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■2.モズ −速贄と物真似
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5.モズの減少と "沈黙の春”
最近になって西神戸の農村地帯のモズが目立って減少の傾向を見せはじめた。その中でも特に早春の繁殖者が少なくなってきた。もともと数の多い鳥であるから、まだまだ人目にふれる機会は多いけれども、鳥にいくらかでも関心を持っている人ならば誰でも気づく減少ぶりである。
水田の宅地転用が進み、モズの好む環境はたしかに大きく減ったけれども、まだ、モズの棲む場所がなくなったというほどの家屋密集の状態ではない。あちこちに小さな森も残っている。しかし、今までのように多数のつがいが巣を作る余地がなくなったことは十分考えてよい。重要なことは、まだモズにとって好適な環境が広く残っている所でさえ、モズ不在の場所が増えてきたのである。次にあげる事実が、モズの減少をきたした原因を示唆しているのではなかろうか。これらの事実が、私たちにどんな警告を発しているか、この際考えてみる必要があるだろう。
モズの産卵数はふつう一腹4〜5卵である。卵の大きさは24×18mmほどで、褐色がかった白地に、褐色や紫褐色の不規則な斑点がある。障害なく抱卵がすすめば、14〜15日で雛が誕生する。
春の繁殖は田園地方に多い。川の土手のちょっとした繁みや、竹やぶやイバラの中で巣は簡単に見つかる。季節がよければ、20年ほど前には、1日に10ぐらいの巣を見つけるのはさほど難しいことはなかった。ところが、最近では、1日探しても、2つか3つも見つければよい方である。いちじるしく数が減ったのである。
さらに、その少なくなったモズの巣で、発育停止卵を見ることが多くなった。とくに1960年代後半からその傾向が目に見えて多くなってきた。
小鳥の卵は、全卵孵化するのがふつうである。無精卵があってもそれはごく少ないもので、たまに1つ2つ見る程度である。
ところが、この10年ほどの間に西神戸で観察したモズの巣では、発育停止卵が、平均して3割にも達するようになった。
ここ3〜4年は少し好転したようだが、3割といえば、6卵の巣で平均2卵が孵らないということで、明らかに異常な値である。
秋からモズは、田畑の虫や蛙、小魚を採りつづけている。何が原因になっているか、ある程度の想像はつく。発育停止卵や親鳥の体を分析したデータがないので何ともいえない。これ以上の話はさしひかえておく。
外国の本には、この種の詳しいデータがあるから参考になると思う。
孵化しなかった卵を調べてみると、胎雛の形ができかけた頃から、抱卵日数の中頃まで発育した状態のものまでいろいろである。
もっともひどい例では、5卵中1卵だけが孵化し、残る4卵がすべて停止卵であった。
この傾向は同じ田園に生活しているヒバリにも見られ、4卵中1卵孵化という例も1つだけではない。ヒバリはモズのように田園を離れては生活できないだけにこの傾向はモズより顕著に現われ、ここ10年ほどのヒバリの激減は驚くばかりである。ヒバリは畑作転換事情にも影響があるが、産卵期や抱卵期に田の土が耕やされて卵を失なっても、夏までに何度でも産みなおせるチャンスがあり、今までもそうやって種族を守ってきていたのである。
山地に留ったモズには、停止卵の例が少なく、以前とそれほどの差を認めることはできなかった。
夏の六甲山のモズも健全である。冬に過していた場所にもよるのだろうが、たとえ水田地帯にすんでいたとしても、そこから離れて日数がたったからかも知れない。一度詳しく調べてみる必要がある。
モズとヒバリの例から、私は「沈黙の春」は遠い外国の話ではなく、いま私たちの目の前で進行しているように思えてならない。これが私だけの思い過しであればよいのだが……
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モ ズ スズメ目 モズ科
雄は頭上から頸の後部にかけて赤褐色で、背は灰色である。顔には耳羽までとどく 黒く太い過眼線と、クリーム色の不明瞭な眉線がある。脛と喉はうすい褐色がかった白色で、それより下位は淡赤褐色であるが腹部中央はうすくなる。秋から冬にかけて、胸と脇の各羽の縁りが淡い黒色になり、全体として波形の模様になるが、雌にくらべるとうすい。風切羽は黒色で、基部にある白色の部分は飛ぶとき、大きい白斑に見える。尾は黒褐色である。噂、脚は黒い。虹彩は暗褐色である。
雌は、背は赤褐色、過眼線は暗赤褐色である。風切羽、尾羽は暗赤褐色で、喉、胸、腹の色は雄に似ているが、それよりもくすんだ暗色で、波形の模様は明瞭である。翼の白斑はない。
幼鳥は雄雌ともに雌の成鳥の色彩に近く、胸の波形模様は明瞭である。
遠方から見たモズのシルエットは頭が大きく、尾羽は長い。
嘴峰 14〜17mm、翼の長さ 84〜92mm、尾の長さ 80〜97mm、 24〜27mm、開長平均 260mm、全長平均 200mm、体重 29〜44gで雄は平均的に大型である。
ウスリー地方南部から中国、朝鮮半島に分布する。北部では夏鳥、南部では冬鳥となる。日本列島では北海道から流球にかけて分布し、北海道と本州北部では夏鳥、琉球では冬鳥である。
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英語名 Bull-headed Shrike
学 名 Lanius bucephalus Temm. & Schl.
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