市街地に見るクモ

 
 クモは昆虫のなかまと同じく節足動物の一部門です。脚は何対何本ですか。昆虫は胸部より3対で6本ですが、クモは頭と胸が合わさって頭胸部から4対で8本の脚を出します。

 また、昆虫のような複眼はなく、多くは単眼が8個です。触角がないかわりに脚が変化していて、手の代用にもなる感覚器の触手(しょくしゅ)を1対もっています。昆虫の幼虫は口から糸を吐くものがいますが、クモは腹端近くに糸を出すしかけがあります。クモといえばクモの巣(網)を目に浮かべますが、日本で知られる1000種以上のクモのうち網を張るのは約半分です。

 しかし、網を張る、張らないに関係なく、クモは糸を引いて移動します。



写真196、アダンソンハエトリ♂
10月、自宅
写真197、シラゲハエトリ
8月、自宅


■アダンソンハエトリ♂

 
 これは家の白壁をはっているところです(写真196)。タタミの上をノミのようにピョンピョンとジャンプ(jump)しているところを見たことがあるでしょう。

 雄は写真のように黒い体に白の紋をつけ「パンダグモ」と名付けたいくらいですが、雌は赤褐色で雄より大きく、まるで別種のようです。

 網を張らないクモのひとつで、うろつき回り、あるいは待伏せして獲物をねらう徘徊性(はいかいせい)のクモです。家の中の害虫やダニを退治してくれる益虫です。大切に。


■シラゲハエトリ
 家の外壁に止まっていました(写真197)。このクモもさきのアダンソンと同様、家の中やそのまわりによく見かける徘徊性のクモです。体には白い毛が混じり、全体として灰色っぽく見えます。

 体はアダンソン♂より大きくて7〜8mm、単眼8ケのうち前列4ケの中央2ケは車のヘッドライトのようで、外側はサイドランプのように小づくりで、ハエトリグモのなかまの目印です。

 写真のクモ本体の前にあるゴミのようなものは脱皮殻です。動かないものは食べないといわれますが、省資源(資源をムダにせず活用)のため、もしかして食べるかも?



写真198、ササグモ
7月、自宅
写真199、コガタコガネグモ
9月、熊内町7


■ササグモ

 花にくる虫を待ちかまえているササグモ(写真198)。体長は約1cm、長い体つきで脚にはトゲを持っています。得意のジャンプで虫を捕え、スギ林業では、スギタマバエの天敵として役立っているそうです。

 なお、クモのなかまは生きた獲物しか口にしませんが、がつがつ食べるのではなく、生き餌に胃から消化液を注射し、消化されたころを見計らって液状にして胃の中に吸い込むという食べ方です。


■コガタコガネグモ

 コガネグモのなかまは、垂直の円網にX字状の「かくれ帯」をとりつける習性があります(写真199)。2本ずつそろえた長い脚をこのかくれおびに沿わせています。天敵である鳥の目をごまかすつもりでしょうか。



写真200、ナガコガネグモ
10月、中原通4
写真201、ナガコガネグモの卵のう
10月、舞子台8


■ナガコガネグモ

 歩道のヒラドツツジの植えこみの中で網を張り、オンブバッタを捕えて糸を巻きつけているのに出くわせました(写真200)。

 体は2cmあまり、黄と黒の横しまのもようがあざやかな美しい雌グモです。雄は雌の半分ほどで、色やもようは目立ちません。

 網はほぼ地面に垂直な円形で、ジグザグなかくれ帯(おび)をつけます。網を刺激すると、激しく前後にゆすり、びっくりさせます。

 水田では、イネの害虫退治に役立ちます。


■ナガコガネグモの卵のう
 道ばたの草のあいだにひっかけられた濃茶褐色で、径1.3cm、高1.8cmぐらいのつぼ形をした卵のう(写真201)。
 すぐそばにいる母グモの姿で、これがナガコガネのものとわかりました。クモは子ぼんのうなので、おそらく子グモのふ化するのを見守っているのでしょう。ふ化した仔グモはこの卵のうの中で冬を越し、初夏のころはい出てきて野外の活動をはじめるようです。



