神戸の自然シリーズ3 神戸のシダ
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 カニクサ
−1枚の葉がどこまでのびるか、つるになってのびるシダである。−(9月)


 昔、子ども達が、このつるでカニ釣りをしたことがあったということで、ついた名である。別名をツルシノブ・シャミセソヅルというが、ツルシノブという名は、葉がシノブの葉に似ていて、つる状に長くのびることから、また、シャミセンヅルという名ほ、このつるを三味線に使えそうだということからついたのだろう。

 カニクサの根茎は、地中を長くはい、黒く、ごく細い毛をつけている。葉柄の基部は黒紫色で細いがかたい。つる状の地上部は木の枝や竹などにからまってはい上がり、数mの長さまでのびる。

 一見したところ、そののびたつる状のものが茎であって、その茎がからまったようにみえるが、実はそれは全部が1枚の葉である。一枚の葉の中軸がどんどんのびていって羽片を出すのである。

 同じように一つの葉がのびていくものにウラジロやコシダがある。ウラジロは、葉柄の頂端の左右両羽片のつけねに、褐色の鱗片でおおわれた小さい芽(休止芽の一種)のようなものがあるが、これが、翌年の春にのび出し、先端から左右に羽片が出て、新しいウラジロの葉ができる。このような繰り返しで毎年葉がのびていく。ウラジロと比べると全体が少し小がらなコシダは、葉の分かれ方がウラジロより複雑で、左右両羽片のつけねの休止芽にあたる位置から、二本の小葉柄が出て、それぞれの先端に同形の羽片が2方向へのびていく。これらのシダはいずれも、どこまでものびる可能性をもっている葉である。


 カニクサの羽片は、次の羽片まで数十cmと間かくがあいて互生である。

 見たところ対生しているようにとれるがそうではない。よく見ると、中軸からごく短い柄が出て、すぐその柄が2つに分かれ、さらに柄をのばしているのである。柄が2つに分かれるところには、ウラジロやコシダの休止芽に似た有毛の芽がみられる。この芽はのびることはない。

 長くのびたカニクサの一つの葉には実葉裸葉に相当する部分がそれぞれ分かれてできている。下部羽片は、裸葉にあたるところであり、上部のちぢれている羽片胞子のう群のついた実葉にあたるところである。胞子のう群がつきはじめるころの実葉にあたるところの葉は、ちぢれていないが、胞子が熟していくにつれてちぢれていく。このようすは、葉の長さといい、広がりにおいてもかなり違うクマワラビの場合とたいへんよく似ているといえる。胞子のう

 カニクサの胞子のう群にほ、辺縁に不規則な凹凸のある包膜がある。その包膜胞子のう1個ずつについている。1個の包膜の中に1こしか入っていない胞子のう群というのは、胞子のうの数がもっとも少くなったもので、シダ植物の中でも例外的なものである。胞子のうの形も変わっていて、ラグビーのボール形で、環帯は一方の端にだけ集まり、帽子のようになっている。

 神戸の市街地の石垣などにもよく生えている夏緑性のシダだが、民家近くの霜があたらないところでは、冬でも枯れない。

 
シダ類の胞子のう
胞子のう群を保護している包膜をはずすと胞子を入れる袋のようなもの、すなわち胞子のうがある。
(1)真のうシダの胞子のう・・・・・・
胞子のう壁が数層の細胞からできていて厚い。胞子のうは大きく、中に入っている胞子の数も多い。
ハナヤスリ・リュウビンタイ

(2)薄のうシダ胞子のう
胞子のう壁が1層の細胞からできている。胞子のうも小さく、中に入っている胞子の数も少ない。
シダ類の大部分が薄のうシダである。


薄のうシダの胞子のうのつくり
内側の部分の膜が厚くなっている。したがって、環帯の部分ののビちぢみが外側と内側で違ってくる。環帯は湿度が高いときはのび、乾燥するとちぢむので、胞子は乾燥した風のあるときにとびやすくなる。

写真はコウラボシの胞子のうである。口辺細胞の部分がやぶれ、胞子がはじき出される状態になっている。
<いろいろな環帯>
胞子のうは長卵形または長楕円形で、環帯胞子のうの項端につく。
ウラジロ・コケシノブなどは、そろばん玉のような球形の柄のない胞子のう環帯がぐるりと取り巻いている。
カニクサの胞子のう

 胞子の形
胞子は形・大きさ・色・表面の模様などいろいろであるが、形の上から大きく次の2つに分けられる。
両面体型胞子 四面体胞子
ま横から見る
ま上から見る
シダの種類 イノデ・クマワラビ・ベニシダ・イヌワラビ・ノキシノブ・・・・・・ ゼンマイ・イノモトソウ・ハコネシダ・コケシノブ類・・・・・・
顕微鏡写真
マツバランの胞子の顕微鏡写真

ウラジロの胞子の顕微鏡写真

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