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■7.キジバト −町に進出した野の鳥
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1.神戸のキジバト
これから紹介するキジバトは、キジバトというよりヤマバトといった方がなじみ深いだろう。最近は山や村だけでなく、町の中でも見られるようになったから知っている人も多いはずである。
本州では、ほんとうの野生種のハトは3種しかなく、その中でキジバト以外は、むしろ珍らしい野鳥の部に入る。ほかの2種とはカラスバトとアオバトである。
カラスバトという大型の黒いハトは外洋に面した照葉樹林に棲み、神戸では、定着している所はない。鳴き声も「ウッウー」と低く、ウシバトと呼ぶ地方もある。
アオバトは神戸では山地のシイ林などに来る冬鳥で、人の目にふれる機会は少ない。ハトとは思えない鳴き声で、どちらかといえば獣に近い声で、尺八の音色にも似ており、「アォー、ワァォー」と鳴く、オリーブ緑の美しいハトである。
神社や公園に棲みつき、増えすぎて嫌われているのはドバトで、野鳥として扱わない習慣になっている。地中海方面に分布するカワラバトを改良したものである。
南の島には、ほかに、いくつかの種類が見られるが、ここでは省くことにする。
神戸の山や町で私たちがふつうに見かけるハトは、キジバトかドバトかのどちらかと思ってまずまちがいない。ドバトも山の森に木の実を求めてよく侵入するので注意せねばならない。
ドバトは寺院に大群で棲みつき、団地のベランダや駅舎の天井に巣を作ってまわりを汚し、鳩公害としてよく問題になる。
キジバトは町の中では群を作らない。いつも1羽か一つがいで人目をはばかるように静かに生活している。もともと町の中にはほとんでいなかった鳥である。しかし冬の山や農村では大群になることもある。
町の中への進出が目立つようになったのはこの20年ほどの間である。それとともに人によく馴れ、観察がしやすくなった。
町に殖えたといっても、ドバトのように人間生活をおびやかすほどのものではないし、むしろ少なくなった自然を町の中によみがえらせてくれたこの鳥を静かに見守ってやりたい。町に棲みつくようになった最大の原因は、ヒヨドリの所にも書いたが、子供たちの鳥いじめが最近減ったことによるのだと思う。一昔前のように空気銃が玩具の一つとして扱われている時代ならば、今のように人なれしたキジバトは、とっくにその犠牲になってしまって姿を消したに違いない。
私の自宅附近に棲むキジバトも実によく人馴れしている。写真をとるためにカメラをかまえ3m位まで近づいても飛び立たない。通勤の途中いつも通る幅2.5mほどの道に、早朝2羽づれが餌を拾っているのによく出合う。驚かせるといけないと思って、鳥の居る反対側の端を静かに通ることにしているが、そのキジバトは私と反対側の道端によけるだけで飛び立つ気配はない。庭に巣材を拾いに来る雄親をみたので、咋年せん定した白樺の小枝を適当に切ってまいてみたら、5分ほどの間に20回ほどとりに来た。その様子を写真にとるため、2mほどの所でカメラをかまえている私にはまったく無頓着であった。巣までの距離は約7mである(1980年7月20日の朝6時頃=裏表紙写真)。
都会地に棲んでいるキジバトはほとんど留鳥である。垂水区の住宅地にある私の家の近くに棲む幾つがいかの様子をみても、1年中ほとんど移動していない。また、冬になって数がふえることもない。家禽に一歩近づいた野鳥という感じがあらゆる所に強く見られる。
西神戸の農村部や、山に行けば冬の方がずっと数が多い。その地で繁殖するものも決して少なくないのだが、開けた地で20〜30羽の群が見られるの咋冬だけである。その上、冬に来る多数のキジバトは人に対して警戒心も強く、広い所では50メートルまで近づくのさえ困難なものがある。野生の冬のキジバトは、都会の中でいつも見ている人馴れしたキジバトより機敏で、たくましく気持ちがよい。秋から冬にかけて、このような本来の野生的生活をしているキジバトたちは決った森や竹林をねぐらとしてそこに集結する。かつて、小部で約50羽が毎日時としているスギと竹の林を見たし、稲美町と岩岡町の境界付近の森にもそういう場所があった。
市街地に棲むキジバトには集団のさえずりはない。1羽か2羽で、どこかの庭木に宿って眠るらしい。また、このようなキジバトは、北国からくる冬鳥的なものと比べると、1年間の生活サイクルがだいぶん狂っている。たとえば、はっきりした繁殖期を持たず、12月や1月から抱卵をはじめることさえあるほどだから、体の状態が、完全な冬を示すとさはないらしい。
市街地に留鳥的にすみ、家禽に一歩近づいた感じのキジバトとはいえ、まだ野生の美しさを完全に失ってはいない。時には野生の性質を見せ、私を安心させてくれる。
人馴れしたことや、生活舞台のバックが悪いことなど、いくつかの欠点を補ってやれば、かえって十分な観察ができるので利点も多い。
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