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3.自然の森は4階建て
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森の木を1本1本、すっかり調べるのを毎木調査とか、皆木調査といいます。高さ20メートルもに達する大きい木に対して、草の高さと違わないような低い芽生えの木や、人間の背丈ほどの木など、それらは、互いに何等かの約束の中に生えているのでしょうか。それとも、あるがまま無雑作に雑然と生えているのでしょうか。
10メートルの方形区の一辺に立って、地面から木の梢までの断面をスケッチしてみました。中学生の樹高の表からも読みとれるのですが、絵にすると一層はっきりします。
地面すれすれの高さの草や木の芽生えのグループ、これは建物にたとえると1階です。草本層といいます。
つぎの高さは、人間の高さぐらいから、せいぜい5メートルまでぐらいの木で、ツツジの仲間やネズミモチ、ヒサカキなどがこのグループです。低木層といい、建物では2階です。
私たちが、木というのは、5メートルぐらいより高い木をさしていう場合が多いようです。その木のグループも2つに分かれます。5メートルから10メートル前後までの高さのグループで、アカメガシワやソヨゴ、タカノツメなどがあり、亜高木層といいます。建物では3階にたとえられます。
もっとも高い木のグループ、常に太陽の光をうけて、遠くから見て、こんもりと森の梢を形づくっているグループです。アラカシ、モチノキ、クスノキ、スギなどがあり、高木層といいます。最上階の4階です。
不思議に、この4つの階層は、ちょっと森を見慣れてくれば、誰もが最初に気づく、森のしくみです。ところが、スギやヒノキを植えた林や、人手の入った管理林では、このような自然林のしくみは殆ど見られません。天然の森の木立ちは4階建てです。
つぎは、林の中に入り真上を見上げ、枝張りに注意してみましよう。うっそうと繁った木々の緑で、森の中は薄暗く、ひんやりしています。そのような印象からすれば、木々の緑は幾重にも重なっていて……と思いがちですが、事実はどうでしょうか。これも絵にしてみました。枝先きの真下に立って、木の棒を背後に直し、猿が尻尾を垂らした状態を真似て、顔は真上を見たまま、枝先きの真下を歩きつづけます。歩いた跡には、棒線が地面にしるされています。枝先きをたどって一回りすると、元の場所に戻りますが、隣り合わせたそれぞれの木の下で、この作業をくり返し行います。
それをスケッチ風にまとめたのが上の図です。枝張りの図です。縄張りではありません。しかし、隣合った木の枝の先端は、僅かに重なることはあっても、ほとんど重なり合わず、それぞれの領分が守られていますね。木にも、それぞれのテリトリーがあり、決して理由なく他を侵さないようです。そうすると、やはり縄張りといえます。このような図を樹冠図といいますが、どの高木も太陽からの光りが万遍にあたるようなしくみが保たれています。森林の社会の第2法則ともいえるぐらい、見事な秩序で、さきの階層構造とともに、自然の巧まざる構成には驚かされます。
いま、理由なく他を侵さないと書きましたが、理由の生ずることがあります。それは、台風などによって、大木が倒れたり、マツクイムシにやられてマツが枯れたりした場合です。そのときは林内に大きい空間が生まれます。ひさびさに太陽の光が地面までとどく、スポットのような場所です。とうぜん、その場所には草も木も新しい芽が先を争って生えてきます。枝の縄張りがなくなったので、周りから、いっせいに残った木々の枝先が伸びてきます。新しい空間に根づいた新しい木が、やがて次代の森をつくっていきます。一見、平和で静かな森の中にも世代更新の波風が立っているのです。
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