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I.水生植物(水草)とは・・・・・・
植物の進化を教料書ではソウ類→コケ類・シダ植物→種子植物の順におき、水中生活から陸上生活への適応を説明しています。しかし水生植物とはいったん陸上生活に適応しながら再び、水中生活にもどっていった種子植物およびシダ植物をいい、陸上で生活した証拠を、水面に花を出すことなどに残している植物の仲間のことです。神戸の周辺にはおよそ80種ほどの水生植物があり、生活様式のちがいから次の4つのグループに分けることができます。
- 抽水植物
- 浮葉植物
- 沈水植物
- 浮遊植物
この本ではこれら4つのグループごとに主な種を紹介し、巻末にくわしく目録をのせています。
水生植物 Q&A
Q1.水生植物は海藻のような藻類のなかまですか。
A. いいえちがいます。水生植物は花を咲かせ、種子でふえる種子植物のなかまと胞子でふえるシダ植物のなかまです。水中でくらすコケ類を含めることもあります。
Q2.水の中でどうやって花を咲かせるのですか。
A. スイレンやハスのように、長い柄を水面の上に伸ばして花をつける仲間と、本当に水の中で花を咲かせる仲間とがあります。もっとも、水の中で咲く花には美しい花びらもないので、注意しないと花であることがわからないかもしれません。
Q3.水中でも花粉は運ばれるのですか。
A. はい、その通りです。セキショウモでは雌株と雄株にそれぞれ雌花と雄花を咲かせます。雌花は水面に長く柄をのばして咲きますが、雄花は株の根もとにつき、花の部分だけがうき上がってきます。
そして水面上で花粉が放出され、水に運ばれて雌花にたどりつき受粉が行われます。マツモやイバラモの仲間では、水中で花粉が放出され、水の中をただよって雌花にたどりつきます。マツの花粉が空気中をただよって受粉するのに似ています。このように、水の動きによって受粉の行われる花を水媒花といいます。水中生活をする植物に特有の受粉のしくみといえます。
Q4.どんなしくみで水の底でも生活できるのでしょうか。
A. ちゃんと光合成をしているからです。水の底で生活する沈水植物はほとんどのものが葉だけでなく茎でも光合成をしています。
Q5.葉には気孔はあるのですか。
A. 水中生活する植物は水にとけた二酸化炭素を葉の表面全体から吸収できるので気孔は必要がありません。それでも、たまに気孔をもった沈水葉が見つかります。それは、祖先が陸上植物であったことの名残りです。水面に浮かぶ葉をもつ植物の葉には表面に気孔がありますが、裏面にはありません。しかし、空気中に葉が出たときには、裏面に気孔がつくられるものもあります。トチカガミは葉が水面に浮いているときには裏面にはほとんど気孔をつけませんが、葉がこみあって空中に出るようになると裏面に多くの気孔をつけるようになります。
Q6.陸上生活の植物は根で水や養分を吸収しますが、水生植物はどうですか。
A. 水生植物にとって水は不足することがありません。だから根で吸収しなくてもよいわけです。そのため、根のなくなったタヌキモ類やマツモなどは浮遊生活をしています。また、根から水を運ぶ道管も退化しています。
Q7.では茎や根はどうなっているのですか。
A. 道管が退化したかわりに、通気組識といって不足しがちな空気(酸素)をたくわえるすき間が発達しています。レンコンの穴がその例です。陸上生活をする植物にとって、茎は体をささえるはたらきをしていますが、水中植物では茎に空気をためることによって、呼吸に利用するとともに浮きやすくし、植物体をたたせるはたらきをしているわけです。
根は発達の悪いものが多く、体をささえることよりも、流されにくくするために、つる状の根をつけるものや、ウキクサのようにひっくり返らないように、おもりの役目をするものもあります。
Q8.葉には特別のしくみがあるのですか。
A. トチカガミの葉の裏はふくれて、たくさんの空気をたくわえられるようになっています。ホテイアオイやヒシの葉柄がぶくれているのも、そこに空気をためて浮き袋の役割をするためです。
Q9.オニバスのように直径が2m以上になる葉をどうやってささえているのですか。水に浮かんでいるのでしょうか。
A. オニバスのような大きな葉はかなりの広さと重さがあり、それをささえるしくみも精巧にできています。葉の裏にある葉脈は体育館の天井をささえるしくみに似ていて、葉全体の重さに対して梁のようにはりめぐらされています。大きな葉を支えるために、理想的な葉脈の配列を力学的に計算すると、まさに、オニバスの葉脈になるといいます。また、葉脈には通気組識が発達していて、よく浮きます。オニバスの葉がしっかりと浮いている秘密は、この葉脈にありそうです。
Q10.なぜ陸上生活をしていた植物がふたたび水中生活をしたのでしょうか、水中生活は植物にとって不利になるのではありませんか。
A. 陸上生活でめぐまれているのは、光と空気です。しかし、水や温度の変化に対しては水中生活の方が有利です。それに体をささえるしくみも 陸上ほどいらないのです。水生植物は、茎や葉の構造をたくみに変化させ適応していますし、水を利用して受粉もできるしくみをつくっています。陸上で著しい進化をつづけてきた高等植物にとって、水の中は未開拓の場所であったわけです。そこへ進出していったのが、現在我々の目の前にいる水生植物といえます。陸上生活から水中生活へ再び適応し、進化していったのは新生代第三紀初期だと考えられています。
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