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リョウメンシダ
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−うらおもてのない世の中知らずのシダである。−(2月)
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リョウメンシダは、葉面の色合いや光沢のようすが表・裏ともほとんど同じで変わらない。このことからリョウメンシダ(両面シダ)の名がついた。日本各地の山の樹林下の、夏涼しく、空中湿度の高いところに群生し、大形の葉を一面に広げる。
根茎は横にはうが、葉はかなり接近して出る。高さは70センチから1.5mである。三〜四回羽状複葉で、裂片は細く密につく。また、裂片には鋭い鋸歯がある。
胞子のう群は葉面の中心部の中部以下につき、裂片で見れば軸と縁との中間につく。包膜は大形の円腎形で、互いに接近し、灰紫色を帯びてみえるが、包膜が灰紫色にみえるのは、包膜の色ではなく、中の葉緑素を含んだ暗緑色の胞子の色がすけて見えるためである。
リョウメンシダの胞子は、10月末ごろから熟し始める。したがって散布される胞子が発芽し胞子体になるのほ、まちがいなく次の年になるであろう。
リョウメンシダは、温帯から暖帯にかけて分布するシダである。兵庫県の各地で普通に見られるシダであるが、六甲山地では長い間採集もされず、したがってシダ植物分布の目録にも入っていなかった。
1965年1月、再度谷の枝谷のスギ林に10株あまりのリョウメンシダを見つけたのが最初だった。それ以後、注意して調査していくと、丹生山、櫨谷の仏谷、平野谷と数株ずつ生えているのがわかってきた。再度山の森林内で、約20数株の自生地も見つかった。それにしても、再度山の20数珠を最高にして、それ以上の群生地がないことは、六甲山地が四季を通じてよく乾燥し、リョウメンシダの生育に適する湿度を保つ森林が少ないことと関連があるように思われる。
リョウメンシダの生えるところは、スギがよく育つ。したがって、リョウメンシダはスギ植林地指標植物になる。
シダの種類の少ない秋田・青森地方で、このリョウメンシダは大群落をつくることが多く、食用・薬用・観賞用以外にはあまり用途のないシダ類の中では珍しく、石油の湧き出したものをしませてとるときに用いられたり、山菜のウワバミソウ(ミズ)を採集し、束ねるのにこの葉柄が用いられたりしている。
常緑であるこのシダを、アキシラズ・フユシラズ・ニネンソウという地方もある。
また、静かな林の中の水辺で無心に茂るこのリョウメンシダをヨノナカシラズと呼んでいる人もあるということである。(倉田悟「植物と民俗」地球出版社)
年々、荒れていく六甲山地の谷間に、このヨノナカシラズが青々と茂り、その茂みの中を歩く自分の姿を夢みることがある。
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スギ植林適、不適地を指標するシダ
- (1)適地を指標するシダ
- キジノオシタ・イワガネゼンマイ・オオバノイノモトソウ・リョウメンシダ・イヌワラビ類・シケチシダ・ヤブソテツ・イワへゴ・オシダ・ミヤマクマワラビ・ナライシダ・イノデ類・ジュウモンジシダ・ミゾシタ・ヤワラシダ
- (2)不適地を指標するシダ
- ヒカゲノカズラ・ヤマドリゼンマイ・ワラビ・シシガシラ
(加辺正明「シダの鑑賞と栽培」による)
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