神戸の自然シリーズ6 神戸の野鳥観察記
  前ページへ 目次へ 次ページへ
■6.タマシギ −一妻多夫の社会

1.神戸のタマシギ

 タマシギは神戸では観察の機会の少ない鳥であるが、その風変りな繁殖習性から野鳥観察者の間ではよく話題になる鳥である。人の近づきにくい沼の縁りや荒れた水田などの湿地を好み、草むらの中をくぐって生活し、水際や干潟に全身を見せるようなことはほとんどしない。人が近づいても飛び立たず、また、夜行性が強く、昼間はあまり活動しない。こんな理由がいくつか重なり、タマシギの姿を見たという人は少なく、この鳥の名を無名のものにしてしまったのだろう。

 最近、休耕田の増加でタマシギが増えた地方もあるが、神戸では農地の宅地化などで積み場所がせばめられ、かえって少なくなった。西神戸の水田地帯がこの鳥の主な棲息地であるが、北区の水田にも少しはいるという。稲作中の水田にも好んで棲むが、稲の手入れで巣がこわされる危険が多い。何といっても好都合なのは、休耕田や池の周り、ところどころに浅く水が溜まり湿地性のイネ科の雑草で、どちらかといえば、アシのように強く背丈のある草よりも、ヒエの類やスズメノテッポウのような柔かい草の所に多い。

 西日本では留鳥といわれ、神戸でもそのようであるが、冬は特に目立ちにくい。深い枯草の中にひそみ、鳴き声をたてることがない。人が近づくと、低い姿勢で伏せ、なかなか飛び立たない。いったん草の中へ伏せてしまうと、すぐそばを通っていても気づくことはまずない。完全にまわりにとけ込んでしまう保護色である。それでも2〜3mまで近づくと飛立つことがあり、何度も追いたてると、場合によっては10m以上離れた所から飛立つようになり、1回の飛翔距離も長くなる傾向が見られる。

 飛び方はタマシギのように敏捷さがなく、足をだらりと後方に下げ、丸く短い翼をバタバタと羽ばたいている感じで、速度も遅い。空高く舞い上ることはなく、低空を飛んですぐ草の中へ下りる。

前ページへ 目次へ 次ページへ