デジタル化神戸の自然シリーズ7 六甲山のツツジ
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■アセビ
1.アセビ

 六甲山には20種のツツジ科植物が自生しているが、その中で一番はやく花を咲かせるのは、アセビである。

 アセビは万葉集にも歌われ、歌の世界ではよく知られている植物で、馬酔木という字が当てられている。馬が酔う木という意味で、馬が誤って葉を食べると有毒成分のために、苦しみ、酔ったようになることからつけられた。足しびれということで、アシビということばも使われた。

 アセビは常緑で、ふつうは高さ2〜4メートル、直径が5〜10センチくらいの低木であるが、中には高さ10メートル、直径25センチにも達するものもある。

 樹皮は灰褐色で縦に裂け目があり、少しねじれ、幹は直立しない。葉は枝先に多く集まって互生し、表面は光沢があり無毛で、厚い。長さは3〜9センチで、幅は1〜2センチである。葉の先端はとがるがやや広く、基部は細い倒皮針形である。表面は濃い緑色だが、裏面は淡い緑色で、葉柄は長さ5〜10ミリである。

 2月下旬から5月にかけて、スズランのような壷状の花を枝の先端に、穂のようにまとめて、下向きにつける。がくは5つに裂け、うすい緑色である。花冠は白く、長さ6〜8ミリで先はすぼみ、浅く5つに裂けて開口する。おしべは10本で基部に毛があり、やくに2本の突起がある。めしべは花冠と同じ長さで毛がない.刮ハ(さくか)は9〜10月に熟し、球形で上向きにつく。

 六甲山地には全山にわたって生えているがとくによく乾燥する尾根すじに多い。私達の調査では、六甲山東部の蛇谷山の山頂部などに見られるように、小規模であるが各所に純林のあることがわかった。このようなところでは林床に日光が入らないので、下草類はほとんど見られない。

 山形県、宮城県以南の本州・四国・九州に広く分布し、日のよく当たる乾燥したところでも、半日陰の湿ったところでも生育している。

 アセビは古くから親しまれた植物で、冬に赤く色づいたつぼみは美しい。花冠の先の方が赤味がかっているアケボノアセビと呼ばれるアセビの変種などはよく愛好されている。現在では植木として観賞されるアセビも、かつてはもっと実用的な植物で、農家では葉を煎じてその汁を牛や馬のしらみとりに使ったり、野菜の害虫駆除に利用していた。農薬として使える有毒成分はアセボトキシンといわれるもので、ヒトが誤って食べた場合、嘔吐したり、下痢をひきおこしたり、皮膚に発疹ができるという。名高い奈良公園のアセビの林は鹿がこの木を食べないために残ったといわれ、アセビを古くはシシ(鹿)クワズといつたことからもそのことがうかがえる。

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