トンボの産卵を観察しよう 新・神戸の自然シリーズ1 神戸のトンボ
 
■トンボの産卵のお話

 トンボの幼虫は水の中で過ごします。ですから、トンボは水辺に卵を産みます。でも種類によって、実にさまざまの方法で、さまざまの場所に卵を産みつけます。トンボは生まれつき持っているこの産卵方法を変えることができないため、池や川の環境がこれらの場所や方法が使えないような状態になると、卵が産めずすがたを消していきます。

 では、トンボはどんなところにどんな方法で卵を産むのでしょうか。その方法と、産みつける場所によって、いろいろな組み合わせが考えられます。下の表は今まで知られている組み合わせを示しています。


方法 飛びながら 物に止まって
場所 連結して 単独で 連結して 単独で
植物体の中に
産みつける
(1) (2)
物体表面に
貼りつける
○(3) ○(4)
水面や水中に
産みつける
○(5) ○(6)
泥・コケ・枯葉の
中に産みつける
○(7) (8)
空中から地面や
水面にまく
○(9) ○(10)

表.トンボの産卵の方法と卵を産みつける場所
番号のついているものはビデオがあります。

 これらの卵の産み方は、トンボの持っている産卵のための器官と大きく関係があります。これはメスのトンボを見ると分かります。

 物に止まって、植物体の中や泥・コケの中に産みつけるトンボには、産卵管(さんらんかん)という器官を持っています。上の表でで示したトンボたちです。

 それに対し、飛びながら産卵するトンボや、止まっていても水の中に直接卵をうみ落としたり、空中からまくように落とすトンボには生殖弁(せいしょくべん)というふたのような器官を持っています。○やで示したトンボたちです。


産卵管(さんらんかん)
ヤブヤンマ
生殖弁(せいしょくべん)
ナゴヤサナエ
針のように見えるものがある。

針のようなものは見えない。

 産卵管を持つトンボ
  • ヤンマ科のなかま
  • イトトンボ科のなかま
  • アオイトトンボ科のなかま
  • モノサシトンボ科のなかま
 など.....
 生殖弁を持つトンボ
  • サナエトンボ科のなかま
  • オニヤンマ科のなかま
  • エゾトンボ科のなかま
  • トンボ科のなかま
 など.....


 近くの池や小川、また学校のビオトープなどでトンボの産卵を観察し、何に、どんな方法で産んでいるかまとめてみましょう。またトンボをつかまえて、産卵管や生殖弁を観察しましょう。


■トンボの産卵をビデオで見る

 ここでは、代表的な産卵方法をビデオで見て、その方法についている名前や産みつける場所などについて学習してください。写真の部分をクリックするとビデオを見ることができます。番号は上の表の番号です。


※写真の部分をクリックすると小さな動画、文字の部分をクリックすると大きな動画が再生されます。動画はいずれも15秒で、MPEG1形式です。小さな動画は焼く1.7MB, 768Kpbs、大きな動画は4.0MB, 2048Kbpsで記録しています。
ホソミイトトンボの連結植物組織内産卵 (1) 1.7MB
 生きた植物の中に、産卵管を差しこんで卵を産みつける方法です。二匹がつながって(連結)、植物の組織内に産卵するので、この名がついています。前がオスで後がメスです。ちょうど水面の位置にある植物に産卵しているところを注目してください。

アオハダトンボの単独植物組織内産卵 (2) 1.6MB
 やはり生きた植物の中に、産卵管を差しこんで卵を産みつけています。単独で産んでいますね。ですから単独植物組織内産卵(たんどくしょくぶつそしきないさんらん)といいます。このトンボは水面より下に卵を産んでいるところに注目してください。

シコクトゲオトンボの単独植物組織内産卵 (8)
 これは同じ植物体でも、落ち葉や枯れ枝のような、枯れた植物体に産みつけています。このトンボはコケなどにも卵を産みつけることが知られています。

