神戸の自然シリーズ3 神戸のシダ
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 スギナ
−水中と陸上を結ぶシダらしくないシダである。− (3月)


ツクシ、誰の子 スギナの子
スギナ、誰の子 ツクシの子・・・・・・

という詩はご存知であろう。

 春先きには、スギナは地下茎からツクシという胞子茎を出す。だが、ほんとうにツクシとスギナが地下茎でつながっているのを、土を堀って確かめた人が何人いるだろうか。

 前年度すでに地中に準備されていたツクシは、春先きには一斉にのびてくる。ツクシが出たあと、色黒の細長い地下茎から直立した緑色の地上茎であるスギナが出てくる。スギナは日当たりのよい川原・田の土手・路傍などに大群落をつくることが多く、また、酸性の土壌を好んで生えるので、酸性の花崗岩の六甲山地には普通に見られる植物である。

 このスギナもシダ植物の一種類なのだろうか。


 地上に出たツクシの成長は速く、1週間から10日間ぐらいでのびきってしまうが、ツクシの胞子のう穂(ツクシの頭の部分)は最初は2−3mmの六角形の胞子のう床がタイルを敷きつめたようにぎっしりとくっつき合っているが、のびるにしたがって胞子のう穂が変化していく。固い六角形の雨傘状の胞子のう床にすき間ができ、ゆるんで、やがて傘を広げたように持ち上がってくる。胞子のう床の裏にはうすい緑色の胞子のうがぶらさがっている。胞子のう中にはうすい緑色をした胞子が多く入っている。一つの胞子のう穂にはおよそ140万から220万の胞子が入っているといわれている。

 胞子には4本の弾糸(だんし)というひも状の付属物があり(実際は2本だが、2本が中央で付着して4本に見える)、それが互いに締まり、風に運ばれやすい仕組みになっている。

 弾糸は乾燥したところでは、四方にのびるが、湿ったところでは胞子にまきついたままである。検鏡するとき、息をかけながら見ると、まるでタコがおどるように動いて見えるし、光源装置をつけて検鏡すると、スライドガラスの上が乾燥していくにつれて、弾糸の連続した変化が観察できる。

 スギナがほんとうにシダ植物であるのか、スギナの一生、すなわち、生活史を見てみよう。

 今まで見てきたように胞子のう穂のツクシから散布された胞子は、発芽して雄の配偶体か、雌の配偶体かに分かれ、雄の配偶体には造精器ができるし、雌の配偶体には造卵器ができる。

 造卵器のなかへ精子が入り、受精すると分裂をはじめる。やがて、幼植物の芽生えを迎える。

 スギナの茎や枝には多くの節がある。節のまわりには、それを包むはかま(さや)と呼ばれる葉の原型のものがある。さやや枝はぎざぎざになっており、その一つ一つが1枚の葉であり、この葉には、1本だけ葉脈がある。葉脈の部分だけには葉緑体や気孔の見られることがある。

 スギナの茎を切って、ルーペや顕微鏡で拡大してみよう。


 写真のように、中央には髄腔(ずいこう)と呼ばれる穴(破生細胞間隙)があり、表皮の内側にあって、澱粉などを貯蔵する皮層にも、環状に並んだ通気道という細胞間隙がある。また、維管束内にも細胞間隙がある。

 これらの細胞間隙の茎全体に占める割合は大きく、これはハス・イネなどの空気の少ないところに育つ水辺の植物の地下茎に共通な構造で、スギナも湿地に生え、かつてロボク(「蘆木」スギナの先祖にあたる植物)が茂り、大森林を形成していた古生代石炭紀の時代の名残りを、器管内にとどめているのだろう。現在でも、同じ科のミズスギナ・ミズドクサは湖・沼・池・川岸・溝などに群生している。スギナは水中生活から陸上生活へとたどった植物の橋渡し的存在になるものである。

 さて、もう一度、スギナの茎の構造を調べよう。

 スギナの茎には、表面に縦の溝が数本通っているが、さきに見た通気道は表面にある縦溝の凹部の内側に位置している。茎の溝の凹部と、凸部は厚膜組織からできているが、凸部の厚膜組織の内側には葉緑体のある組織があって、気孔は凹部の両側に1〜4列に並んでいる。

 皮層の内側には一層の内皮中心柱の境界となる規則正しく一列に並んだ細胞層)があり、内皮のさらに内側には、内皮に包まれた中心柱維管束および、その付近の内皮に包まれた部分全体を中心柱という)がある。

 スギナの中心柱は、内皮・内鞘(ないしょう)・後生木部・原生木部・師部からなっており、師部は木部にはさまれて発達している。

 このように見てくると、スギナ類の維管束は、一般の裸子植物・被子植物の双子葉類に見られる維管束と同じもので、真正中心柱である。

 地下茎は養分を貯蔵するところになっているが、ところどころに小さないもがつき、ここもタマシダの匍匐枝のさきにつく指頭大のたま(おもに水分の貯蔵器官である)のように同化産物の貯蔵場所になっている。


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