道ばたに見る春の草たち 広瀬重夫
 タンポポのなかま

写真15(下) タンポポのロゼット葉
3月,垂水区.


■タンポポのロゼット葉
 地面をおおい葉を四方八方(放射状)に広げ太陽のエネルギーをしっかり受けとり花どきにそなえようとしています.このような葉のようすをロゼット葉といいます.これを根生葉とか根出葉と書いてありますが根から出ている葉ではありません.


写真16(左・右上) セイヨウタンポポとその種子.4月,中央区. 写真17(右下) アカミタンポポの種子
5月,灘区.


■セイヨウタンポポ

 市街地でみるタンポポの多くは原産地がヨーロッパで明治の終わりごろ北海道にはいってきて,のち全国へ広がったといわれます.
 花をのせた茎(花茎)は枝分かれしたり,葉をつけたりしないで,一つだけ花をつけます.

■アカミタンポポ
 セイヨウタンポポより少し遅れて,やはりヨーロッパからやってきた帰化植物です.

 上のタンポポのようなふぞろいにさけた葉のことを羽状葉といい,浅くさけたり,深くきれこんだりその中ほどなどさまざまで,葉のようすだけではこまかい種類分けはできないことか多いです.

 そこで,セイヨウタンポポとアカミタンポポを分けるには,冠毛をつけた種の色を見て,赤っぽければアカミタンポポです(写真16・17).
<用語説明> 総苞(そうほう):
 がくのように見え,緑色をした幅のせまい葉のようなもの.そのならび方,着き方はキクのなかまを分けるときの目印として大切です.
<用語解説> 羽裂・裂片・頭大羽裂
 葉が羽状に裂けていることを羽裂といい,そのかけらを裂片といいます.そしていちばん先のものが大きいので頭でっかちになっていることから,頭大羽裂というのです.


 花の下部を包む緑色をしたがくのように見えるうろこ状(舌状)のかけら(葉状鱗片のこと)を苞といいます.上の図は花びらを省略して書いてあります.


<用語解説> 頭状花(とうじょうか)
 花をのせる台(花床)に小さな花がたくさん集まっている部分(花)のこと.タンポポ,ヒマワリ,ヨメナ,キクなどのなかまはこのタイプです.
タンポポの花のしくみ


 タンポポの花は小さな舌状花がたくさん集まって一つの頭状花となります.一つ一つの小さな花は花びらが一枚のように見えますがこれは5枚の花びらが一つに合わさったものなのです.花の先がぎざぎざになっているのをよく観察してください.


写真18 カンサイタンポポ
4月,稲美町.
写真19 シロバナタンポポ
4月,灘区.


■カンサイタンポポ
 市街地では少なくなりましたがチガヤやミヤコグサ,ハハコグザのような草が生えるようなところなら,市街地でも残っていることがありますのでさがしてみよう.
 この写真は農地の多い神戸市の西隣の稲美町で写しました.日本には古くからある在来種です.帰化種のタンポポといろいろな角度から比較してみてください.植物に限らず,生きものは,似たものどおしを比べて,共通点や違いをくわしく観察することが大切です.


■シロバナタンポポ
 市街地でも,たとえ郊外でもめったにお目にかかれない在来種のタンポポですが,気をつけて花の時期をねらえば,こうして都会の片隅に根づいているのをみつけることができます.


タンポポを比べる
種類/特徴 葉の色 総苞片 花の色 花の数 花期 生殖 種の色 広がり 在/帰
セイヨウタンポポ 緑色 そり返る 黄色 多い 年中 単為 灰褐色 多い ヨーロッパ
アカミタンポポ 緑色 そり返る 黄色 少なめ 単為 茶褐色 多くなった ヨーロッパ
カンサイタンポポ 緑色 密着 黄色 少なめ 両性 灰褐色 まれ 在来種
シロバナタンポポ 淡緑色 そり返る 白色 少なめ 単為 灰褐色 まれ 在来種

<表の用語解説>
 生殖:両性=花粉のやりとりが必要
 生殖:単為=花粉なしで種ができる
 在=日本に古くからある
 帰=明治以降日本へ入って定着した

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