サラサヤンマの泥中への産卵 (8)
 サラサヤンマは、湿った土の中に卵を産みつけます。水がないのにどうやって幼虫が育つのか、まだなぞのトンボです。

オオアオイトトンボの連結植物組織内産卵 (1)
 オオアオイトトンボは、なんと、高い木の枝に卵を産みつけます。この場所は水面から約4mの高さにあります。生まれた幼虫は水面に落ちるようです。もし水がなかったら、水にたどり着くまでとびはねて移動するそうです。

リスアカネの連結打空産卵 (9)
 リスアカネは秋に空中から卵をまきちらします。それも水のないところに...。春になったら水が増えることを知っているのですね。体をふるようにして卵をまくので、空を打っているように見えるので、連結打空産卵(れんけつだくうさんらん)といいます。

ノシメトンボの連結打空産卵 (9)
 ノシメトンボはリスアカネとちがって、草むらに産卵します。当然ここには水はありませんし、地面もかなり乾いています。でも、不思議なことに、ここにも春には水がやってきます。ただ、時々公園の芝生で産卵しているのを見かけることがありますが、さすがにこの卵は育たないと思います。

ナツアカネの連結打空産卵 (9)
 ナツアカネは水田で育つアカトンボです。9月の中旬の稲刈りまえの水田で、たくさんのナツアカネが産卵する姿を見ることができます。やはり、水田にはこの時期水はありませんが、春には田植えのために人間が水を入れてくれるので安心です。

コノシメトンボの連結打水産卵 (5)
 コノシメトンボは学校のプールでよく見つかるトンボです。写真のように何もない水面に卵を直接産みつけますので、プールのように水しかないところでも平気で産卵するのです。水面をたたき打つように産卵するので、打水産卵(だすいさんらん)と呼ばれています。

オオキトンボの連結打水産卵 (5)
 オオキトンボは絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ)です。浅くて水草のある池に産卵します。都会に現れることが少ないので、プールでは見られません。

オオシオカラトンボの単独打水産卵 (6)
 オオシオカラトンボは、卵といっしょに、水を前に飛ばすようにして産卵します。そこで、この産卵を飛水産卵(ひすいさんらん)とよぶ人もいます。オオシオカラトンボは浅い、湿地のようなところで産卵することが多いです。

アキアカネの連結打泥産卵 (7)
 アキアカネはこのほかに、連結打水産卵しているのもよく見かけます。でも、泥面が広がっているところでは、泥を打つように産卵する連結打泥産卵(れんけつだでいさんらん)をすることが多いようです。

キトンボの変わった産卵 (3)
 キトンボは、いったん卵を水につけてから、ねらいをさだめて、泥面や、あるときはコンクリート面へ卵をはりつけます。とてもリズミカルな産卵です。打泥産卵とする人もいますが、コンクリート面へも卵をはりつけますので、ここではそうよばないことにします。

コフキトンボの接着産卵 (3)
 水面より下にある物体に、腹部の先を押しつけるようにして卵をはりつけます。ここではキショウブのたおれた茎です。すでに産みつけられた卵が茶色に見えますが、このトンボがはりつけている卵はまだうすい乳白色です。

コシアキトンボの接着産卵 (3)
 コシアキトンボも水面にある物体に卵をはりつけますが、このトンボは水面よりわずかに高い位置にはりつけています。コフキトンボとの違いをよく見てください。


 このように、トンボは産卵する場所や方法が種類によって決まっています。ですから、そういった場所が池のどこにもなくなってしまうと、卵を産めなくなってしまい、その池からいなくなってしまうのです。

 右のような池で産卵できる種類は限られます。上のビデオを見てこの池で産卵できそうなトンボはどれでしょう。またできそうにないトンボはどれでしょう。

 トンボと池の環境に深いつながりがあることが、産卵という行動一つをとってみても、知ることができますね。


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