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4.化石に名前をつける
次の章の「神戸フローラの化石たち」は、私の採集した化石のうち、特徴のはっきりしているもの、たくさん採れるものなどを選んでいます。化石に名前をつけるときの参考にしてください。
化石の同定は非常に難しいことですが、その基本になることを私の経験の中から、ひとつのエピソードをまじえて書いてみましょう。
私が初めて棚井敏雅教授にお会いした時のことです。棚井教授は世界中の第三紀の植物化石の研究者として有名な人です。私はこれは珍しいと思われる自慢の化石を何点か持って、北海道大学に棚井教授を訪ねました。その時、棚井教授は私の化石を見ようともしないで、「君に今、化石の名前を教えてどうなるのです。それは君自身が研究して決めるべきことです。」ときびしい口調でおっしゃいました。
そして、 「葉の化石を同定するためには、まず 現在の植物の葉を見ただけで、その名前がわかるだけの能力をつけることです。葉の特徴を見分けるしっかりした目をもつことが大切です。
その基礎になる勉強法は、植物のおし葉標本と葉脈標本をたくさん作ることです。それが君自身の植物化石の同定用の図鑑なのです。」と言われたことを今でもはっきり覚えています。
植物は同じ種であっても葉の形は一定していない場合があります。葉の形だけを手がかりに植物名を調べることは、まちがいを起しやすいので気をつけねばなりません。
最近の研究では、葉脈の細かい部分まで調べて同定を確実にしています。幸いにも神戸層群の化石には細かな部分まで残っているものが多く、正確な名前をつけることが可能です。
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▲細かな脈まで見える化石。下の写真は実体顕微鏡で見たとき。最終脈までよく分かります。
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