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■5.ヒヨドリ −圧倒される大群の渡り
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2.繁殖の習性
4月頃になると、雌親が雛と同じような高い甘え声で 「ピイ、ピイ」鳴きながら雄の後をつけまわり、両翼をふって雛が餌をねだるのと同じ動作で、雄から餌を受けるのを見ることが多くなる。この動作は、巣作りをはじめる少し前からさらに盛んになり、営巣中や抱卵中もつづくが、巣立ち雛をつれた雌親も同じ動作をする。そしてその動作や声はよく目立ち、町の中でもよく見かけてほほえましい。親と同じ大きさにまで成長した巣立ち雛が親の後をつきまとって餌をねだっている光景も同じであるから、よく注意しないと雌親と雛とをまちがえて記録してしまう。繁殖の終った秋や真冬でさえこの動作を見せることがあるが、実際に餌を受け取ることはないようである。この動作から、つがいの関係は非繁殖期にも縦続するのではないかと思われる。
繁殖をはじめる季節は4月下旬からになるが、早い季節には少なく、6月に入って産卵する例が多い。
巣をかける樹の種類は広範囲にわたり、特により好みはないように思う。葉の少ないマツには少ないが、針葉樹でもスギやヒマラヤスギの場合はそうでもなく、広葉樹では常緑樹の方がやや多いが、中程度の大きさの葉が適当にこんでいる木ならなんでもよいらしい。比較的多かった樹をあげると、イヌグス、カシ、ヤマモモ、ヒサカキ、ソヨゴ、モチ、クヌギ、コナラなどである。アケビやフジのようなつたが巻きついて枝葉がよく茂っている中に作ることも多いが、ときには、遠くからでもよく見える枝葉の少ない独立樹に作った場合もあり、これでもヒヨドリの巣かと疑ったこともある。
巣をかける高さは、低い巣は30cm、高いものには10mを越す巣があるが、2〜6mぐらいの範囲が多い。
巣の材料は外側に枯枝、枯れつた、樹皮、シダの葉などを使う。内部には枯葉もかなり使うが内壁は細根、樹皮、枯れ松葉などを使って美しく仕上げる。巣の大きさは平均で外径15cm、内径9cm、深さ4cmほどの椀型の巣である。外径はまちまちで、ホオジロの巣かと思うほどの小さいものから、カケスの巣かと迷うほどの大きいものまであるが、これは巣をかける木の枝ぶりによって決まる。
人里近い所のヒヨドリは巣材におもしろい適応性が見られる。針金ばかりでできたカラスの巣の話を聞いたことがあるが、ヒヨドリの巣によく使われるのはナイロン、ビニールなどのヒモ類や布の切れはしなどである。なかには赤いひもを多量に使った派手な巣もあった。適応範囲の広さを調べてみるのも興味のある問題である。
営巣をはじめる頃になると巣材をくわえて巣の候補地を探している夫婦者らしい2羽を見ることが多い。巣材を運ぶのは1羽で、他の1羽は行動を共にしているだけだが、その性別はまだ十分調べていない。そして木の繁った中をあちらこちらとのぞき込むようにしながら、巣をかける手頃な枝を探しまわるようになる。やがて営巣場所が決まり巣材運びがはじまれば、あとは5〜10日ぐらいで巣は完成する。その後2〜7日のうちに第一卵を産みはじめる。遅れて巣作りをはじめたものは巣作り期間も短く、そして産卵も早い。早くから巣作りをはじめたものは、その逆でゆっくりしている。
卵は淡いバラ色がかった白色の地に、赤褐色と赤紫色の小さな斑点を散りばめて宝石のように美しい。長径30mm、短径20mm、重さ6gほどである。1日に一つずつ産み、最終卵を産み終ってから抱卵にかかる。一腹に4〜6個産むが、4個と5個が多い。2卵を抱卵しつづけ、無事に2卵共雛にかえし、巣立たせた例をみたが、私の発見したのが抱卵の中期だから、それより前の産卵期か抱卵の初期に外敵によって一部を紛失したのではないかと思われる。このようなことが起った場合には、ふつうなら巣卵を廃棄してしまうことが多いが、例外的にこの鳥はあきらめずに熱心に卵を抱いたのである。(再度山1979年6月24日巣立ち)
雛の孵るのは抱卵をはじめてから、12〜13日後になり、孵化した雛は初毛もない裸のままで、目が開くのは1週間以上たった頃である。14〜16日の養育で、翼ものび、巣を離れて近くの枝に移動する。雛は巣にいるときも、巣立ちしてからもよく鳴くので所在がわかりやすい。巣立ちした雛はその後かなり長期間親鳥から養育を受け、遠くから見たのでは親鳥と区別できないほどの大きさになっても、親と行動をともにし、餌をもらっている。その期間は、恐らく1か月には達していると思われる。
巣雛の餌は動物質が多いが果実もよく与える。ちがった場所で調べた2例の親鳥が巣に持って来る餌は、それぞれの環境がかなり違うのによく似ていた。どちらの例でも昆虫が多かったが、柔かく消化のよさそうな虫は意外に少なく、かたい昆虫が多い。スズメバチ、アシナガバチ、カメムシ、コガネムシ、少数のガ、小さなバッタなどが主であり、チョウやガの幼虫のような消化のよさそうなみずみずしいものは少なかった。ウグイスやシジュウガラと少し違った傾向である。その好みは季節がちがっても共通の点が多かった。果実ではヤマモモが圧倒的に多い。ある2例の巣は、別の年の同じ頃に発見した巣であるが、その片方はすぐ近くに大きなヤマモモの木があって、そこへたびたび通った。もう一方の巣では200m以上離れた所までヤマモモの木がなく、それをとりに出かけているのがみられた。孵化後間もない雛の口に、その頭ほどあるヤマモモを丸ごと押し込んでいる光景はへビが卵を飲むのとそっくりで鳥が爬虫類から進化し、その特徴を多分に残しているといわれている証拠をみせつけられるようであった。植物質と動物質とは平均的に見ておよそ1対3で、日によって植物質の餌の多いこともあり、近くに適当な果実のない季節では昆虫の比率が高かった。町の庭先の巣で、スズメ用にまいた食パンの切れはしを多用する親を見たが、このような食物で雛の健全な成育ができるかどうか心配であった。その雛は標準的な日数で巣立ちはしたが、気のせいかひとまわり小さく感じた。野鳥に給餌する際の弊害はこのへんにも表われるのではないかと思われ、十分に注意しなければならない。雄親雌親ともに育雛に従事するが、雄親の持って帰った餌を雌親がねだってとり、それを雛に与える二重手間をすることが多い。
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