スズメノカタビラのなかま |
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これから紹介します10種はイネ科のグループで、芽を出した最初の葉は1枚の単子葉植物です。葉はササのように細長く、すじ(葉脈)は平行に長く走っています。茎はムギわらのように中がからっぽ(中空)で、節があるので稈(かん)とよびます。根は細くてたくさん生やし、ひげ根となっています。花の集まりはイネやススキのように穂状となります。
イネ科は世界に2万種ほどあるキク科についで多く、約8000種もあるたいへん大きなグループです。うち神戸で知られているのは200種ほどで、市街地では50種あまりです。
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写真117 スズメノカタビラ
3月 灘区 |
写真118 ネズミムギ
5月 中央区 |
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■スズメノカタビラ
道ばたから、公園の通路、運動場のふちなど人気のあるところならどこでも生えます(写真117)。また、その分布はほとんど世界中で、冬を越すもの、越さないものまであり、ほとんど年中花や穂を見ます。地面近くから稈を分け、斜め上に群がって立ちあげます。
■ネズミムギ
人の踏み込みのない、よく日の当たるところで群がって生える春の草です(写真118)。原産地のヨーロッパでは家畜の飼料となる牧草ですが、日本では野生状態です。とくに砂浜などでは本来の海岸植物を追いやっています。穂から出ているひげ(のぎ)のないものはホソムギといい、これも大発生しているのを見かけます。
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写真119 ヒロハノウシノケグサ
5月 垂水区 |
写真120 ヒゲナガスズメノチャヒキ
4月 中央区 |
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■ヒロハノウシノケグサ
道ばたや道路の法面の草むらに生える高さ1m前後の草です(写真119)。これもヨーロッパ原産の牧草が野放しになったもので、穂は長くて30cmあまりです。
■ヒゲナガスズメノチャヒキ
公園の低い木のふちや空き地などで見るわりと大型の草で、倒れかかったような生え方と、とても長い穂でいっぺんに印象づけられます(写真120)。
戦後から広がりだした地中海沿岸の原産である新しい帰化植物です。のぎは長くて5cmほどあり、和名のとおりです。
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写真121 カラスムギ
5月 垂水区 |
写真122 ムギクサ
4月 中央区 |
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■カラスムギ
乾いた道ばたから川原まで、よく日の当たるところでときどき見かけませんか(写真121)。穂をつくっているひとつの小穂は2cm前後と大きく、わかりにくいイネ科の花のしくみを調べるのに最も適しています。
ヨーロッパの原産で相当古くからの帰化植物は牧草として役立ちそうですが日本では至るところで野生化しています。
■ムギクサ
幹線道路の中央分離帯のイチョウの木の下で生えていました(写真122)。オオムギの穂とそっくりの姿で、まわりの草とのきわだった違いから、車の中からでもすぐ目にとまりました。
これもヨーロッパ原産のようで、日本では明治の初めに横浜で記録されたとあります。人や家畜の大切な穀物であるオオムギの祖先と考えられます。
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写真123 コバンソウ
6月 須磨区 |
写真124 ヒメコバンソウ
5月 東灘区 |
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■コバンソウ
大きな団地の中の植木のふちで見かけました(写真123)。垂れ下がる穂の姿、形は江戸時代の金貨の小判そっくりで、揺すればチャリンチャリンと音がしそうです。
ヨーロッパから観賞用に持ち込まれたものからエスケープしたのでしょう。ドライ・フラワー(dry-flower)として飾ることもできるそうです。
■ヒメコバンソウ
穂の形はコバンソウに似ていますが、それよりはずっと小さく鈴なりにつけています(写真124)。申し合わせたようにこれもヨーロッパ産で、市街地ではコバンソウよりも広がっています。
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写真125 スズメノテッポウ
4月 灘区 |
写真126 クサイ
5月 中央区 |
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■スズメノテッポウ
西や北区の田植え前の水田や小あぜで群がり広がっているのを見たことがあるでしょう(写真125)。数cmの穂はオレンジ色の葯(やく。花粉の袋)で染まります。
農耕地域の草がなぜ市街地にと不思議に思いませんか。ルーツ(root)を探ってみましょう。
- 明治の終わるころまでは田畑があった。そのころからの生き残り。
- 地中で眠っていた種(埋土種子といいます)が工事か何かで掘り出されて芽を吹き返した。
- 郊外で育てられた花や木の苗が都市に持ち込まれ、庭や公園、街路に植えられて、それらの根本の土にまぎれ込んで、種がはいってきた。
- 人や野鳥などの足や体にくっついて種が運ばれてきた。
いろいろなチャンス(chance)やルート(route)が考えられます。でも、実証するとなると簡単ではありません。
■クサイ
たたみの材料として栽培されるイグサに近いなかまで、これまで紹介したイネ科と同じ単子葉植物のひとつです(写真126)。
いくぶん湿った土を好みますが、人に少々踏まれても平気で育ちます。公園や学校の中庭、グランドのふちなどで見つけてください。そして、この草といっしょに生えている草を見つけましょう。
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