神戸の自然シリーズ13 神戸の社寺林を歩く
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4.繁華街に育つ自然林
中央区 生田神社

生田神社の神殿の背後は都心に珍しい自然林が見られる


生田の森
 正月、初もうででにぎわう生田神社には、「門松」がないのをご存知ですか。「枕草子」の中でも「森は生田の森・・・」と書かれ
たほど、昔から有名な生田の森は、今も昔も、マツが一本もありません。古来から、祭りごとにはかかせないマツも、この生田神社では、タブーとされている木なのです。
 正月の「門松」のかわりに「門杉」がたてられ、能楽殿の鏡板にえがかれる「老松」は「老杉」に書きかえられ、ある時代の、「松本」という神主は、「杉本」と改名したという生田神社の
「マツぎらい」 にはどんなわけがあるのでしょう。
 いつの時代のことなのかは、はっきりしませんが、かつて生田神社が、布引の砂子山(いさごやま)のあたりにあった頃、洪水によって六甲山地から押し流されてきたマツの流木によって神殿がつぶされてしまったという事件がありました。それ以来、生田神社は、一切マツを使わなくなったという伝説が伝えられています。
「生田神社の歴史は、生田川の洪水とのたたかいだった」とは現在の宮司さんの言葉ですが、神戸をおそったたびたびの水害は、生田川の近くにあった生田神社にとっては、存亡にかかわるほどの大事件だったにちがいありません。
 この水害とマツの伝説に関連して、神戸市では水害のたびに、「マツは山くずれを防ぎうるか」とか「六甲山地にどのような植樹をするのがよいか」という議論がされてきたといいます。
 単なる伝説としてではなく、自然とのたたかいの中で出てきた教訓として興味ある「生田神社のマツ嫌い」伝説ではないでしょうか。


 ・野鳥の集まる貴重な「保護林」

 かつては、三宮から県庁ふきんまで広がっていた「生田の森」は今は、数十メートル四方の小さな森にすぎません。しかし神戸の代表的な繁華街の三宮にあるちっぽけな森が、ほとんど人手を入れない「自然の森」の姿で残されているのは驚くべきことです。
 市街地の神社や寺院の林といえば、落葉をきれいにはき、雑草、雑木は抜きとられて「管理」されているのがふつうです。ところがここでは「自然の循環を大切にしたい」という神社の考えによって自然のままに保護されています。
 戦争によってほとんど焼夫してしまい、残された木々も戦後の混乱の中で代りとられてしまったかにみえた生田の森でした。ところが、その中で樹令数100年と推定される (胸の高さの直径2メートル以上)クスノキの切り株から、再び芽をふきはじめたのは、昭和30年頃だったと言います。そのクスノキを中心に、アラカシ、ケヤキ、ツバキ、オガタマノキ、サンゴジュなどが、何層かの自然状態の樹相を形づくってみごとな”生田の森”がよみがえっています。数十年にわたって「保護」されてきた森の林床には、落葉や倒木がつみ重なって腐葉土層をつくり、そこはヘビやイタチ、その他いろいろな昆虫類のすみ家となっています。
 この森が、ツグミやヒヨ、モズ、セキレイなどの野鳥が訪れる貴重な″人工の中の自然林”として守られてきたことに感心せざるをえません。


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