 |
 |
 |
■4.カケス −貯食性と物真似
|
3.食物を貯える
喉に餌をためることを書いたついでにこの鳥の貯食性にふれておこう。カラス科の鳥は野鳥の中で最も知能が優れているといわれる。同類のカラスが、ゴルファーの打ったボールを待ち伏せして持ち逃げし、ある地点に数十個も集めていたという話を聞いたことがある。ゴルフボールが食物でないことは鳥にはわかっているはずで、一種の遊びと考えられる。
カケスを飼っていた人の話によると、すぐに処理できないような餌をやると、籠のすみや餌入れの下、籠の底に敷いた紙の下などにかくしたという。また、雛から育てて室内で放し飼いした人の話では、キャラメルやビスケットのようなものをやると部屋の額の裏やじゅうたんの下に押し込み、その餌は後でとり出して食べることもあったが、そのまま放置することも多く、それにアリが集って困ったという。このような場合でも喉へ入る大きさのものならば喉へ入れて運び、入らない大きなものは嘴にくわえて運ぶ、食べられないビー玉のようなものも好んでおもちゃにし、多数与えると自分の気に入った場所まで運んで貯めたという。
野生のカケスでは細かなことまで観察できる機会に出会うのは偶然の機会しかないだろう。この鳥の多く棲んでいる山の中にでも住居をかまえ、朝から晩まで鳥とつき合えるような生活でもしなければ無理である。そんな意味でこの飼育記録は大いに参考になる。しかし、この烏の貯食性は古くからよく知られている習性である。炭焼小屋の横に積み上げていた薪の中から多数のドングリが出たとか、木のほら穴に栗を入れていたとか、そういう話は数多くある。リスにもこのような習性があるらしいから、そのすべてがカケスの仕業とはいえないとしても、山仕事する昔の人はこの鳥の習性をよく見ていたのである。10年以上も前になるが、小部の栗林で10月頃に栗をくわえては同じ方向に何度も運んでいるカケスを見たことがある。山の野生栗は小さいけれども、この鳥の喉には入らなかったのでくわえて運んだのである。やはり10月頃小部で、シイの実を皮のついたまま3粒飲み込み飛び去るのを見たことがある。この鳥がドングリを食べる時はそれを両脚ではさんで押さえ、嘴で皮をつき破って中味だけを小さくむしりながら食べ、決して皮のまま丸飲みすることはない。だからその3粒は喉にためて運んだと見るべきで、貯えるためか、他の安全な所へ移動して食べたのか追跡できなかった。それでは、このように貯蔵した食料はいつ食べるのかということであるが、後になってとり出して食べることもあるらしいが、そのままになってしまうことの方が多い。貯えた鳥が忘れてしまったのか、それとも、渡りの移動で遠くへ行ったのか、不慮の死をとげたのか、その辺のところはわからない。後になって人に見つけられカケスの仕業だということになる。春になってそのドングリが多数芽を出したというような話も聞いたことがある。落葉の下にかくしたドングリが春に発芽し、思わぬ所にカシの木の実生が見られる事も十分起りうる。カケスのこの習性はカシやシイの分布拡大に何か関係を持っているとも考えられ、興味のある問題である。
カラスの仲間は声が悪い。カラスの声は古くから不吉だと忌み嫌われる。鳥の中にはカラスよりひどい声のものは多いが、それらは海鳥に多いので一般になじみがない。カケスもカラスの仲間にふさわしい濁み声である。「ギャー」または「ジャー」と騒がしいだけの声である。仲間どうしが近くで鳴きかわすときは優しい声で「グィーツ」という声になり、繁殖期の雄雌が近くで鳴き交わしている声も「グィーツ」「グィーツ」とおだやかである。外敵が近づくと「ギャーッ」が強くなり、1羽が騒ぎだすと近くのものが多数集まってきてさわぎたてる。巣のあるときだけでなく、秋や冬に森の中で騒ぎ立てていることがよくある。何か異様な物を見つけた時、特にフクロウ類を見つけると大騒ぎになる。次は声の話をとり上げてみよう。
|
|
|