神戸の自然シリーズ1 六甲の断層をさぐる
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高取山断層 (たかとりやまだんそう)
地下鉄妙法寺駅近くの高取山断層
市営地下鉄工事中の昭和50年,妙法寺駅予定地に高取山断層の断層面があらわれた.しかし図の断層面の崖もその後とりさられ,住宅用地になった(昭50.)


 都心と西神戸とをつなぐみどりの電車、神戸市営地下鉄が、始発の新長田駅を出て、そのスマートなすがたを地上に見せるのは、妙法寺駅の少し手前である。

 この駅のホームから階段をのぼって改札をでると、その正面、つまり北側にゆるやかな起伏の景色がひらける。駅の背後にあたる南は、けわしい山の斜面がせまっている。

 この山なみは、高取山から西へのびるが、妙法寺川でいったん断ちきられるものの、さらに横尾山につながる高さ300メートルばかりの、花こう岩でできた山地である。

 この山地と台地との境をふちどっているのが高取山断層である。

 高取山断層は、そのはっきりした断層面を見せたのは、地下鉄建設工事中の昭和50年(1975年) であった。当時、関係者のご厚意で私は名谷駅から板宿駅までの間を見せていただいた。

 名谷駅近くでは、ほとんど水平に横たわっていた神戸層群の泥岩砂岩の地層は、妙法寺駅に近いトンネル出口あたりから、ゆるく波打つかのように南に傾きはじめる。

 駅の中央よりもやや西に寄った地点でほ、急速にその傾きを増し、70〜80度にもなっていた。そして、まるで子どもの頭を強引に押さえこむかのように、花こう岩が厚くおおいかぶさっている。ここでの両者の境(断層面) はほぼ東西の方向を示していた。

 ところが不思議なことに、ほんらいは神戸層群の地層よりもほるかに堅く、力づくで押さえこんだほずの花こう岩のほうが、こなごなに砕かれ、圧しつぶされて、ところによっては断層粘土になっている。

 このように断層は大規模な開発工事のときに、その全容を見せることが多い。

 断層の近くでほ、その強い圧力のために岩石が砕かれて、弱くなっており豪雨のときなど崖くずれが起こりやすい。断層の上には、このような崖くずれによる土や岩くずがたまっているのがふつうで、なかなか断層ほその素顔を見せてくれない。さきの丸山衝上断層も昭和初期の丸山遊園地開発工事で発見されたのがその端緒であった。目的の工事が完成すれば、コンクリートや石垣などでおおわれて束の間の顔見せで終わってしまう。

 天然記念物に指定され、その保存がはかられた丸山衝上断層にしても、渦ケ森断層の場合でも今は断層面そのものが観察できないのは残念である。

 六甲の数ある断層のうち、断層粘土、破砕帯をともなって見事に断層面が露出しているのは、表六甲の五助谷の五助橋断層と、裏六甲の白水峡の六甲断層の二つである。

 この両断層は、その規模といい、面がまえといい、六甲の断層を代表するにふさわしい大物である。

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