写真202、ジョロウグモ
12月、ポートアイランド
写真203、ジョロウグモの卵のう
1月、自宅


■ジョロウグモ

 植えられた樹木の多いポーアイ。歩道から丸見えのところに、すぐ正月がくるという寒さのなか、雌のジョロウグモががんばっていました(写真202)。

 体は黄、黒、赤と派手なもようをつけ2.5cmほどもある成熟しきった雌はほどなく産卵するのでしょう。ほかにもあちこち計7匹の網を見ましたが、小さな雄の姿はどこにもありませんでした。

 このクモはよほど寒さに耐えられるらしく、狩口台3丁目では、正月を過ぎてもいたんだ網でがんばっているのを見たことがあります。

 網の複雑さは、このクモ特有です。なお、このクモの居ないようなところは、自然度が低いとされていますから、環境の良し悪しのひとつの目印(指標)となります。


■ジョロウグモの卵のう
 飼育ケースの中に入れていたジョロウグモの雌が産卵を終え、白い大きな卵のうをつくっていました(写真203)。子グモは5月にふ化します。



写真204、ゴミグモ
6月、落合中央公園
写真205、ゴミグモ
6月、落合中央公園


■ゴミグモ

 どう見ても主(あるじ)のいない空き巣のような網にゴミがひっかかっているとしか思われません(写真204)。

 これは、天敵の目をだまくらかす最も知能的な(?)やり方で、さきのコガネグモのなかまのかくれ帯などとは比べものにならない優れもので脱帽してしまいます。


 かなり接近してようやく正体(しょうたい)発見というところ(写真205)。それでも脚を動かさなかったらまだわからないかも知れません。網に刺激を与えると、スーッと糸を引いて下に落ち、そのまま不動の姿勢をとれば「あ、やっぱりゴミだった」ということになるでしょう。この逃避本能(とうひほんのう)のために、体の表だった色、もようだけでなく、自らの脱皮がら、食べかす、卵のう、そして葉や木くずなどのゴミを有効利用します。そして、網を新しく作りかえ新居をかまえますと、ゴミもそのまま移動させるといいますから、徹底した資源の有効利用者です。

 大量生産、大量消費、大量廃棄の人間どもこそ、このゴミグモに少しは見習う必要がありそうです。



写真206、クサグモ
6月、ポーアイ南公園
写真207、クサグモ
6月、ポーアイ南公園


■クサグモ

 公園のふちのシャリンバイの上に張られたクサグモの網、よく見てください(写真206)。平らな部分の上にテント状の網を、上の方の枝からつり下げているでしょう。

 その巣網のつくりから、棚網とかろう斗網といいます。中にクモがいるのですがはっきり写っていません。

 こちらは、同じ低木のヒラドツツジの上につくられたクサグモの巣で、雌が網の上に出ていました(写真207)。すぐ左下にトンネルの入口が見えています。口もとにある触肢の細いのが雌で、先が太くて丸まったのが雄です。



写真208、アオオニグモ
8月、青谷川公園
写真209、アオオニグモ
8月、青谷川公園


■アオオニグモ

 公園のシャリンバイの近くに不規則な円網の横糸が渦ではなく折り返しになった垂直網が見えました。クモの姿がないので、近くにいたアメリカミズアブをとって網にぶつけますと、シャリンバイの葉を糸でたくり寄せたかくれがから青緑のクモが跳び出して、アブの体に糸をまきつけはじめました(写真208)。


 アブを糸でぐるぐる巻きにするとアオオニは再びかくれがにもどっていきました。そして、しばらくしてまた出てきて、こんどはもとのかくれがに引っぱりこみました。この間、約7分のできごとでした(写真209)。

 なお、このオニグモは生き餌をとらえる捕虫網と、ふだん身をかくすかくれがとは信号糸でつないでいる知恵ものです。




■ジグモ

 公園のふちの歩道わきに植えられたウバメガシの成木の根元に何本もの管状の袋が立ちのぼっています(写真210)。

 これは、地中で生活するジグモの巣網で、袋は虫を捕える役目をします。地中へも、地上部と同じぐらいはいっていて、クモはその底にいます。獲物がひっかかれば急いで昇っていき、網ごしにかみつき、袋の中に引きづり込みます。

 破れた穴はすぐ修繕します。また、食べかす、脱皮がら、糞などは袋の外に捨てるというきれい好きのクモです。



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