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2.どこにでも見られるシダ
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神戸に生えている身近なシダを探してみよう。神戸は地形的に非常に変化に富んでいる。海岸から市街地・台地・山と続いている。山も932mの六甲山を最高峰として、摩耶山・再度山......鉢伏山とほぼ東西に連なり、自然を身近なものとして感じさせてくれる街である。
神戸の市街地を歩いてみょう。
社寺・公園には、クスノキの大木がある。根もとに立って木を見上げてみると、たいていノキシノブというシダが着いている。石垣には細い葉を風になびかせているイノモトソウ、葉の表面につやがあって、乾燥する石の間によく生えているオニヤブソテツなどがすぐに目につく。
新しく神戸の市街地に入りこんだホウライシダが、やや湿った溝、石垣、塀などに生えているのも見られる。家の庭には、トクサなどのシダが植えられている。
クスノキにつくノキシノブは、幹の分かれているところに着くことが多い。長さ10−20cm、幅5−8mmの葉で、葉の裏には胞子をつけた部分が星や目(八つ目)のように、たがいちがいに数多く並んでいる。このシダの属するウラボシ科という名はこの特徴に由来する。このシダは、しばしば屋根の軒端に生えることからノキシノブという名がついた。古くから歌に詠まれたシノブグサというのは、このノキシノブをさすのである。
ノキシノブは、市街地でほクスノキに多く着生する。それは、クスノキの樹皮が厚く、古くなったものが縦横に裂けるので、そこに根が入りやすく、また水分がたまった状態になるからである。このシダで不思議なのほ、何日も雨が降らず乾いてくると葉が縮み、巻いて枯れたようになることである。全く枯れてしまったようでも、一雨降ればまたいつの間にかもとにもどって葉を広げてくるのである。ノキシノブは、樹の幹だけでなしに岩や石垣に着生することが多く、時には群生さえする。いで湯の町、有馬の旅館街の石垣に多く着生している。
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石垣には、オニヤブソテツ・イノモトソウが生える。一日中太陽の当たるところでも、濃い緑の葉を照らしながら株だちして生えるオニヤブソテツは、いかにもがめついソテツ状の木生のシダを想像させるが、実物は案外上品なシダである。
イノモトソウは、井戸の石垣付近に生える草ということでその名がついたシダだが、その名のように、民家付近に多い。
また、石垣の石と石との間に目だたずに生えるものにトラノオシダがある。名前にトラノオとつく植物は、葉や花穂が細長くトラ(虎)の尾に見たててついたものであろう。このトラノオシダの場合、葉全体(葉身)を、トラの尾と見たいのであるが、葉は羽状に分裂しているのであまり適切な名前だとはいえない。
山の手の住宅地付近には、各種のシダが生えている。神戸の山の手の住宅には、自然の一部をそのまま取り入れた庭園が多い。そこには、裏山に普通に生えているシダが残っている。さきのもののほかに、コシダ・ウラジロ・ベニシダ・クマワラビなどである。しかし、山麓が開発され、住宅地が山の方へ移っていくにつれて、これらのシダも減っていきつつある。
住宅地に植えられたシダとして目につくのは、タマシダ・トクサ・ヒトツバである。トクサ・ヒトツバは、古くから庭に栽培され季節を問わず、その風雅さを示している。タマシダを植えている家は、最近多くなった。 |
異人館付近にほ、ホウライシダが多い。ホウライシダは、神戸の市街地に新しく侵入したシダである。新しくといっても、20−30年も前からのようだが、異人館の多い生田区北野町付近、須磨区一の谷付近に多いのは不思議で、港町神戸の特徴を示すものとしておもしろい。湿りのある溝や石垣・土塀に着生し、場所によっては、四国・九州でさえ見られない大群落を作っているところがある。市街地の裏山が寒い冬の北風を防ぐこと、南の日光を受けて暖かいことがホウライシダの生育を助けているのであろう。
明治になって港が開かれ、神戸に外国からの植物が入ってきた。あるものは荷物と一緒に、あるものは珍しい栽培植物とともに入ってきたのであろう。神戸では、それが日本の他のどの地よりも早い時期であったことは、容易に想像することができる。このホウライシダも観葉植物として、あるいはランやその他の観葉植物にくっついて入って来て育ったのであろう。それが栽培されている間に胞子が温室外へ飛び出し、育つ場所を見つけたのではなかろうか。 |
新湊川の支流、石井川上流の滝付近には、群生地があり、その川岸を調べていると、タマシダも生えている。ルーツを探ると、実は何十年か前、その地には温室があり、外国から植物を輸入し、それらを栽培していた地であったことがわかった。
ところが、このホウライシダは、須磨にも群生地があり、民家の石垣、水のしたたる滝場、電車の線路わきにびっしりと着いている。シダの胞子は、台風などに乗ると、際限なく飛び続けるので、このシダの胞子も南から淡路島の上空を通って飛んできて、この地で発芽し、育っているのではないだろうか。
いずれにせよ観賞に値するほどさわやかで美しいこのホウライシダが、神戸では西から東までの各地に生えていて、神戸の市街地に、そっと緑を添えてくれている。
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