春の水辺の草 |
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写真135 水辺の植生
4月 垂水区 |
写真136 タガラシ
5月 灘区 |
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■水辺の植生
コンクリートでかたらめられたような川でも、土がたまって小さな堆積地ができ、水辺を好む草たちが根づきます(写真135)。また、川岸には市街地からの排水口が開かれ、石垣の間が水で潤い、やはり植生が広がります。
ここでは、タネツケバナをはじめ、オオカワジシャやギシギシも見られます。
■タガラシ
郊外では田んぼの溝辺などで見ることができますが、ときにはこうして町なかを流れる川辺で見つけることもできます(写真136)。
タガラシはキツネノボタンやウマノアシガタなどと同じキンポウゲ科のなかまです。このなかまはつやのある5枚の花びらが黄色で、多数のおしべとめしべがあり、花が終わると小さな実がたくさん集まって球状の集合果を突き立てます。茎は中空です。
和名のタガラシは「田枯し」を思わせますが、水田の雑草としてはごく少数派で、むしろ、草が辛いという意味の「田辛し」のようです。
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写真137 オオカワジシャ
4月 垂水区 |
写真138 ヒエガエリ
5月 垂水区 |
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■オオカワジシャ
「カワ」の名がはいるくらいですから、やはり水辺の草で、日本に古くからあるカワジャとよく似ていますが、神戸の河川などでよく見るのは、ヨーロッパ産の帰化種のオオカワジシャのようです(写真137)。
花をよく見てください。先に紹介した春の道ばたのオオイヌノフグリとそっくりです。なかまはゴマノハグサ科です。 なお、カワジシャのほうは県レッド・データブックのCランクで、絶滅の心配のある希少種(きしょうしゅ)とされています。
■ヒエガエリ
日当たりのよい水辺や湿ったところに生えるイネ科のヒエガエリです(写真138)。
写真前列の中ほどに傘をすぼめたような穂を立てています。
後ろに見える穂は、花の咲いている時で、ふわっと広げて花粉を飛ばしたり、うけたりしやすくしているようです。
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写真139 スカシタゴボウ
4月 東灘区 |
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■スカシタゴボウ
私のフィールドノートの1991年4月28日のページに、住吉川河口上流約300mの中洲(なかす)に、ミゾソバ、クサヨシらの草地があり、その近くでこの草を見つけたとの記録がありました(写真139)。
別に珍しくも、また、数少ない希少種でもないのですが、大都会の中を流れる川に見られたという事実が私の自然への関心を揺さぶってくれました。
同じアブラナ科で、イヌガラシと姿、形がよく似ていますが、こちらは花が黄色で、果実の違いも生えている環境も違っていることに注意しましょう。
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写真140 タネツケバナ
3月 垂水区 |
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■タネツケバナ
この草の名を漢字で書くと「種漬花」となるそうです。むかし農家の人は、この花が咲くころイネの種もみを水につけ、発芽を促したといわれます(写真140)。
現代の人とちがって、カレンダーだけに頼らない暮らしの知恵に関心させられます。
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■オランダガラシ
さきのスカシタゴボウやタネツケバナと同じく、少し湿った所や水ぎわに生えるアブラナ科の仲間の1つで、ヨーロッパ出身の帰化植物です(写真準備中)。ふつう、クレソンの名で知られ、西洋料理につかう目的で明治の頃に移入されましたが、河川にエスケープして野生化し、ときには大きな群落となって水辺をおおいます。つまんで味わってみましょう。からみは多少を問わずアブラナ科共通の性質で、からし油をふくみ、私たちの食欲をそそります。また、モンシロチョウなどの幼虫の食草となることはみなさんもよく知っていることでしょう。
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写真142 キショウブ
5月 垂水区 |
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■キショウブ
春から初夏のころの水辺を飾るこの植物は、観賞用として明治の終わりごろ日本に移入されましたが、いまでは川岸や水辺の近くで野生化したのをよく見かけます(写真142)。キショウブに限らず、庭や公園などで植えられる園芸植物も人の手が加わる前は野生の植物でしたから、環境次第で自然の状態になじんでいきます。
グラジオラス、サフラン、フリージア、ヒオウギなど観賞用の園芸品をふくめアヤメ科植物などの単子葉植物では、がくと花びらの区別がなく、まとめて花被片(かひへん)と呼び、大小は別として計6枚となっています。
色美しく、大きくて目立つ外花被3枚、その内側にある内花被3枚は小さくて目立たず、合わせて6枚あります。
めしべは、もとの方から3つに分かれ、さらにその先は2つに浅くさけています。
品種改良で園芸品種となったアヤメ科植物では、内花被が大きくなり、めしべやおしべも大きくなって花びらが何枚もある八重咲(やえざき)になり、いっそう豪華になっています。
また、花の咲く前のつぼみの時代、花を守っているのが包葉です。
みなさんもいらなくなった花を解剖して観察しましょう。
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