神戸の自然シリーズ6 神戸の野鳥観察記
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■4.カケス −貯食性と物真似

2.繁殖の習性

 神戸のカケスには、3月下旬にはやくも産卵をはじめるものがあって、中部地方などにくらべてずい分早い。最も盛んな産卵期は4月中旬〜5月上旬の春たけなわの頃である。6月以降はぐっと少なくなり、6月中でその年の繁殖期は終了するようである。

 かつて六甲山と小部方面でカケスの巣を多数調べたことがある。古巣、廃巣をふくめるとその数は200個を上回った。その結果、大部分がアセビの樹にあり、アカマツ約8例、イヌツゲ約8例、モミ3例、その他4例が別の木であった。アセビに集中するこの傾向は、他地方の報告をみるとそうでもないから、六甲山附近にすむカケスの特筆すべき習性なのかとも思ってみた。この点に関して、アセビとカケスの巣との関係をさぐってみた。カケスの多くが営巣をはじめる春まだ浅い頃、落葉樹は葉がない。芽吹いていてもまだ葉が小さく、巣を被ってくれない。少しぐらい葉がのびても葉肉がうすく何か不安な感じをうける。この時期に巣を被いかくすのに十分な分厚い葉があり、巣をかけやすい枝ぶりのある木を求めるとすれば、六甲の森ではやはりアセビが最適である。また、六甲山や神戸の森にはよく成長したアセビが多いのもその理由になるだろう。六甲山でカケスの巣の多い一画でカケスが巣を作れそうな樹を樹種別に分けるとアセビが7〜8割を占めることがわかった。無作意にとってもアセビが多くなるのが自然である。もちろん、これは人間の感覚でみたのだから、鳥の感覚と一致するとは限らない。

 それでは、カケスはどれくらいの高さに巣をつくるのだろうか。六甲で多数の巣を調べたところ、最も低いものは小さいアセビの80cmの高さにあった。巣のそばに立てば、ヒザの少し上あたりになる。多いのが、3〜5m、高い巣では10mもあるマツの枝に作ったカラスの巣かと思うようなものがあった。このようにカケスの巣の高さはまちまちであるが、彼らが選んだ高さは、地上からというより、森の中層を作っている樹木の樹冠近くを選んでいるといえる。

 巣作りには繁殖初期の余裕のある頃では10〜15日かけることもあるが、ふつう5〜10日で完成させている。完成後、初卵を見るまでは、2〜12日のこともあるが、一週間以上おくこともある。早い季節から巣作りにかかったものは、すべてのんびりしており、5月頃になってから作りはじめたり、被害にあってやり直したものは早いテンポで進行する。


 巣の外側は粗大な枯枝を使う。鉛筆よりも太い、30cmをこすようなものも運んでさている。樹皮も使うが、最近はナイロンやポリ袋など人間くさい材料を使ったものがある。底から組みはじめ、浅い鉢状になった頃から中層のコケ、泥、根などで内張りをしながら巣はしだいに探さを増す。そして最後に産座に使う細根や葉を持ち込んで内装を終える。巣の大きさは、外径が20〜30cmであるが営巣場所の枝ぶりによって大きさはいちじるしく変化する。内径は12〜13cm、深さ6〜8cmの茶わん型の巣である。

 巣作りの時期は雄雌が行動を共にしていることが多く、小さい声で鳴きかわしながら巣材を運んでくる。六甲でのある例では巣材は地上からも拾うが、枯枝を直接幹からもぎ取ってくるほうが多かった。また、材料の運搬は2羽のうち1羽が中心になり他の1羽はそれにつきそうだけでほとんど何もしなかった。巣内の作業は、材料を運び込んだ方の鳥がしていた。雄雌同色の鳥はこのような観察のときには実に不便である。カケスに近い種類の記録から見ると多分巣作りの中心になっているのは雌と抵定される。

 六甲のカケスは人が多いためか人馴れしているものが多い。たとえばこの巣作りの例にひいた鳥は高さ3mほどのアセビの枝に営巣していたのだが私は樹のすぐそばに立っていたから私の目と巣との距離は5mもなかった。ブラインドも使わず、木の影にかくれていたわけでもなく、立ったり座ったりして見ていたのである。鳥と目があっても別に意識するようすは見られなかった。巣材は、20mほど離れたアセビとマツの枯枝で、1〜3分間かくで枝をむしりとっては運び、5〜7回運ぶと1時間ほど遠くへ行ってしまうことが多かった。むしりとった枝が地上に落ちた場合、それを拾いに下りることが多く、1回に2本くわえてくることはなかった。(1977年5月29日 六甲天狗荘南の谷間にて)

 卵はふつう5個のことが多い。3卵の例もあったが、これは産卵の途中で被害にあったことも考えられる。卵は青緑色の美しい地色に淡い褐色の細点が密に分布している。長径28〜32mm、短径は22〜24mmで重さ7〜8gである。

 卵は抱卵をはじめてから16〜17日ぐらいで孵化する。腑化直後の雛は羽毛がまったくない裸のままであり、目もあいていない。鳥の雛が可愛いというのは、ニワトリのように孵化してすぐ歩けるような雛のことで、小鳥の雛は爬虫類を連想させる気味の悪いものである。目も開き、羽毛がだいたい生えそろってこなければとても可愛いといえるようなものでない。親鳥の熱心な養育により日ごとに成長し、約20日後に巣立ちをする。巣立ち後の雛もさらに1か月以上は親鳥と行動をともにし、養育をうけながら自立の道を習得していく。巣にいる間はほとんど声を出さなかった雛だが、巣立ちをして親鳥のあとをつきまわる頃になると実によく鳴く。餌をもらう時などは大騒ぎである。

 カケスは雛に餌を運ぶとき嘴にくわえてくることはほとんどない。ほとんどないと書いたが実際見たことがない。餌はすべて喉にためて飛んでくる。小鳥は餌をくわえて運ぶので、巣を探すときの大きな手がかりとなるが、喉に入れられてはさっぱりわからない。喉に入れたのでは声が出ないかと思うが、巣に近づくときは 「グィーツ」と小さな声で鳴きながら来る。また、巣を離れて行動するときは雄雌がほとんど行動をともにしている。

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