神戸の自然シリーズ5 神戸の野鳥 第2版
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−4.渡りから見た野鳥の分布の傾向

5.冬に来る鳥 ≪冬鳥

オナガ
 神戸ではもう絶滅したのではないか
と思われる
クロトキ
最近、ときどき発見の情報が
聞かれるようになった

 北海道以北、千島、樺太、シベリア、朝鮮半島以北などから越冬のために来る鳥を「冬鳥」(5)といい、10月頃から4月頃まで見られる。本書に掲げた神戸の鳥のうち60種類あまりがこれに属する。漂鳥の中で神戸では冬にだけ見られ(5a)約30種類を加えると約90種類が冬にだけ見られる種類ということになる。さらにウグイスモズのような渡りをする種類(3a)をふくめると神戸の低地では100種類をはるかに越えた鳥が冬を中心に見られることになる。

 本州を基準としてみたとき「冬鳥」といわれながら神戸では「旅鳥的な種類」(2d)がある。たとえばマミチャジナイは冬に残るものはほとんどないが秋には普通種である。このような渡りをするものも約5種類ほどある。

 ここまで見てくると神戸の鳥の種類は冬に多いことがわかる。1種類の個体数も冬の方が多い場合がふつうであるから鳥の密度は冬の方がはるかに大きい。神戸は鳥にとって温暖な越冬地としての役割が大きいといえそうである。

 ただ六甲、摩耶山上など標高が600m〜900mあるところでは、真冬の鳥の数は低地よりずっと少ないのが常である。この程度の標高差による低地との温度差は摂氏3〜7度ほどだから気温の直接の影響より積雪や結氷による食餌の不足から一時的に移動したと考えた方が正しいようで積雪の多い日は著しく数を減じ、雪がとけると回復する傾向がはっきり認められる。

 山上で越冬する種類についてみれば、いくらかの種類が真冬の短期に姿を消すことがあるが、低地と大きな差を認めることはできない。

 また、春夏にこれらの山上で繁殖する鳥のどれをとってみても他の神戸の低地に少数の繁殖がみられ、特筆するような種類はほとんどない。ウグイスシジュウガラ、カケスなど低地より多い種類はいくらか数えることができる。瀬戸内に面した900mほどの標高の山では低地との差はわずかである。

 神戸から記録した約210余種は日本全土から記録のある種類のおよそ半数に近い。500種類に近い日本の鳥というのは、北海道特産も琉球の特産も、外洋性の海鳥も、国外からの偶然の迷い鳥もみなふくめての数であるから、それらを除外して行けば、日本の鳥の大部分が、かつて神戸から記録されたか、今後、神戸で発見される可能性があるといってよい。大きい移動力のある鳥のことだから広い範囲への出現が可能であり、偶然に飛来した意外という種類があるのは当然である。最近、観察人口の増加に伴ない全国各地から続々新しい記録が発表されているのが現状であり、その中には未熟者の誤認もふくまれていると思われるが、それを十分承知の上で見ても鳥の分布というものは柔軟性を持って見なければならない。

 近年、環境の悪化にともなって鳥の種類も数もしだいに減少しているから、この本の内容は現時点でのおおまかな分布の傾向を示したものだということで見て頂きたい。

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