半翅目-セミのなかま

 
 口はカメムシのなかまと同じく、パイプ型の吸収口ですが、幼虫も成虫も植物質を吸汁します。また、前後のはねは膜質で、前ばねの先の方半分だけが膜質のカメムシ類と大きく異なります。また、雄は発音筋、発振膜、そしてバイオリンの胴の役目をする大きな共鳴室など複雑なしくみで、昆虫界きっての大音響で鳴き、鳥も顔負けです。

 不完全変態とはいえ、幼虫が7年あまりの長い地中の暮らしから地上に出て羽化(うか)するときは、劇的な変化を遂げて成虫になります。それと、触角がとても短いです。

 ハルゼミ、エゾゼミ、ヒグラシだどは山中のセミです。




■クマゼミの産卵


 真夏の街中で「シャン、シャン、シャン」とにぎやかな鳴き声を響かせているところは、皆さんもよく見ていることでしょう。

 これは、公園のオトメツバキの枝に卵を産み付けているところです。長さ1cmもありそうな産卵管は刃物のように鋭いのでしょうか、堅そうな樹皮をはいで卵を埋め込みます。3時間あと、再び現場を見に行って驚きました。まだ、産卵行動を続けていたのです。

■クマゼミの産卵あと

 産卵現場を見てから、3日あとに調べに行きますと、ごらんのようにまるでノコギリ歯のように樹皮がささくれだっていました。

 産み付ける方向は下から上に向いています。めくりあがった傷跡をルーペで見ましたが、よほど奥の方に卵が差し込まれているのでいるのでしょうか、確かめることはできませんでした。卵は冬を越し、梅雨どきにふ化して地中に入っていくそうです。
クマゼミの羽化

 7月も半ば正午過ぎ、小1の孫が「セミが生まれている」と大声を出して呼びにきました。

 近くを探すと、他にも殻が5個見つかります。庭木は10年ほど前に植えたものですから、セミの発生はごく自然なことだったのかもしれません。それにしても、ごく身近なところでこうした光景が見られるというのはやはり感動を憶えます。




写真61 写真62 写真63 写真64 写真65
アブラゼミの羽化、8月、青谷川公園


■アブラゼミの羽化

 公園をふちどるシャリンバイの植木にはたくさんの羽化殻が引っ掛かっていました。また、その付近の地面には、いくつもの幼虫が這い上がってきた脱出孔があいています。

 そして、一匹の羽化しかけのを見つけ、時間を追って記録しました。

8月4日 20時 0分 背中に長さ1cmぐらいの裂け目が入る(写真61)。
20時 6分 裂け目は大きくなり背中がのぞく。
20時11分 小さく縮められた羽が見えだす。
20時17分 真横から見ると、体の上半分が殻の外に出る。
20時23分 前あしをもぞもぞと動かし、体は45度ぐらい斜め下にのぞけっている(写真62)。
20時25分 あし全部が殻の外に出る。羽はちょっぴり伸びるだけ。
20時30分 体の80%ほどが殻から脱け出す。あしはやはり、もぞもぞさせている。
20時35分 上体を上に持ち上げる姿勢をとったかと思うと、また元の位置に戻したりして垂直近くに垂れ下がる。その後しばらく頭を真下にしたまま脚も動かさずに、最後の殻の脱出に備えて休んでいる。
20時50分 上体を反転させ、残っている力を振りしぼって頭をぐいっと上に持ち上げながら殻からの脱出に成功。おめでとうと言ってやりたい。残念なことにその瞬間はカメラのフラッシュの不調で撮影は失敗。
21時 0分 電池を取り替え、無事羽化したあとを写す。羽はまだ曲がったままで、体も白っぽい(写真63)。
21時25分 体を殻の上で少し移動させる。
21時45分 羽がほんのりアブラゼミの茶色に染まってくる(写真64)。
8月5日  6時30分 体を休めていた殻から15cmほど移動して離れていた。羽はもうすっかり親ゼミの色になっていた。あとはもう飛び立って1ヶ月ほど夏を謳歌(おうか)するのみ(写真65)。










 
 
  



 
   
 
  




















 尚、セミの羽化に限りませんが、いつも成功するとは決まっていません。街中で羽化直前に死んでいるのを何回も見たことがあります。また、羽化の途中はもっとも無防備なので、野鳥の餌じきになるものもいます。

 生まれるということや、生きることの厳しさはすべての生き物に共通です。


 

写真66、ミンミンゼミ
8月、王子公園


■ミンミンゼミ

 神戸の市街には、樹木の多い公園など[緑の島」が点々と散らばっていて、クマゼミをはじめアブラゼミやニイニイゼミが発生します。

 また、六甲山のふもとですので、山中のミンミンゼミやツクツクボウシなども移動してきて「緑の島」に姿を見せます。

 このミンミンゼミは好物の桜の樹液がお目当てのようです。



写真67、ツクツクボウシ♂
8月、落合中央公園
写真68、ツクツクボウシ♀
9月、中島通公園


■ツクツクボウシ♂

 暑い盛りの8月もお盆のころになりますと、秋の訪れを予告するかのように鳴き始めるツクツクボウシ。

 ヤマモモ、メタセコイヤなど20本ほどの木を見ていくうちに、3匹ほどが地上2mあたりでそれぞれの木に止まっていました。


■ツクツクボウシ♀
 9月に入ってからも、残暑の厳しい日が続いていましたが、前日の夕方、にわか雨があって少し涼しくなりました。この公園の近くは並木の多い学校がいくつもあって、セミで賑わうところです。タイサンボクの皮をめくって、どうやら産卵しているようです(写真68)。



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