神戸の自然シリーズ6 神戸の野鳥観察記
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■6.タマシギ −一妻多夫の社会

2.冬のタマシギ −変った巣−

 ある北風の強い冬の日、こんなことがあった。(昭和34(1959)年2月15日)岩岡町古郷で、ウズラやタシギを追って、枯草でおおわれた池のへりを歩いていたときのことである。2〜3m前方に草のようすがちょっと変っている一点があるのに気づいた。枯れた草が、その部分だけ低くなってかたまっているように見える。何だろうかと1mぐらいまで注意しながらゆっくり近づき、草のすき聞から透かすようにして見ると、中にタマシギの雌がひそんでいるのがわかった。

 近づいた私に警戒の姿勢をとりながらも飛び立つ気配はない。草の空間の許す限り後退をして低い姿勢をとっていた。枯草の色とは見事な調和である。後で、その場所を調べてみた。40cmぐらいにのびて冬枯れたイネ科の草の密生した中にその草をおし広げて、ちょうど鳥の体がすっぼり入るだけの大きさのトンネル状のくほみを作り、北側と天井の壁はまわりの草をひきよせ、南に向いて開いている。さらに自分の入るすき間を作るときに押し広げた草を加え、少しざついが小鳥の巣の内壁のような状態に仕上っている。草は遠くから集めたものでなくすべて地に生えたままのものを折り曲げただけである。

 湿地ではあるが、ここは水は溜まっていない場所にある。北風はこの草の壁で防がれ、陽は十分に入るような構造である。この鳥が作ったものか、他の動物の作ったものに偶然この鳥が入り合わせたのか確かめることはできなかったが、少なくとも自然にできたものでない。近くにすむ哺乳類や鳥類で、こんな巣を作る動物は心当りがない。タマシギは冬の間、こんな仮の巣を作る習性があるのかどうか知らないが、寒風を避けて草の中にもぐり込んだこの鳥が、まわりの枯草を肩や胸、頭で押し広げているうちにこのような巣になった場面が想像できる。

 さらに、鳥の足で草がふみつけられたトンネル状の通路が、南東側から巣に向けて2〜3m認められた。これは同じ道を何度も通っている証しで、仮の巣は続けて使っているらしい。この鳥は手で捕えることさえできたが、ふつうならこんなことは珍らしい。

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