神戸の自然シリーズ8 神戸の蝶
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 II.神戸の蝶の生態観察例−3.蝶の訪花

 蝶と花は昔から切り離せない仲のようにいわれている。花に来る蝶の種類はたしかに多いが、花の蜜などには見向きもしない蝶が私たちの想像以上に多いものである。クヌギやコナラの分泌した樹液の糖分が腐敗をはじめてアルコール臭を発生しはじめたところに集まる蝶はまだしも、腐りかけた果実、さらに動物の死体から出る腐汁や汚物の水分、糞尿などを好むとあっては悪食もよいところである。そしてそのような蝶は意外と多いのである。それでも蝶にはハエのような不潔感が伴わないのは花と蝶があまりにも強く印象づけられているからであろう。あの美しいオオムラサキも樹液や汚物に来る類である。

 花に来る蝶を調べていくと、それぞれ好みの花があることがわかる。例えばアオスジアゲハヤブカラシによく来るが、クサギにはほとんど来ない。同じアゲハチョウ科のモンキアゲハは逆でクサギに集中的に来るといった具合である。

 また、花に来る蝶の中にも手頃な花なら手当りしだいに吸蜜に訪れる蝶がある反面、特定の花にだけ集中的に来る偏食主義の蝶も見られる。

 花の構造も訪花する蝶を決める一つの要素である。壷の深い花は口吻の短い種には役立たない。上向きに開く花、下向きに開く花ということも蝶の習性と関係するであろう。セセリチョウ科のように花に頭をつっ込むような習性を持ち合わせた種とそうでない種でも違うはずである。

 地域が離れて植物に違いが見られる場合、同じ種類の蝶でも来る花が違うのはあたりまえであるが、どちらの地域にも同じ花があるのに、ある地方ではその花に来る蝶が、他の地方ではほとんど見向きもしないというようなことも実際によく見受けられることである。おそらくさらによい花がほかにあるからなのだろうが、植物相を総合的に調べなければ何ともいえない。蝶の感覚についても最近多くの実験例や考察がなされてきたが、まだ完全といえず今後に残されている問題も少なくない。

 私たちの感じる花の色と匂いは蝶の感覚器に我々と同じように感じとられているとは限らない。色覚を例にとっても昆虫は紫外線を1つの色として感じ取っていることは有名である。

 根気の必要な分野であろうが、このような研究はやるほどに興味がわくものであろう。


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