道ばたに見る春の草たち 広瀬重夫
 ナズナのなかま

写真56,ナズナのロゼット
3月,中央区
写真57,ナズナ
4月,灘区


■ナズナ
 「春の七草」のひとつ.道ばたなどで深く羽状に裂けた葉が地面にふれて広がっています(写真56).つんで食べられるのもこの頃まで,写真のような姿になると急に茎を立ち上げ,花の時期を迎えます.

 ナズナ(写真57)は,植木の根もとで群がって生え,一斉に白い小さな花を下から上へ次々と咲かせ,実を結んでいきます.果実は和楽器の三味線(しゃみせん)を弾く「ばち」に似ています.そのときの音から,「ペンペン草(ぐさ)」とも呼ばれ,知らない人のないくらい馴染(なじ)まれています.

 花びらは4枚,おしべは6本,うち4本は長く2本は短い構造で,アブラナ科の代表的な野草です.世界中に広がっている植物でもあります.


アブラナ科の花

  

写真58,マメグンバイナズナ
5月,垂水区
がく(K):4枚,緑色.花弁(C):4枚,白,黄,紫など.おしべ(A):長4本内側,短2本外側の合計6本.めしべ(Cp):1本,頭部が少しへこむ.下は少しふくらみ2室に分かれる.


■マメグンバイナズナ
 明治25年(1892年)ころ,日本に入ってきて,神戸で採集された北アメリカ原産の帰化植物で,コウベナズナの名も残っています.そのころから「本家」のナズナをしのぐ勢いで全国に広がり,人との関わりの深い市街地を中心に,春の野草の代表格となっています.


写真59,キレハマメグンバイナズナ
5月,灘区
写真60,イヌガラシ
5月,垂水区


■キレハマメグンバイナズナ
 果実はマメグンバイナズナに似てほぼ円形.大きさは3mmほどですが,葉の形が大きく異なります.南アメリカが原産で,1973年香川県で発見された比較的新しい帰化植物です.私が市街地で見たのは,公園内の草地でマメグンバイナズナに混じって生えていましたが,数はずっと少ないようでした.


■イヌガラシ
 草全体のすがたや生えている場所など,ナズナに似ているところもありますが,数は少なく,群がって生えているところを見たことはありません.みなさんはどうですか? 白い花のナズナとちがって,こちらは黄色で,果実は細長いさや状ですから間違うことはないでしょう.




<追加>グンバイナズナ
 日本の伝統スポーツ,相撲の行司が持つ軍配(ぐんばい)にそっくりの形をした果実をたくさんつけます.ヨーロッパ原産ですが「本草図譜」に記録があるほど古くからの帰化植物です.神戸ではめったに見られなくなりましたが,中国では山間部の小さな町の道ばたでたくさんみかけました.乾いた果序はドライフラワーとして楽しめるでしょう.


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