神戸の自然シリーズ14 神戸の水生植物
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オニバス 明石市 1983.8.左:花のつぼみ 右:閉鎖花
閉鎖花の中には仮種皮におおわれた種子が作られている。



 神戸大学の角野先生によって、さらに数ヶ所の自生地が確認されていますが、全体として、いたるところにあるとはいえないようでした。さらに、数か所の池を除いては、1株か数珠の自生地がほとんどで、池の周囲をくまなく歩いてはじめて発見できるというぐあいで、けっして多いとは感じられませんでした。オニバスの生育には周期的な盛衰があるといわれていることによるものかもしれません。1昨年は生育が確認されていましたが、昨年は見られなかった池もありました。昨年、最も多い個体数の見られたのは明石市大久保町の池で、池全体のおよそ半分の面積がオニバスの葉によっておおわれていました。しかし、葉の大きさは小さめで、直径1m前後のものが最大でした。1昨年はその池の北側にある池で生育状態の良いオニバスを観察しましたが、昨年は数十個体を見ただけで、1昨年のおもかげは全くありませんでした。

 これらオニバスの自生する池の多くは、これから住宅地として開発されるだろうと思われるような場所にあり、いつまでも残されるものとは予想されません。現に播磨町の池では土砂によってほとんどが埋め立てられつつあり、5m平方ぐらい残ったところにオニバスが、サンショウモやトチカガミとともに生育していましたが、間もなく消えて行くことでしょう。全国的な多産地である兵庫県南部の実態はオニバスにとってきわめて深刻な状態にあります。埋め立てだけでなく、水質汚染もすすんでいます。7月にオニバスの見られた池が8月にはアオコによつて消されてしまっている例もあります。

 自然への関心の高まりは世の中に広くさけばれてきましたが、身近かで生活に直接関係する問題のからんでいるオニバスの存続についてはいまだ何らの働きかけもありません。ぜひ、残された自生地の保護を考えていく必要があります。池の環境や池の利用について自然保護の観点をふまえた具体的な対策が打ち出されなければ、オニバスのその巨大な葉も2度と我々の目に触れることがなくなるのではないでしょうか。

日本におけるオニバスの分布。岡田(1935)にその後の資料を追加して作図。角野康郎(1983)

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