神戸の自然シリーズ3 神戸のシダ
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 ヒトツバ
−槍をもって谷の門番をするシダである。−(1月)



 神戸の裏山の谷筋には必ずといっていいくらい生えている。谷筋でも、谷の上り口付近の岩場である。そこは日当たりはよいが、適当な湿度もあり、このシダの自生地としての好環境なのであろう。

 ヒトツバの別名として、イシノカワ・イシガシワ・イワグミがある。これらの名がみな岩や石と結びついているのもうなずけることである。

 ヒトツバの根茎ほ、長くのびてはうが、太くてかたく、赤味を帯びた褐色の鱗片をいっぱいつけている。単葉の葉は間かくをおいて出る。高さ30−50cmである。葉柄も太く、針金状でかたく、基部の関節で根茎とつながっている。したがって、ヒトツバの葉は古くなると関節のところではずれるが関節より下はいつまでも残る。

 このようにウラボシ科のシダでは離層の細胞がよく発達するが、一般のシダでは発達しないので、古くなった葉はくさるまでついている。

 ヒトツバの葉面は革質で厚く、皮針形ないし長楕円形で全縁である。葉の表裏に無数の毛があり、うろこをかぶったようになっているが、この毛はシダとしては珍しい星状毛である。

 葉脈は、はっきりと見えないが網状脈である。


 胞子のう群のつく実葉は、裸葉と比べると羽片の幅は狭く、少し長い。胞子のう群は葉の裏全面、または上部にべったりとつくように見えるが、よく見ると規則正しく遊離脈上についているのがわかる。

 また、胞子のう群をつけたところが赤褐色なのは、胞子のうとそこに混生する星状毛の色が赤褐色なのだろう。このヒトツバ属の学名にはギリシア語の「火の色」(Pyrrosia)が使われているのはこのようなところからだろう。星状毛が包膜の役割をはたしているのか、ヒトツバには包膜はない。胞子は豆形で表面には小さいつぶがある。

 風化・崩壊しやすい六甲花崗岩にヒトツバを密生させると、風化防止と山の緑化に役立たないだろうか。ヒトツバが繁茂するスピードは栽培してみると案外速いことがわかる。

 ところで、ヒトツバにはいろいろな品種が見られる。若い葉の時ほほとんど区別はつかないが、成長するにしたがって、葉の項端部の成長の速さに違いが生じて分裂し、成長を繰り返すために、多様な奇態を生ずるシシヒトツバがその一つである。他によくみられるものに、葉の両側に尖った突起がつくハゴロモヒトツバがある。

 これらヒトツバの品種は古くから多くの人の関心を呼び、園芸品としていろいろなものが栽培されている。

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