神戸の自然シリーズ3 神戸のシダ
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 1.森林とシダ−(1) 再度山の森林とシダ

 神戸のシダの12種類を取り上げてみてきたが、これらのシダは、はたして森林とどのように結びついて生えているかについてみていこう。


(1)再度山の森林とシダ

 まず最初に、神戸の裏山に残っている代表的な自然林のある再度山(ふたたびさん)で調べてみよう。

 再度谷大師道を上り、猩々池(しょうじょういけ)を過ぎるあたりから、谷の左右にスギ・ヒノキの植林地が多く見られるようになる。ここを通り過ぎて、さらに上ると、再度山のシイ・アカガシを中心とした自然林のある場所にたどりつく。道の両側から谷間にかけて、さらに、大竜寺山門、山門から本堂にいたる参道の左右はうっそうとした自然林の姿を残している。この状態は、再度山の頂上付近までみられるが、塩が原へ続く再度越を過ぎると自然林は、アカマツ・コナラ林に変わっていく。

 明治の中頃までは、このあたり一帯、風化・崩壊の状態がはげしく、そのまま放置されていた。記録によると、明治35年以来、ようやく本格的な砂防・造林工事が行われてきたようで、当時の様子を知る手がかりになる写真が残っている。植えられた木は、アカマツ・クロマツ・スギ・ヒノキ・ケヤキが主だったようである。

 以上のように、再度山一帯の森林は、その構成からみて、大きく3つに分けられる。一つは大竜寺を中心に広がる自然林であり、一つは、再度山の北面や西側の植林後約70年を経過しているアカマツ・クロマツ・アイグロマツを中心とする人工林であり、他の一つは、自然林に続く南西や東側のスギ・ヒノキを中心とした人工林である。

再度山自然林の主な植物
高 木
亜高木
アラカシ・シイ(スダジイ・コジイ)・アカガシ・カゴノキ・ソヨゴ・ヤブツバキ・モチノキ・ヤブニッケイ・アカシデ・アカマツ・クロマツ・イロハカエデ
低 木 シロバナウンゼンツツジ・マルバアオダモ・ネズミモチ・ヤツデ・ヒサカキ・コバノガマズミ・ビナンカズラ・アオキ・ツリバナ・サルトリイバラ
下 草 ヤブコウジ・コウヤボウキ・アクシバ
シュンラン・キヅタ・ナガバジャノヒゲ
シ ダ マメヅタ・ベニシダ・オオイタチシダ・ヤマイタチシダ・イノデ・イノデモドキ・ヒメイタチシダ・ミツデウラボシ・ノキシノブ・オオベニシダ・ヒメワラビ・オニカナワラビ・シケシダ・イヌワラビ・クマワラビ

 この3つの、自然林とアカマツ林・スギ林の林床には、それぞれどんなシダが生えているだろうか。

 まず、再度山の自然林ほ、純粋にシイ・アカガシを主とする自然のままの林で、自然林成立後相当年数を経ているので大木が多い。神戸の山地でほ、最大規模の自然林で比較的保存状態もよい。

 ここの自然林(照葉樹林)を構成する主な植物を表にまとめてみると、上の通りになる。

 上の表から、常緑照葉樹林下のシダとして十数種を数えたが、不思議なほどシダの種類が少ないことがわかる(シダ以外の下草も少ない)。林の下は夏も冬も、年間を通して日光を受けることが少ないからであろう。イノデ・ベニシダ・イタチシダ類が生えているだけである。しかし、林の中は年中、湿度が保たれることで、シイ・アカガシの樹幹には、マメヅタやノキシノブが着生している。特に、マメヅタがびっしりと樹皮を覆っているところさえある。湿度が保たれていることは、自然林の中で倒木ができ、ある一定の日光を受ける空間ができると、そこはすさまじいほどの生存競争の場になることでもわかる。そのような場所こそ、また、シダの絶好の自生地となるところであるが、そこに最初に進入してくるシダとしては、ヒメワラビ・ミゾシダ・イヌワラビ・イノデなどがあげられる。しかし、これらのシダは、やがて姿を消す運命にある。なぜなら、シイ・アカガシの次の世代が育ち、大きくなり、やがて、また、もとのような森林にもどつていくからである。


再度山アカマツ林の主な植物
高 木
亜高木
アカマツ・クロマツ・ソヨゴ・ヤマザクラ・コナラ・マルバアオダモ・ウラジロノキ・リョウブ・シラカシ
低 木 シロバナウンゼンツツジ・コバノミツバツツジ・モチツツジ・スノキ・ヒメヤシャブシ・ヤマウルシ・カマツカ・ヒサカキ・コガクウツギ・イヌツゲ・コバノガマズミ・ネジキ・コアジサイ・ヒイラギ
下 草 コウヤボウキ・ティカカズラ・ヤブコウジ
チゴユリ・シュンラン・ミヤマウズラ
シ ダ シシガシラ・トウゲシバ・ハリガネワラビ・ワラビ・ゼンマイ

 次に、アカマツ・クロマツを中心に植栽されたアカマツ林を調べた結果をあげてみよう。森林を構成する主な植物は上の表の通りである。

 ここは明治36年に造林され、現在では、神戸市の永久保存調査地に指定されており、高木には、アカマツ・コナラ、低木類には、モチツツジ・コバノミツバツツジなどのツツジ類を主とする林になっている。

 さきのシイ−アカガシ林とは対照的に、ここでは林床にまで日光が入り込んでいるが、冬の季節には雨が少なく乾燥し、そのせいか、シダで生えているものは、乾燥地でも耐えるシシガシラ・ハリガネワラビ・ゼソマイなどで、それらがぽつ、ぽつと生えているだけである。

 最後に、同じように明治35〜37年に植林された自然林の南の地域、東部地域(布袋が谷)のスギ・ヒノキ人工林を調べてみよう。

再度山のスギ・ヒノキ林下のシダ
イノデ・イワガネゼンマイ・シケチシダ・リョウメンシダ・オクマワラビ・ホソバイヌワラビ・キヨタキシダ・ヒメカナワラビ・カタイノデ・サイゴクイノデ・イヌシダ・クマワラビ・ヒロハイヌワラビ・ヤマイタチシダ・シケシダ・クジャクシダ・ジュウモンジシダ・アイアスカイノデ


 植林後10−20年までの林と違って、森林内は、アカマツ二次林とやや似るように、3層の区別ができている。スギ・ヒノキ(主としてスギ)の高木層の中には、シイが入ったり、エノキ・ケケンポナシがまざっている。低木層には、ニワトコ・ヤツデ・アオキ・ネズミモチ、草本層には、フユイチゴ・ヤブコウジ・ネザサなどがみられる。

 林内は、湿度がかなり高く、シダが育つのに十分な環境がととのっている。したがってシダは、量ほもちろん、種数においても多い。

 以上、再度山の3つの特色のある森林とシダとの結びつきを概観してきたが、森林の構成によって、シダ自生の様子が、明らかに違っていることが、わかってきた。そこで、さらに再度山以外の場所で、森林とシダとの結びつきを調べてみることにしよう。

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