神戸の自然シリーズ11 神戸港のプランクトン
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I.プランクトンの観察 ... 

3.いろいろなプランクトン (1)
海の牧草といわれるケイソウの一種 錨のような形をした渦鞭毛藻の一種

 プランクトンという語は、ギリシャ語で「放浪者」を意味し、水中を漂いながら生活している生物群の総称である。数ミクロンの微小なケイソウから数メートルのクラゲまで、浮遊する生活形態をとっているものはすべてプランクトンということになる。

 プランクトンは生きてゆくのに必要な栄養の摂り方の違いで、植物プランクトンと動物プランクトンとに大別される。

 植物プランクトンには、鞭毛で泳ぐ渦鞭毛藻の仲間や、美しい幾何学模様や特異な形態のケイソウなどがあり、世界中の海に広く分布している。紅海(Red Sea)の名の起こりとなったトリコデスミウム・エレトレウム(Trochodesium erythraeum)はラン藻の1種で植物プランクトンである。ラン藻は一般に暖かい海に生息しており、チャールズ・ダーウィンもブラジル沖のアブローロス諸島付近で、トリコデスミウム・エレトレウムによって赤変した海域を見たことを「ビーグル号航海記」の中で述べている。そのほか、クロレラが属する緑藻類にもプランクトンとして出現するものがある。

 植物プランクトンに共通することは、海水中に溶存する無機化合物をもとにして、炭水化物などの有機化合物をつくり出す光合成の能力をもっていることである。特にケイソウは世界中の海に広く、かつ多量に分布しているため、ケイソウによって生産される炭水化物の量は莫大なものである。ケイソウを「海の牧草」と呼ぶことでも分かるように、この仲間は海の生態系をささえる基盤となっている。

人工衛星のようなウニの幼生

 動物プランクトンの多くは、海の牧草であるケイソウなどを食べて生活している。中でもかいあし類とよばれる仲間は、世界中の海に広く分布し、生存量も多く、この仲間をぬきにしては動物プランクトンを論ずることができないといわれるほどである。いわば海の昆虫といえよう。彼らの多くは、ケイソウが合成した植物性の物質を摂取し、動物性のものに変えるため、植物プランクトンと魚類の間の橋渡しの役目を果たしている。生態系の上からかいあし類が重要視される理由はここにある。

 かいあし類はふつうプランクトンとして一生を過ごすが、生活史のある時期だけをプランクトンとして過ごすものもある。ウニ・ヒトデなどの棘皮動物、エビ・カニ・フジツボなどの甲殻類や、魚類など海にすむ多くの動物のほとんどは、幼生の時期をプランクトンとして過ごしている。生活史の幼生期のみをプランクトンとして過ごすものを、とくに幼生プランクトンと呼んでいる。

 顕微鏡でなければ見えないくらい小さなプランクトンは、それぞれ実に個性的な形をしている。写真はトリケラチウムとよばれるケイソウの仲間で、夜空から落ちてきた星のかけらのようである。

 ここでは顕微鏡をとおして見たプランクトンの姿を紹介する。試料はいずれも神戸港内で採集されたものである。

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