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あとがき
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昨年10月7日、アカシ象の化石が伊川谷で発見された。11月22日からの本格的な発掘は、日曜祭日を利用して回を重ねること19回におよび、年が明けた1月8日すべての骨化石を地層から掘りだした。
その間、つるはしを振い、地面に顔をくっつけんばかりにして竹ぐしを使って細心の作業で骨につく土をはがしてくださった方が延べ400人にも達した。
このアカシ象発掘に参加してくださった方々の中には、ただ一度だけの方もおられれば、発掘日には欠かさず出ていただいた方もおられる。完璧に近い形で発掘に成功した今、御協力いただいたすべての方に心からお礼を申しあげ、200万年ぶりにアカシ象を地上によみがえらせ得たことに、手をたたいて皆さんと共に喜びたい。
アカシ象発掘の現地説明会は行われなかったが、それに代って2月7日から4月3日までポートアイランドの神戸市立青少年科学館で「アカシ象発掘展」を開くことにした。この発堀記は展示解説書として拙速を承知の上で走り書きしたものである。説明不十分の点や礼を失した内容についてお許しを得たい。
10月7日の夕方、教育研究所で觜本格さん、鈴木茂之さん、田中元さんから大型動物化石発見の快報をうける幸運に恵まれた。間もなく、その化石がアカシ象であると確定されたとき、觜本さんと次のようなことを話し合った。
このアカシ象は象の進化史のみならず、日本列島の自然史をひもとく上に重要な役割を果すにちがいない。誰の所有になるとか、どこにおくべきかなどのレベルの問題の前に、まず学会共有の財産として価値ある標本であることを心にとどめよう。
つぎにこのアカシ象の学術的研究は、それにふさわしい研究者にまかせよう。そして完全な発掘と十分な研究が終ったとき、保存の問題について協議しよう。この内容が発堀を終えた今ふりかえってみると今回の発掘の基本理念になっていた。
そして京都大学の石田志朗さんに連絡をとり発堀に参加していただくことにした。石田さんは私が京都大学に内地留学して以来、30年来の知己であり、最近数年間は共同研究者としてしばしばフィールドを共にしている仲である。その石田さんが研究者への対応を、私が神戸市内部の連絡調整にあたることにした。
それからの発掘経過は、付録「発掘日誌」に述べたが、何しろ全く初めての経験でもあり、まごまごの連続であった。ただ一貫したのは、発掘はかくあるべきだと原則論をたて、事務局を設けたりする組織づくりはやらなかったことだ。発堀に参加してくださった顔ぶれをみると、これだけの頭脳集団に恵まれれば、何でも出来ると思った。発掘技術上の問題について議論が起こってもすぐにまとまった。それだけの良識と技量をもっている集団なのである。予期せぬ事態に遭遇して、そこで知恵を出し合う、速成ではあるがフレキシブルな自然の流れにことが運ぶようにつとめた。
発掘期間中は例年にない暖冬と晴天に恵まれ、鼻水が水平に飛ぶような強風と寒さの日は12月2日の1日だけで、ほんとうに発掘日和に恵まれた。さらに化石の発堀調査には怪我はつきものであるが、この点も小さな救
急箱で間に合う程度で調査を終えることができた。
ところで20日近い発堀期間を通じてわれわれの研究グループと京都大学の方たちとは随分親しくなった。世間話のおりも、話題はやはり目の前のアカシ象に集まる。京大の方たちは、これだけの象が出たんだから自然史博物館が計画されてもよいのではないかという。もちろんわれわれもナチョラリストの一人として、神戸市民としてそうなればと願っている。
今、私達はこの象とその発掘の経験が、神戸市民、特に子ども達に200万年も昔の自然に思いをはせ、夢とロマンを持たせる財産として活用されることを期待し喜びに思っている。
最後になりましたが、京都大学理学部教授亀井節夫先生をはじめ地質学鉱物学教室の方々に非常な御協力と御指導をいただきました。同教室の石田志郎さん三枝春生さんには、発掘後も神戸にきていただいています。大阪自然史博物館の樽野博幸さんにも指導、授助していただきました。開発局や森林植物園、教育委員会、神戸市立教育研究所の川田所長をはじめ先生方からは御指導と励しの言葉をいただきました。ここに記して深く感謝する次第です。
なお、この本の第1、2章は觜本格が、第3章と付録の発掘日誌は前田保夫が執筆した。また写真は撮影者名のある写真以外は、すべて前田保夫が撮影した。
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| 1月27日 |
| 前田保夫 記 |
| 神戸の自然研究ブループ |
| 乾 和雄 |
(神戸市立駒ケ林中学校) |
觜本 格 |
(〃神戸中学校) |
| 碓井信久 |
(〃岩岡中学校) |
藤井心平 |
(〃上高丸小学校) |
| 大前泰男 |
(〃西灘小学校) |
藤池安代 |
(〃西脇小学校) |
| 小林辰至 |
(〃友が丘中学校) |
本城一郎 |
(〃住吉中学校) |
| 杉原尚史 |
(〃長峰中学校) |
前田保夫 |
(〃教育研究所) |
| 竹崎雅丹 |
(〃桜の宮小学校) |
松尾裕司 |
(〃北五葉小学校) |
| 竹中幸子 |
(〃山手小学校) |
矢野 誠 |
(〃塩屋中学校) |
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