉)を密生し、胞子のう穂は細い茎の上に2〜4個つき、淡黄色で円柱形をしています。胞子葉の上部基部にできる胞子のうは、熟すと構にさけ、黄白色の胞子を出します。軽くたたくと黄色の粉が飛び散ります。 この胞子は石松子といって、吸湿性が少ないので、薬の防湿のために使われました。また花火の火花を美しくするためにも使われていました。
ヒカゲノカズラの後は、ツツジ科のスノキなどの低木類が続いて進入してきます。
大きく人為的な手の加わったドライブウェイの道ばたには、セイヨウタンポポやスギナが生えはしめます。ススキの草原地もでき、荒地にはオオイヌタデが繁茂するようになります。秋には、ヨシノアザミ、リュウノウギク、ノコンギク、イナカギクなどキク科の植物が花を咲かせ、シソ科のナギナタコウジュも群生するようになります。
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