神戸の自然シリーズ3 神戸のシダ
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 3.シダの茎の中心柱
ワラビの根茎維管束

ワラビ根茎の横断面(二環網状中心柱)

 ここでは葉柄維管束とつながる茎の維管束をみてみよう。

 まず、身近なシダであるワラビの茎はどのような維管束があるだろうか。地面から一本ずつ立ち上がっているワラビの葉柄のつけ根の土をていねいに掘って根茎を取り出そう。

 ワラビの根茎は太いので観察に適している。図のように2つの厚膜組織の外側に環状に並んでいくつかの維管束がある。と同時に、厚膜組織の内側にも2個から数個の維管束が環状に並んでいる。このようにワラビの根茎維管束群は1つの環の中にもう1つの環になっており、しかも1つの環はいくつかの維管束が集まったものである。

 このようなワラビの中心柱維管束を含む内皮から内側の組織全体)を二環網状中心柱というが、複雑な中心柱である。ここでは、いろいろなタイプのあるシダ植物の中心柱を見てみよう。


原生中心柱

コシダの原生中心柱

原生中心柱

 中心柱はただ一本の維管束からできている。中央部は木部で、そのまわりを師部がとり囲んでいる。カニクサ・ウラジロなどに見られるが、化石シダ・古生マツバラン類にも見られ、もっとも原始的な中心柱だと考えられている。根は原生中心柱一般にこのタイプの中心柱をしている。


管状中心柱

フモトシダの管状中心柱

管状中心柱

 中心に髄があり、その囲りに管状の維管束がある。木部の内外には、それぞれ師部と内皮がある。

 葉柄の基部では、茎の中心柱から葉へいく維管束(葉跡)が分かれるので、一部葉隙という孔ができる。

 したがって、その部分では一部欠けた環になる。イワヒメワラビ・ハコネシダ・フモトシダ・クジャクシダ・デソジソウなどは、このタイプの中心柱である。


網状中心柱

 環状に並んだいくつかの維管束からできているもので、オシダ・リョウメンシダ・イヌワラビ・アオネカズラ・シノブなどに見られる中心柱である。シダ類ではもっとも普通な中心柱であるが、管状中心柱の円筒環が多数の葉隙によって孔を生じ、網目状の筒となったものである。網状中心柱も本質的には管状中心柱と変らないものである。

網状中心柱

多環中心柱

多環中心柱

 管状あるいは網状中心柱が同心円状に二重三重、またはそれ以上に重なったもので、ワラビは二環網状中心柱、ウラジロ科に近縁のマトニア科のマトニアは三環管状中心柱、リュウビンクイは二〜六環網状中心である。


放射中心柱

トウゲシバの放射中心柱 放射中心柱

 放射中心柱は原生中心柱の変形とみなされているが、維管束がいくつかのふくらみを持ち、不規則な形をしたものである。マツバラソ・トウゲシバ・ヒカゲノカズラの茎に見られる。


 以上のように、トクサ類の茎を除いて、シダ植物の中心柱は五つの型に分けられる。しかし、放射中心柱は原生中心柱の変形ともみなされ、多環中心柱を管状中心柱に含める考えに従うと、基本になる中心柱の型ほ、原生・管状・網状の三つの中心柱ということになる。

 シダ植物進化の歴史からみると、中心柱は原始的な原生中心柱から管状中心へ、管状中心柱から網状中心柱へとたどったと考えられている。


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